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これは一体どう言うことだろうか。シロは目の前で起きている出来事が理解できない。否、理解をしたくなかった。
サルベージを初めた猿の船の作業を見学していると突然見たことのない大きな生物が海中から現れたのだ。しかも、その口に件のガレオン船を咥えているというおまけ付きである。
「が、ガミラだっ!」
読んだ本に登場した生き物にそっくりのソレはゆっくりと咀嚼を繰り返しており。その動きに連動しガレオン船がただの木片へと姿を変えている。その口元には3本の管が見えそれはメリー号にまで続いていた。それがなにを物語るのか容易に想像ができてしまう。

「う、ウソップ…。あれ、あれ」
「見るなァシロ!これは夢だ夢だぞ!!このデケェカメも夢だ!」
シロがウソップの服を引っ張ってその管を指差すが。彼はこれは白昼夢だと断固として認めようとしない。だが彼らの目の前には今も尚、島とも見間違えるほどの大きな亀がいる。これを夢だとは思えないが現実とも思いたくない。
「あら、船ごと食べられちゃった」
「みなまで言うなァ!子供が見てるだろぉ!」
「うぇぇぇん!やっぱりせんちょー達食べられちゃったんだぁ!」
ウソップの言葉にそうかこれは夢なのかとシロも逃避を始めようとしたが、ロビンの言葉によて引き戻されてしまう。

「ロビンっ!せんちょー達ガミラに食べられちゃったぁぁぁ」
「可哀想に、これが現実よ…」
「お前は悪魔か…!」
冷静に現実を叩きつけられたシロは泣き崩れてしまい、床に蹲る彼女の頭をロビンが撫でる。しかし、耐えましょうねとシロを優しく抱きしめるが彼女の言葉が一番残酷なのであった。阿鼻叫喚の為忘れられているが亀の口から伸びている管は今もメリー号に繋がったままである。深海に潜ろうとした亀に釣られてガタンっ!と大きく船が傾き出した。
このままでは船ごと海に引き摺り込まれることになる。
ならば選択肢はただ一つだとばかりにナミはシロとウソップに号令をかけ、二人もその声に応とばかりに立ち上がった。もちろんあの口の中にいるであろう仲間達を救う為である。
「ホースを切り離して安全確保よ!!」
駆け出す二人の背後から聞こえてきたのはあまりにも無慈悲な指示であった。
「うぇぇ!なんでぇ!なんでぇー!」
「悪魔かてめェは!」
「悪魔だー!」
ひどいよひどいよと流石のシロも遺憾の様子でポコスカとナミを叩いている。
「仕方ないでしょ、あいつらは死んでも死なないけど私たちは死んじゃうんだから!」
「言ってることわからないよナミちゃん!」
シロがルフィ達を助けようと懇願しているパッとあたりが暗くなる。影が落ちたわけではない。突然と夜が来たように暗くなったのだ。
今度はなんだとあたりを見回していると海中から甲板に何かが投げ込まれる。ゴロンと転がるのは亀の餌になったと思われたルフィだ。海水を浴びて気を失っているがどこも怪我をしていない。続いて海からゾロとサンジも這い上がり焦ったようにすぐに船を出せと言い放つ。
「よかったぁ生きてたぁ。ガミラに食べられたと思ったぁ」
「は?ガミなんだって?…なんでそんなに鼻垂らして泣いてんだ」
「ガミラがお船食べてちゃって、みんなもうお腹の中かと思ったよぉ…。」
シロの指さされた方を見るとそこには大きな亀が佇んでいて。口には自分たちがさっきまでいたガレオン船が含まれている。
「「なんじゃありゃあ!!」」
「気づけよ!お前らあれに食われてたんだぞ!!船ごと!」
何はともあれ無事に生還したのなら構わないと出発しようとしたメリー号に再び海中から何者かが飛び込んできた。
「マシラ様のナワバリで財宝盗んで逃げれると思うなォオオオオ!!」
シロ達にはあんなにフレンドリーだった猿の長が怒髪天の様子で甲板の降り立つ。ゾロ達の様子からも何かあったようだ。一触即発の中、我関せずと海に潜ろうとしていた亀が急に怯えたように震え出す。
亀だけではない、猿の船にいる男達も同じ方向を見て青ざめていた。

「あ…」

そこには人がいた。否、人の形をした何かがいた。
人と呼ぶにはあまりにも。
「怪物だああああああ!!」

それは大きすぎた。



くーくーとカモメが空を羽ばたくのをシロとチョッパーが見上げている。

「ジャヤまだかなー」
「もうちょっとじゃないか」
「ナミちゃん怒ってたね」
「ルフィ達がガラクタしか持ってこなかったみたいだからな」
「ロビンがエターナルポーズ見つけてくれててよかったね」
「そうだな」
春の気候に当てられたシロ達の会話は実に穏やかで。ポカポカして気持ち良いねと今にも眠ってしまいそうなほどに暖かい日差しにシロようやく平静と取り戻しつつあった。
空から落ちてきたガレオン船に巨大な亀、昼にきた夜と見た事のないほどの大きな人の影にシロはもう疲れ果てており。もうこのままジャヤに到着するまで眠ってしまおうかと甲板に横になる。心地よい海風とカモメの声が眠気を誘っている。散々な1日だったがもう大丈夫だろうとシロは瞼を下ろした。
数秒後ボトト、ボトッ!と彼女の真横に瀕死のカモメが落ち。顔面に血飛沫を浴びることになるのを彼女はまだ知らない。

「う、うギャァああああぁぁあぁああ!!」
「ッぁぁああああ撃たれたぁぁぁあぁぁ!!」