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ボロボロに落ちて
落ちて…堕ちて
落ちて





星が堕ちた。
雲を裂き、空を切って一直線に降り注ぐ。
その光景を見た少女がつぶやいた。
「流れ星です」
迷う事なく灰色の巨体を目指して堕ちていく星にトガは手を組んで祈りを捧げる。
「凪ちゃんにもう一度会えますように」
大事な大事なお友達にまた会えますように。そう言葉を紡いだ。

星が堕ちる。
灰色の人の塊に向かって。
堕ちて、触れる。
その間際に巨象が形を変える。
丸く歪み取られた形状は繭のようで。
光と触れ合った瞬間それは弾けた。

眩い光と遅れてきた轟音。
衝撃により高く舞い上がる海水。
その場にいたすべての者の視界がすべて白く染まった。

空は雲は消えさり。
そこにはただ星が姿を現し始め薄く光を瞬かせ始める。
太陽はもう水平線の向こうへ身を隠しつつあった。



嗚呼、嗚呼ーーー熱い
そう思った。
強い強い熱だった。
熱かった。あんなに寒いと思っていたのが嘘のように。
今は全身が熱かった。
何も見えない。暗くて熱い。
体が剥がれる。手が足が頭がすべてがちぎれる様な感覚。
頭が崩れるような衝撃。

ーErROr
ーerRoR。
ー接ゾクの不良を完チ

警鐘が鳴っている。脳が損傷を訴えてくる。

ー継続フ能
ーさいキ動不能
ーerROr、繰り返ス
ーチルドレンとMOTHERの接ゾクをするのに重大ナ損傷が発生。
ーrecOvErY不能。保存データのロスト発生。

私の中が崩れていく。ボロボロと崩落を始める。
嗚呼、熱い。
嗚呼、痛い。

ーfile1のロストを確ニン
消えていく
ーファイル2のロストを確認。修復不能
ーdata3の消失を確認。
凪の物が消えていく
ー保存4の消滅を確認。recovery不能
焼かれて消えていく。
ーMOTHER接続不可。
ー離脱ヲ、カク認

体が投げ出される。浮遊感。
落ちてる。どんどん下へ落ちていく。

【記憶5から10の消失を確認】
【メモリー11から20の削除を確認】

消えていくのを止められない。
ただ、落ちていく。

【情報21から35のロストを確認】
【file36から50の消滅を確認】
【記憶51から100の消失を確認】
【修復不能】

落ちて、落ちて。
きっとまた底までいくのだろう。
冷たい。暗い海の底まで。
嫌だな。
嫌だな。

「ーーーーー……ーッ!」
【声】が聞こえた。
周りの音をもう【音】しか認識しなくなっていた耳がそれをひろう。
「ーーー…ッっ!」
【音】と【数字】としか処理しなかった脳がそれを【声】と捉える。

「凪ッっッ!!!」

声は私の名前を呼んでいた。
それに導かれるように凪【私】は閉じていた瞼を開いた。
そこに広がるのは雲がない空。
夜の帳が落ちきる前の薄紫色の世界。
落ちる自分とは対照的に赤黒い水滴が上に登っていく。
幾つもいくつもの赤い水が天へ昇る。
赤と薄い紫の空は驚くくらい綺麗だった。


【すべての記憶の消失を確認】

「凪!!」

その中に見えた。
落ちる私【凪】に見えた。もう一つの色。
こちらに落ちてくるそれは徐々に大きくなってくる。
「あ。」
綺麗な色、私の好きな色。

【一件の保存データを確認】
「手を……ッ!!」
この色に会いたかった。

【MOTHER権限で保持していた機密データを確認】

痛む手をそれに伸ばす。
凪【私】のよりも大きい手に触れる。
「やっと、会えたッ」
目の前で歪むとても、
とても綺麗な【碧色】

【起動維持のためーーデータの解凍を開始します。】

嗚呼ーこの色をずっと探してた。
まだ痛くて熱い体がそれに包まれる。
トクントクンと鼓動を感じる。

視界に映るのは薄い紫の空に瞬く星と舞い上がる灰色のチリ。
その中をただ落ちる。
堕ちて落ちて海の底にいくのかもしれない。
だけど何故だかもう怖くはなかった。

「■■……」

この色と一緒ならもう怖くはないそう思えた。

只、崩壊する灰色の塵を中を落ちていく。
やがて、黒い波が2人を飲み込んだ。