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渡我被身子





―女の子って何で出来てる?
―女の子って何で出来てる?
―お砂糖とスパイスといろんなステキ
―女の子って、それらで出来てる。
(マザーグースの歌より)


「あなたとっても、とってもカァイイね。」
渡我被身子は自分の眼前にいる少女の手を握るとうっとりとした表情でそうこぼした。

渡我は可愛いものや美しいものが好きだ。
女子高生の制服に身を包み、好きなもの好きな人へ思いをはせる、今どきの少女である。
ただその対象への対応が彼女曰くほんの少し人とは違うだけの事だ。

彼女は現在、先日加盟した敵連合のアジトであるバーに居る。
そこで渡我は出会った。
轟凪に
一目見て渡我は凪を気に入った。
少し灰色が入った白い髪はさらさらと指どおりがよさそうで、その瞳は翡翠のようでなんて奇麗なのだろう。
自分が握る手は細くしなやかで、その肌はなんて白くて奇麗なのだろうと。
うっとりと恍惚とした表情で凪を見つめる
きっと、雪や、氷の結晶が人の形をとったら彼女のような姿になるのではないのだろうかと渡我は本気でそう思った。


「あなたのお名前なんていうの?」
「凪」
「凪ちゃん、凪ちゃんかぁ名前もカァイイネ」
私とお友達になって凪ちゃん。渡我が凪の頬をするりと撫でる。
凪は渡我の言葉や行動にあまり反応を示す事はなく、自分の頬を撫でるその手を受け入れていた。
その様子に、お人形さんみたいでカァイイと渡我は、この子は赤く染まってもとってもとってもカァイイだろうなと考えていると。
「おい、イカレ女。さっきからベタベタベタベタ触りすぎだ。」
同じタイミングで加盟した荼毘によりべりッと凪から引きはがされ、その至福の時間は終了する事となった。
自分の言葉にはあまり反応がなかった彼女が、現れた彼に「お兄ちゃん」と嬉しそうに顔をほころばせているのに驚く。
「お兄ちゃん?凪ちゃんのお兄さんなんですか」
その問いに荼毘は少し間をおいて、そうだと答えた。その様子に何やら、ちょっと複雑な事情がありそうだなと思いながらもそうなんですね、と当たり障りのない返事を返す。
「二人はとっても仲がいいんですねー、私も凪ちゃんともっと仲良くなりたいです。」
いいですか?お兄さん。女の子が少ないからお友達になりたいんですと渡我はニコニコと笑う。その様子に荼毘は腕の中に居る凪を一撫でし、勝手にしろと言った。
ただし、こいつに変な事をしようものなら殺すという言葉を添えてだが。


*

「凪ちゃんのこともっともっと教えてほしいです。」
だって私たちお友達ですから。兄からの許しを得て公認?の友人関係となった二人は、
バーの一角にあるソファに腰を掛けて友好関係を深めていた。
といっても渡我が一方的に凪に興味を示して、あれこれと聞いているだけにすぎないのだが。
自分の問いに、ぽつぽつと言葉は短いが返事を返してくれる凪への好感度はさらにうなぎのぼりのようだった。
「凪ちゃんは何が好き?だれか好きな人はいる?」
私はステ様がすきなのと話は年頃の女の子がする恋バナへと移った。
凪は「お兄ちゃん」と答える。渡我は少し苦笑してライクじゃなくてラブの好きだよと教えてあげるものの。
彼女はその違いが判らない様子だった。何が違うのと初めて凪から自分に質問を返される。
好きなものはお兄ちゃん、だって暖かくて優しいの。他は全部同じ。
何ともあまり思わない。そう変わらぬ何事もないような表情でそう続ける。
そこで渡我は理解した。
この子は何も知らない。わからないんだと。
本当にお人形のような存在なのだと。
なんて、なんて、愛らしくて、無垢で、無知で哀れな女の子なのだろう。
自分はこれから、この子がどのように変わり染まっていくのか見ていきたいと、新たな欲求が芽生えるのを感じた。
「これから知っていきましょう。」
私が沢山沢山教えてあげる。一緒に素敵なものを見ていきましょう。
だって私たちお友達だから。
だから
「私の事トガちゃんて呼んでください。」
先程よりも丁寧に凪の手を掬い取り自分の手と重ねる。
「トガちゃん?」
凪ちゃんこれから仲良くしていこうね。
この生きにくい世の中を、素敵で幸せな世界に一緒にしていこうね。

渡我被身子は美しいものや奇麗なものが好きである。
それと同じくらいに血に濡れたものも好きである。
この世の中がそんな、自分の好きなものでいっぱいになればいいと思っていた。
そうしたら、今よりもちょっとほんのちょっとこの社会が好きになれると信じている。


―女の人って何で出来てる?
―女の人って何で出来てる?
―リボンとレースと甘い顔(カンバセ)
―女の人って、それらで出来てる。

私はそれに何かが入ってしまっただけなんです。