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見捨てられた者達





幾つもの空洞が焦凍を。
焦凍達を見ていた。
気持ちが悪い。
そう本能的に思ってしまった。
だが、他に着地する場所がない。
迷う選択肢もないままにその巨体へと近づく。

「……ッ!」

それに足をつけた瞬間、周囲に渦巻く音が声になって。
言葉になった。
彼らが理解できる「言葉」がそこに溢れていた。

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鳴呼
嗚呼痛い
苦しい嗚呼息出
嗚呼痛いよ怖い出れないやだ死嫌だ怖い暗い息毒
熱い熱い嗚呼苦しい怖い寒い痛い腕痛い暗い何で痛ない苦しい
嗚呼息出来ない溺れる熱い暗い怖い嗚呼痛い足血苦しい嫌だ嫌々辞めて痛い殴ら痛い熱い
嗚呼痛いよ怖いよいやだ嫌だ怖いいたい熱い熱い苦しい寒い痛い痛い暗い何で痛い腕ない苦しい嗚呼息出来ない溺れる熱い暗い怖い嗚呼痛い足血苦しい嫌だ嫌々辞めて痛い殴ら痛い熱い嗚呼痛いよ怖い出れないやだ死嫌だ怖い暗い息毒いたい熱い熱い嗚呼苦しい怖い寒い痛い腕痛い暗い何で痛い腕ない苦しい嗚呼息出来ない溺れる熱い暗い怖い嗚呼痛い足血苦しい嫌だ嫌々辞めて痛い殴ら痛い熱い嫌何で血熱い暗い痛い吐く呼吸痛い溺れる腕腕熱


誰か助けて


それは叫びだった。
もう生きていない彼らの叫びだった。
助けられなかった側の、救いの手からこぼれ落ちた人々の断末魔。
目眩がしそうだった。怨念、呪詛のように紡がれるそれをきっともう意味もなく吐き続けている伽藍堂の塊たち。これは現実ではないと脳が拒否反応をし始めている。
足が何か巻きつく気配がして焦凍は思わず足元を見てしまった。
手が、白濁した手が幾つもの生えて彼の足を掴んでいたのだ。

ー助けて、助けてよ、怖い怖いよ。
ーねぇ、どうして助けてくれないの?

「あ……。」

暗い落ち窪んだ穴と目が合う。
それに凪の顔が重なる。
「どうして助けてくれないの?」
ねぇ、何で焦凍。
妹が自分にそう言葉を投げてくる。
違う、違うんだ凪。
見捨てたわけじゃない。だからここに来たんだ。
お前を助けに来たんだよ。

【止まるな走れッ!】
耳の通信から聞こえるエンデヴァーの言葉に我に帰り、止まっていた足を動かす。
絡みついてた手は予想外にも抵抗もなくするりと外れた。何で置いていくのどうして見捨てるの背後に聞こえる声はまだ止む様子はなく。まだそこで言葉を吐き出し続けていた。

ーねぇ、何で?
ーどうして助けてくれないの?
ー何で、助けてくれないの。どうして僕たちを
ー私たちを、俺たちを見捨てたの、見捨てるの。
ー死にたくないよ。
ーまだ生きていたいよ
ーねぇ、ねぇ、何で、なんで
ー嘘つき、嘘つき。ヒーローなのに助けてくれないの

ー助けてくれないのなら
ー救ってくれないのなら
ーお前らみーんな死んじゃえ!

ズワァと地面が至るとことで割れ、中の空洞の赤黒い肉の塊が顔を見せる。
そこにも無数の人だった物。
蠢く目玉が所狭しとあり、それらが一斉に焦凍達を捕らえた。

ー嫌い嫌い、ヒーローは嫌い。
ーみーんな嫌い。
ーだからみんな消えちゃえばいいんだ!
きゃらきゃらげたげたと笑うように紡がれる言葉と共に何か奥の方で光るのが見えた。
【ッ!クソ舐めた事してんじゃねェ!】
【かっちゃんッ!】

BOOOOOOOM!!!
ZGYAAAGAAAAAAAA!!

放たれた光線と勝己の爆撃が激突し爆風が生まれる。
それに紛れて聞こえる断末魔とも取れる声に息を呑んだ。

【こんなくだらねェモンに気取られてんじゃねェ!ブッ殺すぞッ】
【わかってはいるけどッ……!でも】
【デモデモだってすんな、ブレんな。】

ブレるな。
ブッ殺すぞ。

「そうそう、迷ってたらなぁんにも救えないわよ」
蛇が這いずるように鼓膜に届く声には覚えがあった。
前を見るとそこにそれがいた。
灰色のそれ。
「お前らには救えない、あの子は、凪は私の物」
メリメリと肉の塊が生えてくる。
意思のなかった肉塊とは違い、それらは確実な意志を持ち焦凍達を見ている。
「しぶといなぁ、虫のようにしぶといなぁ君たち。さっさ諦めればいいのに。そしたら楽になれるのに……ねぇ焦凍君?」
あの子の事忘れちゃえば君ももっと楽になれるのに。
「うるせぇ……」
どして、自ら茨の道に進むのかしら。
「うるせぇよ。」
あの子は貴方の助けなんて望んでない。
貴方のことを恨んでるし、憎んでる。
「凪は貴方を待ってn……ッ」
ぐちゃりと肉塊がひしゃげる。握りつぶした肉の感触に不快感を覚えたが。
腹に沸き立つ怒りの方が強かった。
「ウルセェて言ってんだよ……。お前が凪の事を知ったように語るな」

いいからそこを退け。


お前はすっこんでろ