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「だからお前はわかってねェって言ったんだ。」
ルフィは気を切らせながら、ゆっくりと立ち上がる。体が驚くほど重たい、でも止まっているわけにはいかない。
自分が止まってしまったらきっとビビが、あいつが自分がやると走り出す。人に死んでほしくないからと痛みも何もかも自分だけが背負ってしまう。
放っておいたら、目の前にいる男やその部下たちに殺されてしまう。
だから自分は立ち上がらないといけない。立て、立て、立てとルフィは自分に念じ続けた。
「わからねェ奴だ…だからその厄介者を見捨てちまえば言い…あの女もこのガキも…」
「死なせたくねェから、仲間だろうが!!!」
馬鹿なことを言っているのはお前だと言うかのように言い切る。ビビが国を諦めねェ限り、絶対に戦う、それが当然の事だとそれ以外に何があると言うかのようにルフィはクロコダイルを見た。
「死んだ時は、それはそれだ…!!」
だから、お前に何度だって挑んでやる、そう思い拳を構えようとしたが、足から力が抜けていく。倒れ伏す己をみてクロコダイルは高笑いをする。
遠くの方でシロが自分を呼んでいるのが見えた。大丈夫だと言ってやらなければ、だから立たなければと体を動かそうにも自分のものじゃないかの様に動かない。
それでも立ち上がろうとする自分にクロコダイルは笑う。無駄な事だと、結局は自分に勝たなければ、今までの事は水の泡なのだ。そう嘲るように笑い、爆弾の時間が来たと天を仰ぐ。
「終わりだ」
コブラは隣にいるシロを瓦礫から守る様に抱き、目を閉じた。しかし、衝撃は何時まで経っても来ない。
地鳴りの音が先ほどと変わらずに響いているだけだった。
誰かが、爆弾を止めたのだとコブラは理解する。
「安心するには早すぎるぞコブラ、爆弾は時限式さ」
「…!?何という卑劣な!!」
せめて用意周到とって欲しいとクロコダイルは肩をすくめる。作戦と言うのはあらゆるアクシデントを想定し実行すべきなのだ。どんなことでも動じては上に立つものはやっていけない。広場に打ち込まれない事が残念だが、被害が大きいことには変わりないだろうとあえてコブラにわかりやすく、そして絶望するように教えてやった。
そしてコブラの腕に居るシロに眼が写る。
「何を見てるガキ」
シロはなす術なく自分を睨むコブラは違った。何か別のものを見つめている。そしてその眼は先ほどよりも光が戻っていた。
何故だ?何故この状況でと彼女の見ているものを確かめるように視線をたどり後ろを振り返る。
「せんちょーはお前に敗けないよ」
その先には血だらけで立っている、モンキー・D・ルフィが居た。
「お前なんかじゃあ、俺には勝てねェ…おれは【海賊王】になる男だ!!!」
その姿を見て、クロコダイルは理解する。この男は少しでも早く殺しておかなければならない者だと。
この男は決して折れない。だから今、息の根を止めるチャンスが一番あるこの時に葬り去ってやらなければと毒の仕込んであるかぎ爪を再び振りかぶる。

「…おれはお前を超える男だ…!!!」

ルフィにより地面に叩きつけられ、かぎ爪はボキリと折れてしまった。

*

―ドォォォォン!!!!!―
地下にまで聞こえる爆撃音。
あの男が言っていたのように爆弾が爆発したのだと思ったが、何かがおかしいとコブラは上を見上げる。
恐らく爆弾は広場の近くにあったのだろう、そこで爆発すればここにも爆撃の被害は来るはずだ。それがないのは何故なのだろう。
「誰かが爆弾を持ち出したのか?」
でも誰が、自分の問いの返事に答えてくれる者はいない。だが、クロコダイルが描くシナリオからはずれていっている事はわかった。
腕を引かれ、そちらを見るとシロがクロコダイル達を見ながらもうすぐだよと口をひらく。
「もうすぐ終わるよ、おじさん」
「あぁ…」
「せんちょーが勝つよ」
「何故君は、そこまで信じられるんだい」
迷いなくそう言い切る彼女に思わずそう聞くと、わからないと返されてしまう。少し考えた後にシロはせんちょーだからとつぶやいた。
シロがルフィが勝つと信じているのは、彼だからそう思った。それ以外の理由はないのである。子供だから言えるその答えだったが、コブラもそうだなと同意した。
「おれはお前を越えていく!!!!!」
きっと彼はこの嵐を打ち払うだろう。ルフィに蹴り上げられたクロコダイルをコブラとシロは見上げる。

―今度雨が降るならすごい雨だよ―
―何故だい―
―沢山休んで、元気いっぱいだから―
―元気な雨か…それはいい―
―なんていうんだっけ、スーなんとかていうの―
―あぁ、それはきっと…

【暴風雨(ストーム)】


ゴムゴムの暴風雨!!!!!
砂嵐を吹き消す、力強い雨。もうすぐこの地に降り注ぐ。そして、この戦いは終わるのだろう。