「ご苦労様。どうだい?」


ウィンと音がして扉が開くと同時にその向こう側から飛んできた声。ロマニは自分の後方から飛んできたその声に少し吐息しながら回転椅子を反転させて振り返った。


「うん。こちらも一段落したところだ。藤丸くんも順調に目的に近づいている。そちらは?」

「嗚呼、こちらは正直手こずってる」


先ほどレイシフト先の藤丸くんやマシュたちと通信を終えたところだ。順調に目的に向かって進んでいるようだし、また何かあったら連絡すると通信を切った絶妙なタイミングで現れたダ・ヴィンチちゃんことレオナルド・ダ・ヴィンチは少々困り顔で笑って答える。


「彼女の事を調べたけれど、存在どころか手がかりすらない。見た目的に10代だと思ったけど……それなりに時代もそこそこ広げてみたんだが…」


短時間とはいえそれなりに集めてみたというデータを翳しながら参ったと零すダ・ヴィンチの態度からして本当に"参った"事態なのだろう。ダ・ヴィンチが持ってきたデータにサラリと目を通すロマニもその成果に「ふーむ」と唸ることしかできない。
この情報機関であるカルデアの捜索機能ですら手に負えない程の存在ということか。そんな話が合って堪るものかと思うのだが、現実は現実。本当に彼女―…スバル・フォン・ラインツバルツという人物のデータが無い…いや、これは存在自体が無いと言った方が妥当か。


「…もう少し時代と国の範囲を広げた方がいいかもしれないね。何かのきっかけで時空を超えたことも視野に入れて調べてみよう」

「りょーかい」


何も自分たちが知る時代や世界だけに限定する必要はない。手間はかかるがこればかりは仕方ない。彼女の事を調べねばならない。それを理解してくれているのか困り顔をしているもののダ・ヴィンチは嫌な顔を一つしないで了承してくれる。


「あれほどの魔力の持ち主はそうそう各時代にも居ない筈なんだけどねぇ」

「彼女の存在自体がイレギュラーだし、彼女自身の記憶がないというのもなぁ…周辺の環境も読めないとなるとかなり厄介だな」

「それでも彼女の事を調べなきゃいけない。そうだろう?」


異様な魔力、マスター適性を持ちながら複数サーヴァントの使役は不可。そしてルーン魔術の使い手…此処まで材料が揃っていれば普通あっさりと身元が割れたりするものなのだが…。いや、考えても仕方ない。スバル本人に記憶がない以上知る術はこちらが調べ上げるしかない。彼女の正体を、彼女の存在を我々は理解する必要がある。


「そうさ。彼女の為にも―…僕らの為にも」


彼女はあまりにもこの物語には"異例な存在(イレギュラー)"過ぎるのだ。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -