SS部屋 | ナノ
うさぎを飼ってみたW<静帝>

2011/02/14 08:01

乾燥って怖いよねっていうはなし


 カリカリという音が隣から聞こえる。テレビから目を離して帝人の方へと目を向ければ、痒そうに腕を掻いていた。
「どうした、虫にでも噛まれたか?」
「むきゅ、きゅー」
 相変わらずポリポリと掻いている。不意に鉄の匂いがした。再度帝人へと目を向ければ、掻いていたところから血が出、ペロペロと舐めている。
「…ッ帝人!血!」
「きゅ?」
 まだ掻こうとする帝人の手首を掴み、そのままおんぶする。
「新羅んとこ行くからな!掴まってろよ!」
「??」
 首を傾げる帝人はそのままに、家を出る。新羅の家まではそう遠くはない。ひたすら走り、扉を外れない程度にノックする。
「新羅!開けろ!」
「なんだい?騒がしいなあ」
「帝人から血が!血!」
 慌てて言えば、扉が勢いよく開く。新羅かと思えば代わりにセルティが出てきた。
『帝人から血ってどういうことだ?!』
「まあ、はいりなよ」
 リビングのソファに帝人を下ろし、新羅に見せる。新羅は苦笑しながら静雄を見た。
「…なんだ、ただ乾燥して痒くなっただけだよ。でも掻きすぎて黴菌入ったら危ないからね。掻いちゃダメだよ」
「きゅ…」
「あ、ダメだって。静雄、ローション渡すから毎日朝晩塗ってあげて。あと掻かせないように」
「お、おう…」
 セルティは隣に座り、帝人の頭を撫でる。帝人は甘えるようにセルティにもたれる。
「こら、帝人君。そこは僕の場所痛たたたたごめ…セルティッ」
「帝人、帰るぞ」
「もきゅっ」
 最近は帝人はちゃんと静雄の後をついて来るようになった。手を繋ぎ、帰りにクレープを二つ買って家へと戻る。
 家に帰るとまた掻こうとするのでローションを塗ってやる。クレープを渡せばもぎゅもぎゅと食べる。
「きゅ、きゅ」
 食べ終えると気になるのか、塗った場所を触っている。ダメだと言っても聞かないので手首を後ろに包帯で縛る。
 これで大丈夫だろうと思えば、脚を使って掻き出した。静雄は慌てて両足も縛る。今度は塗った場所を舐めだす。最終手段として口にタオルを噛ませて括る。
「…なんか犯罪者みたいだ」
 ソファに寝かせ、暴れる帝人に苦笑する。
 インターホンが鳴ったので、開けば上司であるトムが立っていた。
「トムさん!」
「よっ。近くまで来たから帝人のやつどうしてるかと思ってな」
「いや…、その…、今…帝人は…」
「もきゅ!」
「リビングか?」
 暴れてタオルが外れたらしく、帝人は鳴き声を上げる。まずい、あれを見られたら犯罪者だと思われてしまう。
「トムさ…ッ」
 止めようとしたのだが、その前に帝人が青虫のように床をはいずり回っていた。
「…静雄」
「いや、違うんすよ。これは、」
「静雄」
「…すみません」
 縛っていた包帯を解いてやると、帝人はトムに言い付けるように抱き着いた。
「掻かないようにしたってのはわかったが、やり方ってもんがあるだろ」
「う…はい」
 トムはその包帯を帝人の腕に巻き付ける。これなら確かに掻けない。帝人は少し不満のようだが。
「きゅー…」
「よしよし、いい子だ」
「きゅっ」
 撫でられると機嫌を取り戻す。現金なモノだと静雄は溜息を吐いた。素直なのが帝人の魅力だと言われればそれまでなのだが。
「もきゅ」
「お、やっぱり静雄のがいいのか」
 帝人は今度は静雄に抱き着く。頭を少し下げて、撫でてくれるのを待っているのだ。
「…よしよし、もう掻くなよ」
「きゅっ」
 静雄にしたら、帝人はペットというより弟のようなものだ。幽にはまだ会わせていない。
 そのうち会わせようと思いながら、細い身体をぎゅっと抱きしめた。


back * next


コメント
2011/02/15 22:29 奈倉
このかわいさは何でしょう。9刊は最後の臨帝に悶えました。 
編集


*
名前:

メールアドレス:

URL:

コメント:

編集・削除用パス:



表示された数字:



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -