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終わりは簡単





そこにいる男が信じられなかった。
なぜ此処にいるのか、
考えていることがわかったのか男は笑う。
「そりゃ来るだろ。呼ばれたんだから」
そう言って自分ではない者へと視線を向けた。その先にいる娘は何も語る様子はない。
いやもうこれがどう言うことなのかも理解できていないだろう。

チロチロと炎が上がる、燃える。体が自分の体が。
信じられなかった。
自分が燃えることではない。
「……あ、ド……sて?」
自分の体が、腹を貫く男から距離を取ろうとしないのだ。
命令しても動かない。体が、縛り付けられたように。脳からの信号を拒否している。
なぜ?どうして?
この男にはそのような力はない。
あるはずがない。

こいつはただの。
ただの男だ。

ワタシとは違う。
ただの
「ただの人間だ。お前と違ってな」
「う。あA…?オま…え」
「おいおいおい、いつもの皮肉めいた言葉はどうした、あの瓦礫に置いてきたか?」
「たま…シI。つK、mえた」

なぜこいつは私の【魂】をつかめた?あの女のように縁があるわけでもない。なぜ。どうして。わからない
なぜこいつは私を縛れる?理解ができない。
どうして?どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして、どうして……?
「お前凪を食っただろ。」
最初は食われたんだっけか、あの肉にお前は食われた。だがゴキブリよりもしぶといお前はそこで凪を核に動くあれを『食い返した』全部じゃねえが……部分的にお前はあの肉玉の中で自我を持った。
わずかだか、お前は主導権を持った。あの巨体は凪でもありお前でもある。あとは、言わなくてもわかるよな?
「お前の体には凪の一部が混ざってる。だからこいつ【凪】の名前に反応するんだよお前の【核】て奴はーーーーー次に会う時は真名を知り得てから心臓を狙えだったか?」
「嗚呼嗚呼あぁああ!?っがガァ嗚呼あああ嗚呼ああ!!!」
燃える、体が、燃える。
細胞が、以前の時とは違う、周りを焼くだけじゃない。
全てを底の部分まで焼かれる。
「悲しい事をさせるよな、この俺に一部だが凪を焼かせるなんてよ」
「嗚呼あ“あ“あ“A‘“嗚呼ーーーーー!!嗚呼ぁびぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「でもまぁ、お前の中にある方が胸糞悪りぃ……さっさと死ね。」

炎が、青い火が私を焼く。
燃える、消す。消える。全部が消える。私の全てが燃やされる。
待て、待て、嫌だ。まだ、私は死ねない。
まだ私は陽のそばに行っていない。だめだこんな、こんな底で死にたくない。
死ねない。此処は嫌だ。空に、あの空に行きたい。あそこで逝きたい。
生きたい。嫌だ、底で生まれて底で死ぬのか。
嫌だ、嫌だ。
私は、陽を陽を陽をっっっ!

「だぁぁ嗚呼ああ嗚呼ぁぁぁ嗚呼あびィぃぃいいいイイいいいいいい!!」


燃える、燃える。ケモノが燃える。
咆哮をあげて。呪いの断末魔を叫んで。
青い炎に包まれて。
焦がれた赤も、白さもない熱に包まれて。
ケモノは燃えた。
暗い冷たい穴蔵の中で、燃え尽きる。

何とも滑稽で無様で、呆気ない最後だろう。
だが死などとはこう言うものなのだ。
誰にでも何にでも平等に与えられる物。
それがケモノに来ただけであった。



燃えていた。
何かが凪の目の前で。
それが何だったのかも、なぜ自分が此処にいるのかも。
彼女はもうわからなかった。
頬に流れた涙が何だったのかも。

「終わったよ」
ザリリッ、燃えカスを蹴飛ばしてこちらに来る男を見上げていると傍で膝をついた男の指が頬を撫でる。
そのまま胸に抱き込まれ、焦げついた匂いが鼻を掠めた。
「生きててよかった」
どうしてそんな事を言うのだろうか、それがわからなかった。いいんだよと耳元で声がする。
いいんだよ何もわからなくてもと頭を撫でられる。
熱かった。先っまで感じてた寒さが嘘みたいに熱くて、少し痛いくらいに。
「大丈夫、大丈夫だ。■■■■が一緒だからな。」
「……あ」
「うん、もう何も解らなくていいよ。」
熱い手が頭を肩を背中を優しく撫でる。花に触れるように、泡を壊さないようにその手は自分に触れる。
目元を指で拭われて顔を上げるとそこには碧い目が自分を見下ろしていた。
緩やかに弧を描くその碧が爛々と輝いてそれが綺麗で。
少しだけ怖いと思った。

「さぁ、行こうか」
もう何も考えなくていい。一緒に行こう。
俺と一緒にと唇が瞼に触れる。
「いっしょ……」
「ああ、そうだよ」

一緒に帰ろう。





僕は妹が大切です。
だから何があっても僕は妹を守ります。
どんな場所にいようとすぐに駆けつけます。

だから、
だから。

ねぇ凪。
僕だけを見てよ。

だってもう此処に用はないから