×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -





まもなく開演





潮騒のように遠くから聞こえてくる音がする。
砂嵐のような雑音の中、確かにその音は聞こえてきた。

「■■■■■■■」

無意識に溢れでた自分の言葉に返事をするように音はまた再び帰ってくる。

それはもうそばに来ていた。
私を迎えに来てくれた。

波の音がする。
私を呼ぶ声がする。

嗚呼これでもう、■■しくない。


潮騒の音がする。






「ゲラゲラゲラゲラ、ウッせぇんだよ!」
勝己の爆破を浴びた影は霧散したがすぐに形を取り戻しあざ笑うように不快な笑い声を上げだす。
ー全てが偽物
ー全てが本物
そう歌った影たちは今も増え続け3人を取り囲んでいる。

「どこかに絶対本物がいるはずだーーそれを捕らえればっ!」
「嗚呼、一気にいくぞ!」

蠢く影の向こうに見える妹の姿に焦凍の中に焦りが募る。#naem1#はこの現状をも認識していないのか海の方を見つめ、祈るように天を仰ぐ。
「すぐに行くから」
もうどこにも行かないでーー踏み出す焦凍の左が赤く色づき黒い影を照らした。痛い痛いと子供とも大人とも取れる鳴き声が鼓膜を揺らす。
痛い。
ヤメテ。
ヒドイ。
グッと心が揺れるような感覚ーーだが爆風によりそれらはかき消される。
「ンな分かり易い罠にハマりかけてんじゃねェ」
どこ見てンだテメェはーー真っ直ぐで迷いのない勝己の言葉が焦凍を叱責する。妹の話を聞かされてからの焦凍が普段とは違う事など勝己は分かっていた。
隠しているつもりなのだろうがこんな単純な敵の策略に揺れるほど彼の中は荒れている。だからこそ勝己は舐めるなと言いたい。誰よりも何よりも焦凍が凪を救いたいと思っているのならば迷うなと。
悪いと礼を述べる彼にクソ舐めプ野郎と述べて勝己は眼前に広がり続ける影達に向かって行く。
「さっさ、死ねェッ!」
渾身の榴弾砲着弾【ハウザーインパクト】が蠢くそれらに向かう。けたたましく響いていた笑い声が突如としてやむ。

ーまだやルノ?、やめナヨむダムだ。
ーおなかスイた。オイシそう。

ーもう。モウ

【もう遊ブの飽きタァ】

ドプリと影が揺れ、人の形をしていたその背中から巨大な鉤爪を持った手が生える。
無数の爪が向かって来ている勝己に照準を合わせ、黒く鈍色に輝くそれが振りかぶられた。
「ーーーーっ!」
「爆豪っ!」
「かっちゃんっ!」

焦る出久と焦凍の声と同時に振り下される刃先。

【□□□□□□ーー動くな!!】

だが次の瞬間に赤い血飛沫が舞うことはなく、勝己の眼前ギリギリで停止したそれ。おそらく影の意思ではない。誰かが無理やり干渉したのだろう。その証拠にあれ?どうシテ?と無数の口が喚き出す。

「全員下がっていろ」

後方から聞こえた声に少しだけ安堵の息が漏れてしまう。チリチリと肌を焼くような熱気に3人が飛び退く。
「灼け消えるが良いっ!」

ープロミネンスバーン!!!ー

断末魔もあげる隙もないほどの熱があたり一面に広がって。灼熱の赤い波が黒い影を呑み込む。
【aaAAa……】
ぷすぷすと炭化したそれからわずかに聞こえるのはケモノのような砂嵐のような雑音。その炭を乗り越えてまだ残っている影たちが唸り声を上げ出す。

「エンデヴァー、それにソアレさんも」
「皆さんご無事ですか!?」
「とりあえずは……さっき、アレが急に動かなくなったのは」
「私が止めました。」
「そうか、先祖の名前…!」
ソアレが口にしたのは彼女の祖先の名。名前は呪いだと彼女が予想していた通りそれには影の動きを抑制する力を持っていたようだ。
「アレの動きは私が止めます。なので皆さんは」
「一気に叩き潰ス!!」
「止められるのはきっと僅かな時間だけです。」
頼みましたとソアレと影の方に視線を移す。
追い求めていた標的を目にしてグッと拳を握り。揺れ動きこちらに向かってくるそれらを見据えた。

【□□□□□□ーー止まれッ!】

キンッーー糸が張り詰めるように影はその動きを止める。影は彼らの後方にいるソアレの姿を認識したようで視線が一斉に彼女を捉えた。

ーお前、キミ知ってる。あなた、
ーアレだ。もう来た。ヨクキタ。本当にホントに
ーバカだなァ

ドスッと影から伸びた一本の槍が
「アッ……」

ソアレの心臓に向かって放たれる。
「総代!!」
ようやく追い付いたであろう側近が彼女を庇いそのまま横に倒れ込んだ。
「ソアレさん!」
「大丈夫…腕をかすめただけです」
【なんだハズレタ残念。悔シイ】
「確かに動きは止めたはず…!?」
【バカだなァ、きみは貴方はお前は本当にバカねぇ】

影の一つが形を元のワラキアの姿に戻る。
「最後にあったのは10年以上も前だったかしら?アレからどれだけ食らってきたと思っている?あの女の魂があの時よりも薄まってるなんてこと」
少し考えればわかることでしょ?自分と同じ顔をしたそれが本当に馬鹿なやつと顔を歪めて笑い出す。背後にいるそれらも共鳴するように鳴き出した。
ーahahahhhahaahaxhHAAAHAahHAahaa!

「それとそちらは、エンデヴァーね。貴方に一度ご挨拶をしたいと思っていたの」

娘を私にくれてありがとうーーー心の底から思っているようにワラキアはエンデヴァーへ感謝の言葉を述べたのだ。
「巫山戯るな…」
腹の底が茹るのを感じる。だが、それで彼の中が荒れることはない。
「娘は…凪は返してもらう。」
「どうして?何故返さないといければいけないの?あの子は私の物よ……そもそも貴方がアレ【凪】を見捨てたんじゃない」

だから私は拾ったの。あの日の夜に。
元々あの子は一番欲しかった。私の望みを叶えるために必要なものを全部持っていた。でも自分で何かを起こすにはちょっと時期が悪かっただから親しい友人【OFA】に手を貸してもらったの。凪が手に入らなくても。近い素材が何個か集まればいいと思っていたから。そして結果は最高のものだった。

「貴方が選択を間違えてくれたおかげで私は凪を手に入れることができたのです」

ありがとう、エンデヴァー。
あの日判断を間違えてくれて。
だからこの日を迎えることができた。
予定は少し狂ってしまったけれどこうしてこの時を迎えることができました。

「チルドレンがマザーを迎えに来ました。」

海面が揺れる。
大きな飛沫をあげて海底の底からそれは現れた。


『まま、mいtぅけTa』


これからズットイッショダヨ