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轟凪の廃忘





―――ある少女の記憶の断片―――


*しんぞうの手術をするため新しい病院に来た。先生はとてもやさしそうで、よかった。早く良くなりたい。お母さんたちが家に帰るとき、焦凍が寂しいてすこし泣いてた。お兄ちゃんなのに泣き虫め。ベットの横にお父さんの人形を置いたから、わたしは寂しくない。本当はちょっと寂しい。

*先生はやさしくてきれいな人、わたしのお母さんもきれいだけど。一緒に外に散歩に行って。沢山お話した。先生は色々な国に行ったことがあるみたいで、すごく面白いお話が聞けた。今度焦凍に教えてあげよう。

*今日はお母さんたちがお見舞いに来てくれた。お父さんはお仕事で来なかった。焦凍ちょっと元気なかった、こっそり聞いたらお父さんの訓練が嫌なんだって。わたしがお父さんに言ってやろうと思う。まったく、人の嫌がることはしちゃいけないのに。帰る前に焦凍がいつものおまじないをしてくれた。

*雨だから散歩に行けない、漢字ドリルと算数のドリルをやった。早く学校に行きたい。ご飯の後に先生とおしゃべりした。将来何になりたいと聞かれたけど浮かばなくて、明日までの宿題と言われた。焦凍みたいにヒーローになりたいわけじゃないし。夕方くらいにちょっと苦しくてお薬飲んだ。
私、将来元気な体になりたい。


*手術の日!お母さん達が朝から来てくれた。みんな居るから怖くない。焦凍におまじないしてもらったから大丈夫、頑張る!
お父さん今日も来ない、ヒーローは忙しいからしょうがない。


*本当はなんで来ないか知ってる。


*来週退院できるってお母さんが教えてくれた。うちに帰ったらお姉ちゃん達とご飯食べて、お母さんとお風呂に風呂に入って、焦凍とお母さんと寝るんだ。学校にも行ける楽しみ!
あとお父さんに「頑張ったな」て褒めてもらいたい。


――爆音――
*怖い、暗いやだ。誰か、助けて。怖いお母さん誰か助けて、怖い怖い怖い。誰かいませんか助けて怖いよ焦凍助けて怖い暗い痛い痛い怖い誰怖い暗い人怖い嫌だ嫌だ嫌嫌怖い誰か誰か怖い怖い嫌嫌嫌痛嫌痛い怖い暗い痛痛怖
助けてヒーロー【お父さん】
――ノイズ――
*同い年くらいの子たちが沢山いる。病院で見た子とかそうじゃない子とか、皆ここがどこなのかわからないみたい。大丈夫きっとヒーロー来てくれる。だから泣かない。怖くない。
――ノイズ――
*白い服の人達が私たちに研究のお手伝いをしてくれたら家に返してくれるって言ってた。そのあと、体重とか身長とか計った、注射された。お母さんに、焦凍に会いたい。ヒーロー早く助けて。
――ノイズ――
*ちょっと頭痛い。ふわふわする。何人か減った気がする。どこに行ったんだろう、ヒーローはなんで来ないの。隣にいた子と話たその子はお姉さんとここにいるらしい。いいな、でも焦凍はきっと泣いちゃうからいなくてよかった。そういえばあの子のお姉さんどこだろう。
――ノイズ――
*ヒーローは来ない
――ノイズ――
*目が覚めた。いつもと同じ部屋、人が減ってる。違う部屋に移動された。頭と胸に機械つけるらしい、これから手術。手術は怖い、前にもやった。前は何の手術したんだっけ?早く家に帰りたい。焦凍に会いたい、おまじないしてほしい。
――ノイズ――
――ノイズ――
*目が覚める。いつもと同じ部屋、検査、薬。なんで此処に居るんだっけ。そうだ、研究のお手伝いで此処に居て、終わったら帰っていいんだった。心配してるだろうな。会いたいな、焦凍元気かな。あれ、帰るってどこに?
――ノイズ――
――ノイズ――
*目が覚める。いつもと同じ部屋、検査、薬。会いたい、誰に?…「しょうと」に。心配してるきっと。眠たい。ふわふわする。
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――

*「しょうと」て誰だっけ。

――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
*そうだ、しょうとは私のお兄ちゃんだ。いつも一緒だった。私のお兄ちゃん。おまじないしてくれた。お兄ちゃんの顔が思い出せない、会いたい。
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
*『お兄ちゃん』はいつも優しくて、寒いと手を握ってくれて。おまじないしてくれた。どこに居るの?さみしよ、あいたい。
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
『お兄ちゃん』に会いたい。
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――
――ノイズ――

*
無機質な部屋の扉が開く、一人の研究者がベットに横たわる人物に近づく。
「ありがとう、貴方のおかげで研究は成功しつつあるわ」
耳元でそう囁く。だが、横たわるものからの反応はない。ただ空を見つめるばかりである、けれど研究者である女は何も気にとめてないようだ。
「あとは貴方の意識の安定だけなの、貴方にとっての要石は何?」
するりとその者の頬をなでるその様子は酷く扇情的でそしてどことなく恐ろしさを感じる。
すると初めて反応がみられた、
――お兄ちゃんに会いたい――
か細く震えるようなささやきは煙のように不確かであった。
「わかった、連れてきてあげる。」
私はあなたの先生だもの。フフフと微笑むと部屋の外へ向かう。その足取りは軽い。
研究者、名をワラキア。彼女の研究は約10年の月日を経て完成しつつある。

研究記録、最後の被験体、本名『轟凪』