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たsケて
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遮断されたあそこから出た先は情報に溢れていた。
視覚、聴覚、嗅覚そして触覚から。刺激を感じるあらゆる感覚からの情報処理に凪の脳は働き続ける。


海(地球上の陸地以外の部分で、海水に満たされたところ。海洋とも言う。)があった。空は(地上から見上げたときに頭上にひろがる空間のこと。天。)黒い(色の一つで、無彩色。煤や墨のような色である。光が人間の可視領域における全帯域にわたりむらなく感得されないこと、またはそれに近い状態、ないしそのように人間の視覚に感じられる状態である。)夜(日没から日の出までの時間のことである。つまり太陽が地平線や水平線の向こう側にある時間帯のことである。宵(よい)ともいう。)だ。
鼻(動物の器官のひとつで、嗅覚をつかさどる感覚器、そして呼吸をするための呼吸器である。飲食物はじめにおいを嗅ぐ点で、口の補助的役割も勤める。)から何か落ちた。
手(手首から指の先までの部分。腕の末端にある器官。)に落ちた。赤(色のひとつで、熟したトマトや血液のような色の総称。暖色のひとつ。)だ
これは、血(動物の体内を巡る主要な体液で、全身の細胞に栄養分や酸素を運搬し、二酸化炭素や老廃物を運び出すための媒体である)だ。

「a,あぁ. 」

世界に広がる処理しきれない情報量の多さに耐えきれずに立ちくらみを起こしてしまう。それでも彼女の脳は無機質に活動を続けた。固く冷たい地面の上に赤黒い水滴が落ちていく。
「ta,たすケte… 」
震えながら開かれた凪口はそこで言葉を止めた。
続く言葉がでなかった。
その先が言えなかった。

誰を呼びたいのか
誰に会いたいのか
凪はわからなくなっていた。

「だ、dareか」

誰だっただろう。いつもそばに居てくれたのは。
誰だっただろう。この手を握ってくれたのは。
私は誰に会いたかったのだろう。

ふと顔を上げた凪の視線の先には倉庫がある。その窓には彼女の姿がうっすらと映っていた。
「daれ?」

窓に映る人物がわからなかった。
それが誰なのかも凪にはもうわからなかった。




お寿司はいつ食べても美味しい。それはお祝いの日でも、お祝いじゃない日でも。自腹だろうが、他人からの貢物だろうが変わらぬ幸福感を届けてくれる。
体の節々が痛くてたまらないけれど、お腹はいつもと変わらぬ活動をしているようで筒がなく消化運動をおこなっていた。
「こんなご馳走、凪ちゃんとも一緒に食べたかったです。」
一通り求めるままに箸をすすめ、最後に番茶を啜り一息をつく。最近会えていないお友達のことを思い出して漏らした言葉に反応したのは。言わずもがな部屋の隅で食事に参加していなかった男。
「荼毘くん、なんで凪ちゃんに会えないんですか?ずーっと会えないなんておかしいです。」
相手が自分を睨んでくる。人も殺せそうな。すでに何人か殺しているその眼にあるのは、苛立ちと怒りと少しの焦燥。
答えない相手にさらに問いを重ねる。
「もしかして、荼毘くんも会えていないんですか?」
「…。」
自分の隣で仁くんがトガちゃん怖いもの知らずと両手で口を押さえて怯えている。なんだろうその動き可愛いと思った。
無言は肯定の意味と捉える。最近の彼の荒れっぷりはそれが原因なのだろう。何よりも誰よりも凪を優先させているのは目の前の男だ。泥のようの重く底が無いものを向けていたのはよく知っていた。
異常だと思った。
イカれていると感じた。
それゆえに美しいと思った。
だから、今の状況に納得がいかない。
「荼毘くん、あの人は凪ちゃんのこと大事にしてくれないですよ」
「言われなくても…」
「わかってるならなんで凪そばに置いておくんです?」
こんなにも彼に突っかかるのは何故だろうか。多分それは自分が彼女を好きだからだ。可愛いくて哀れで綺麗な子。己の大切なお友達。それを自分よりも彼よりも大事にしないやつが独り占めしている。それがきっと嫌なのだ。
「あの人とどんな約束をしているのか私には分かりませんが。お行儀よく守らなきゃいけないんですか ?」
「ぁ?」
正規よりも邪道がお似合いです。違法な方法なんて今更躊躇う必要もないです。
「だって私たちヴィランですよ?」
彼は私が何を言いたいのか理解しているのだろう。私たちはこの生きにくい社会の中で言われている普通にいい子になる必要なんてない。だからとは思うがこれ以上は自分がとやかく言っても仕方のないことだ。
後は彼自身い決めてもらおうと再び箸を取り寿司桶に伸ばした時思いもよらない来訪者が現れた。「お久しぶりですね皆さん元気そうで何より、あらあら?でもなんだか怪我をしている人もいるみたい」
何かあったんですか?大丈夫ですかとわざとらしい演技じみた言葉の苛烈に不快感が湧く。私達の視線の意味がわかったのだろう。そいつは肩をすくませて弔くんの為に来た話してきた。
「死柄木のためだと?」
「えぇ、ドクターから連絡をもらいましてね」
マキアに加えリデストロとの戦闘で消耗し切った弔君の治療の為に呼ばれたと言うのだ。ドクターが頼むほどだこいつの腕は確かなのだろう。だがはいそうですかと簡単にリーダーを任せられるほど私達はこいつを信用していない。
「そんなに睨まないで、誓って死柄木弔に変な事はしない。だって興味ないもの。」
治療を終えたらさっさと帰るつもり。だから道を開けろと言わんばかりに奥へと進んでいくそいつに私は声をかける。
「何かしら?」
「凪ちゃん元気ですか?」
「元気よ」
「いつ会えますか?」
「もう少し後になるかしら」
「本当ですか?」
「本当よ」
「分かりました。」
「もういいかしら?えーっと」
「もう大丈夫です。ありがとうございます。あと名前思い出そうとするふりしなくていいです」
だって覚えてないですよね。そいつはニコッと笑みを投げると奥へと消えていった。仁くんが女の戦い怖いと震えているがこれは無視だ。
もうお寿司を食べる気分でもなくなってしまい箸をテーブルに戻すとそのままソファーに横になる。
怪我で消耗していたのは自分も同じのようで次第に瞼が落ちきて抗う必要は感じずそのまま瞼を閉じた。弔くんも凪ちゃんみたいにズタズタにされないでほしい。凪ちゃんにも早く会いたい。今度はちゃんと私の名前を覚えていてくれるだろうか?
そんなことばかり考えながらうとうと微睡んでいると。

ーーppppppppp……ーー

突然鳴り出した電子音に意識が戻ってきた。音の出どころは自分が来ているコートのポケット。
手を入れると慣れ親しんだ携帯があり身を震わせていた。取り出して見ると画面には【aHszaxaaws】文字化けのように表示されており普段なら無視して放置したままにするのだが。

ーーpppppppp…ーー

「……。」

何故かそれをする気にならないでいた。
このままこれを無視してはいけないのでは?とすごく嫌な予感がしたのだ。
受話器のボタンを押し、ゆっくりと耳に当てる。
「もしもし、誰ですか?」
そこから聞こえるのは波の音。人の気配はしない。聞こえるのはそれだけだ。
「もしもし?トガです。あなたは誰ですか?」
再度かけてきた人物に呼びかけた。最初よりもゆっくりと間をとりながらこれでダメならさっきの予感は気のせいだと思い切る事にしよう。

『ー…たSuケ…て』
「え?もしもし?」
ザラついた音が聞こえた。声というにはあまりにも不鮮明でまるで砂嵐中に居るような気分だ。
『キKoeマす加、taスけtえ、おねガi』
だけど自分はこの音を聞いたことがある。
「凪ちゃん…凪ちゃんですよね?」
『Nあ二も、waカらなi。たスkeて…だレka』
不協和音のように不快なものだけどこれはこの声は間違いない。確信を持って電話の向こうの人物に呼びかける。大丈夫だよ、落ち着いてと語りかけるが彼女はうわ言のように助けを呼んでいるだけだ。再度彼女の名前を呼びかけるがまるで自分を認識していない。これは何かおかしい。言いようのない不安感に頬を汗つたい落ちる。
「代われ」
いつの間にか隣にいた彼に私は咄嗟に携帯を渡す。
「荼毘くん、凪ちゃんの様子が変です。まるで私の声が全く聞こえていないみたい」
「凪? 聞こえるか?」
『ッ…。a.。たスketえ、こyよ。』
漏れてくる音の様子が少し変わる、凪が彼に反応した。そのまま落ち着かせるように言葉を重ね、居場所を聞き出そうとする。
「凪今どこにいる。」
『ワかlaなi…』
「わかった、何が見える」
『あ…』
「凪?どうし…」
『あaaaAAAaaaAAAaaaaaaaaaaAAAAAAAa.....!』
聞こえてきたのは、ノイズだった。
雑音。ザラザラとした不協和音が電話の向こう側から流れてくる。
「…は?おい、おい凪!?」
『Wakaらnaイ、nあニもWakaらナイ。noうガとケて、カnがeらレナi。aaAAxxa.
Onえがi、たスukeて、助づゲdMオウ…aaaあぁあ,』
「凪、大丈夫だ。絶対に見つける必ず俺が助けに行くから」
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
電話はそこで切れてしまう。彼がリダイヤルを試そうとするが。何故か履歴に残っていない。突然の出来事に処理がし切れていないでいると。彼は携帯をこちらに放り投げてくる。
「ちょっ、あ、荼毘くん」
「…あの女はまだ此処にいるな」
それだけ言うと奥へと歩いていく。
誰も止めなかった、止めるれるはずがない。そんなことすれば躊躇なく炭にされてしまうだろう。
真っ暗な画面の携帯を見る。もう何も映っていないそれは役に立たないただの板だ。
通話が途切れる瞬間に聞こえてきたあれは、唯一彼女から彼に宛てた言葉だった。

『d[buyt[dareukka0trなe
tar’te■■■■■』

自分が誰なのかもわからない。助けて■■■■■