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50


床に広がる色とりどりの小物達を前にシロは腕を組んでいた。目の前に並ぶ物のどれをこの後にあるであろう空島への冒険に持って行くかという。彼女にとってはとても需要な選択を迫られいる最中であった。

「よし非常食はチョコじゃなくて、アメにしよ!けってー!」
数分後、無事に最後の選抜メンバーが決まり。シロは戸棚にしまっているリュックサックを取り出すと今決めた物達を詰め込んでいく。するとトササッと膝に何かが落ちる。
それは小さい星が散りばめられたハンカチで今シロがリュックに入れたばかりのものだ。それがなぜ膝にあるのだとリュックの中を覗く。見えたのはリュックの奥に見えるシロの膝だ。
底が破れしまっているようでこのままではリュックの役目を果たせそうにない。これは一大事だとシロは甲板へ向かう。

「あぁ、これはもう無理じゃないか?」
メリー号の修繕をしていたウソップはくたびれたリュックをシロへ返す。それを受け取るシロはどうしてと眉を下げた。
「布自体がもう劣化してるんだよ。麻袋で適当に作ったやつだったからなそれ、繕ってもすぐに同じようになっちまう。」
新しいのにした方がいいとウソップは再び金槌を振る。
「買いに行ってもいい?」
「だめだ、シロもさっき聞いただろこの島から聞こえた声をこんな物騒な街に行ったらお前なんか数秒で攫われちまう。」
リュックだった物を握り、シロがそう言うや否や間髪入れずに止められてしまった。ジャヤは穏やか気候に似合わす物騒な雰囲気が漂っており。偵察もルフィとゾロが向かったのだ。彼の言う通りにシロが買い出しに行けば一瞬で人攫いならぬ竜攫いに遭ってしまうのは目に見えている。
「ウソッ…」
「あぁーと!俺はこのメリー号を修繕する大切な役目があるからな!」
「チョッ…」
「お、お、オレはウソップの手伝いをしなきゃ行けないから!ごめんシロ!」
「じゃあ…サンジに…」
「「それはやめてくれ!!俺たち死んじまう!!」」
一字一句同じ言葉述べて自分に縋り付いてくるウソップ達にシロはわかったと返答しかできない。サンジは連れて行かないと再三誓わされたシロは部屋に戻る。床には冒険に持っていこうと思っていた物達がシロの帰りを待っていた。リュックがなければこれらを冒険に連れて行くことができない。しかし街は危険だからといく事はできず、シロは八方塞がりとなってしまった。
「困ったぞ!大問題だ!」
「何が大問題なの?」
頭を抱えていると突如後ろから声が聞こえる。振り返るとそこにはロビンが不思議そうに自分を見ていた。床に広がる物と自分を見比べてお飯事?と尋ねてきた彼女に違うと言ってシロは先程の出来事を伝える。
「確かにそれは問題ね、こんなに素敵な物を持っていけないなんて……。」
「だから困ってるの」
シロの話を微笑ましそうに聞きながらロビンは床にある小瓶を手に取る。中には小さなキャンディーが幾つも入っており、コロコロと身を振るわせている。ロビン目の前に居るシロは塩を振った野菜のようにしおれてしまっている。それだけ空島が楽しみなのだろう。
「じゃあ、おちびちゃん私と一緒に出かけない?」
思いもよらない誘いにシロは一瞬顔を輝かせるがすぐにウソップの言っていたことを思い出して顔を曇らせる。この街は危ないよと言われたロビンは思わず吹き出してしまう。自分の経験してきたことに比べればこの街の危険なんてたかが知れている。
「おちびちゃんは私が狙撃手さんや船医さんよりもか弱いと思う?」
「うーんと……」
シロの中に天秤が出現しロビンとウソップ達を秤にかける。するとそれはすぐに彼女へ傾いて思わないと首を振った。現実時間にして三秒もかかっていないだろう。なら何も心配はないだろうと誘うロビンに今度こそシロは頷き立ち上がった。
ウソップ達に見つかると何か言われそうなのでこっそりと船を降り、シロ達もモックタウンへと向かう。

「ロビンの手は凄いね。」
今二人は手を繋ぎながらモックタウンへ続く小道を歩いていた。時折起こる春風に髪を揺らしながらご機嫌な様子で鼻歌を奏でていたシロがそう口を開く。どうしてと言われた彼女はだってねと言葉を続ける。
壊れた骨を直したり。沢山物を運んだり、さっきメリー号降りる時みたいに梯子にもなるんだよ。凄いよ、魔法みたいと指を折りながら言葉を紡ぐ。
「あ、あとみんなよりもこちょこちょできるからくすぐりっこは無敵だね。ねぇ今度せんちょーと対決してみて、今せんちょーが一番の強いの……。ロビン?どうしたの?」
頭上の方から聞こえていた反応がいつの間にかに消えていた。不思議に思ったシロはロビンを見上げる。彼女は少し目を見開いてこちらを見つめ返していた。だが、その瞳は微かに揺れシロではない何かを見ている。シロはロビンがどこか遠い所にいるように感じ、言いようもない不安にかられてしまう。それを振切るように「ロビン」と再び彼女の名前を呼んだ。
「ごめんなさい、今までそんなこと言われたことなかったから驚いてたわ」
「本当に?もしかしてお腹痛い?それともお腹すいた?」
「……本当よ。ほら見て、街に着いたわよ。」
この話は終わりとばかりに切りあげられてしまう。シロはこれ以上は踏み込むことはできず首にかけていたガマ口を握った。コツコツと貯めていたベリーが入っている羊型のそれは握り込む度に歪のその顔を変えている。シロは何故か少しだけ悲しくなってしまったのだ。理由はわからない、どうしてかもわからない。ロビンの手を強く握ってみる。彼女はそれに応えるように握り返してくれる。ほんの少しだけ悲しさは薄まったよう感じた。

「さぁ、おちびちゃんお買い物をしましょうか」
「ロビンは何を買うの?」
「服を少しね、何時迄も航海士さんの物を借りるのは悪いから」
「はい!こーでぃねーとしたい!」
「ふふ、それなら私がリュックを選んであげるわね」
弾んだ会話をするシロ達を待ち構える街は物々しい雰囲気を纏っている。気をつけて行きましょうと足を止めずに歩くロビンに続いてシロもモックタウンに踏込む。広がる街並みは荒々しく、見渡す限りで至るところで乱闘騒ぎが起きていた。自分たちよりも先にこの街に来ているルフィ達は大丈夫かと思いながらも通りを縫うようにして進む。
「洋服屋さん何処かな」
「もう少し進んだ先にありそうね。それと何処か丁度良い酒場も探さないと」
「え、ロビンお酒飲むの?」
意外な言葉にシロは驚きの声を上げた。もちろんそんなつもりはないロビンは首を横に振る。目的はそこに集まる情報収取のためだ。
「お酒を飲むところは情報が集まりやすいの」
「そうなの」
「えぇ、だって珍しい話を知っていると誰かに話したくなるものなの、特に」
酔ってる時はね。人の口に戸は建てられないものだと秘密の話をするようにシロの耳元で囁く彼女は何処か楽しそうである。シロもつられて口を空いている手で隠しながら頷く。
「空島行けるかな?」
「行けるわよ、だって私たちは」

自由だもの