カルデアに来て数日。いまだ藤丸くんとマシュはレイシフトというものに出てから帰ってこない。その間、私たちは何をしていたかと言えば、カルデア施設観光と色んなサーヴァントさんたちとお話…まァ言ってしまえば暇だったわけだが。
そんな日々を過ごしていてこんな私でも何となく分かったことがある。サーヴァントたちの関係性。時代や世代、年齢を超えて分かり敢えて楽しく過ごすものも居れば、もちろん生前からの関係を持っているものや忌み嫌い合っている者もいる。色んな時代の話や、いろんな人物たちの英雄談や失敗談に生活風景などを聞いて想像するだけでも胸が躍るものばかりだった。
だが、その中で私は何か自分に繋がるものを無意識に探し求めていたのだ。何かの話をきっかけに自分に繋がる手掛かりがあるのではないか、と。自分なりに動いていたつもりだった。でも何も見つからない。何も思い出せない。
隣で他の英雄たちの話を一緒に聞いていたり、小さいサーヴァントや知り合いのサーヴァントにちょっかいを出す青い彼も嫌な顔一つせず私に付き合ってくれたけど、何も、何も。

そんな時だった。

不意に視界の隅に入った、紅。思わず足を止め、その存在に視線を移す。銀色の綺麗な髪、大きな背中、赤い装束に身を纏った男のサーヴァント。傍で誰か別のサーヴァントと話しているようだ。距離はそれなりに離れているが、何故だか凄く目に留まった。その存在感は私の中では異様なほど浮いていて―…。


「あの野郎、何処に行っても居やがる」

「…知り合い?」

「あ゛ァ?知り合いなんてもんじゃねぇ」


いつの間に横に居たのか。私の視線の先を追って、青い彼は不機嫌さを前面に出した顔をしながらボソリと呟いた。ゲェなんて喉の奥から絞り出した本当に相手が嫌いだと言う事を表しているような声を吐きながら全力で私の疑問を否定する。と、

こちらの存在に気付いたらしい紅い装束の彼と目が合った。

瞬間、赤い装束の彼はギョッと少し驚いたような顔をして私を見た。まるで信じられないものを見たかのように。それは隣にいる嫌悪感丸出しの彼に向けられたものではなく、確かに私に向けられたものだった。一瞬だけ、私の中で時が止まる。何だ、この感覚は。
けれど気付けば次の瞬間にはその視線は私ではなく隣の彼の方に移動していて、少しムッとした表情でこれまた相手に対してあまり良いイメージを持っていないような態度を向けていた。これと言って会話を交わすでもなく、互いに見つめ合った紅と青のサーヴァントは傍から見れば明らかに良き関係とは思えないだろう。とそんなことを思っていたのも束の間、フンと小さく鼻を鳴らして紅い装束の彼はこちらに背を向け去って行ってしまった。


「ケッ。相変わらず愛想のない奴」


その声に現実に引き戻される。どうやら隣にいる彼はあの紅いサーヴァントの事を知っているようだ。それも随分と昔から。そういえば「何処に行っても居る」と言っていたし、彼が言っていた聖杯戦争で会っているのかもしれない。…となればお互い敵同士…何かその時にあったのかもしれない。


「あーアイツのせいで辛気臭くなっちまった…行こうぜ、マスター」

「…ん」


依然として彼が去っていった方を見つめたまま呆けている私に青い彼が踵を返し歩き出す。その声を遠くに聞きながら短く返事を返したがすぐに動き出すことはできなかった。気づけば心臓が酷く煩く脈打っていた。何だ、この感覚。これは…嗚呼、そうだ。隣にいる彼と出会った時と―…戦火の中振り返った彼の顔を見た時にとても似ている。

私は、彼を知っている。

あの驚いたような表情を思い出し、少なくともそう思った。だから私に対してあんな顔をしたのだ。そしてその事実は逆の可能性を秘めている。

彼は、私を知っている。

互いに互いの事を知っている。生憎私自身は記憶が無くて覚えはないけれど。でも、どこかで、どこかで彼と出会っている。そんな気がした。でも、そのまま紅い彼を追いかけるには情報も確証も少ない。このまま追って行っても相手に「知らない」と一蹴りされて終いだ。そう思った。背後で青い背中が遠のいていく音を感じ、少し躊躇いながらも自分も踵を返し彼の後を追う。「どうかしたか?」と顔を覗き込まれたが、「ううん、何でも無い」と首を横に振って紛らわした。





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