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【雨のお歌はないのか、なら今度一緒に作ろう。】
私に寄りかかる小さな命がそう呟いた。
目の前で起こる風景に自分達が置かれている状況を理解しているのだろうか。何故未来に思いをはせられるのだろう。この子の言葉は、明日もまた生きられるそう信じているから出ているのだ。
「君は怖くないのか?」
「せんちょーは勝つもん。」

だから怖くないよ。


**
クロコダイルとルフィの再戦が始まった時に二人はミス・オールサンデー、真名【ニコ・ロビン】に連れられある場所に向かっていた。
「これを飲んで」
宮殿を出た後すぐに、ニコ・ロビンはポケットから小瓶を取り出してシロに服用させる。また何か毒を飲まさせているのかとコブラが止めるが、痛みを緩和させる薬だと言うのだ。
「解毒じゃないから毒は残った儘だけどこれなら歩けるでしょ、お嬢さん」
時間がないから急いでと、シロの手をとって歩き出す。コブラはその光景を見て違和感を感じた。その違和感が明確なものになったのはそれからすぐの事である。
海兵の一団を鉢合わせ、そしてニコ・ロビンが一掃した時、全員の息の根を止めるつもりだったのだろう。
能力を使用するために手をかざした時、シロが彼女に止めてと縋りついたのだ。
「やめてよ、ビビの国でもう酷いことしないでよ」
抱き着かれたニコ・ロビンは目の前に倒れ伏す海兵達から彼女に眼を移した。
「お願いだからもう此処で酷いことしないでよ」
私言うこと聞くからと懇願するシロにニコ・ロビンは眉間に皺をよせ苦い顔をする。そして一つため息を付き、行きましょうと二人を連れて歩き出した。
「この子に免じて命は取らない、精々彼女に感謝しなさい。」
倒れ伏していた海兵の曹長、たしぎにそう吐き捨ててその場を後にする。
この女はこの子供をどう思っているのだろうか。クロコダイルは道具の様にその辺りにある塵の様にこの子を扱っていた。だが、ニコ・ロビンの行動はそれとは違う、まるで…。その先の言葉の正体がつかめない。
そうこうしているうちに、葬祭殿にたどり着き、王家が守っていた場所への通路を進む。見えてきた扉の向こうには大きな鉱物がひっそりと置かれていた。
そこでついにシロが崩れ落ちてしまう。いくら痛みを抑える薬を飲んだとしても毒は依然と体を蝕み続けているのだ。
「お嬢さんはそこに座っていて」
入り口近くに彼女を案内しコブラも横に座するように命じる。シロの身体を支える姿にコブラはまるで母親が子供の面倒を見ている物と同じように思えた。
「大事なのか、その子が」
「下手な事を言うのは賢くなくてよ、ただ幼い子が苦しむのを見る趣味がないだけ」
口を慎みなさいと言い放ち、ニコ・ロビンは鉱物、【ポーネグリフ】へと向かう。地下に作られたこの部屋には外の喧騒も聞こえない。
響くのは自分達の呼吸の音だけであった。

*
「この国の歴史なんざ知ったこっちゃねェ!!!この土地に眠る世界最悪の軍事力のありかをさっさと教えろ!!!」
もう聞きたくないなと思っていたあいつの声が耳に届く。いつの間にか寝ていたのか閉じていた瞼を何とかこじ開けると怒りを滲ませて女の人に詰め寄るクロコダイルが目に映る。
「気が付いたかい」
「…?」
少し顔を上げるとビビのお父さんがいた。私は壁にもたれかかる様にして寝ていたみたいで、起き上がろうとするが痛くて動けない。無理に動かないほうが良いとそのままでいいと言ってくれた。
「おじさん、なにがおこってるの?」
なんであの二人が戦ってるの?そう聞いた私にビビのお父さんは、彼らは仲間ではなかったのだよと教えてくれる。
私達の前ではクロコダイルのパートナーの人、名前はそうだニコ・ロビンだ。その人がクロコダイルにナイフを向けていた。
でもそんなものはクロコダイルには何にも意味がないようで、あいつのかぎ爪がキラリと光る。
「見てはいけない…ッ!」
その先に何が起こるのかわかったのか隣にいた彼が体を捻って覆いかぶさるように私の視界を遮った。聞こえたのはなにか重たい水の音と誰も信用はしていないと言うクロコダイルの声。
そして、
「血だ」
床を流れる誰かの血が見えた。
「ガキにはこんな物見せられねぇってか?」
人の親だけはあるなぁ、コブラ。きっとあの人はこいつにやられてしまったのだ。残されたのは私達とクロコダイルだけ、何も出来ないどうすることも出来ないそう彼は思ったのだろう。
何かを決心したようで、静かに私に話しかけてきた。
「君の後ろの壁に小さな棒が刺さっている。抜けるかい?」
「うん」
「…君だけは助けたかった。…すまない」
辛そうに謝るので、大丈夫だよと言うそして、そろりと後ろに手を伸ばすと確かに細い棒があった。言われた通りにそれを抜く。するとたちまち辺りに地響きのような音が鳴りだした。
ゴゴゴゴゴゴゴという音と共に壁にひびが入り始め、上から石や砂が落ちてくる。
ビビのお父さんはゆっくりと私の前から退いて隣の壁にもたれかかった。彼を縛っていた手はいつの間にか消えており自由になった両手で私の頭を護る様にしてくれる。
「テメェ等か…?何をした……!!!」
この事態はクロコダイルも驚いているようで、すぐに私たちの方に眼を向ける。さっき私が棒を抜いたのでこの建物は崩れるようになっていたのだ。
「ネフェリタリ家第12代国王の名においてお前ごときにこの砂の国はやれんなぁ…」
「オーオー…王様の鏡だな、てめェは…」
己を道連れにしようとしているのにクロコダイルはそれが面白いかのように笑いだす。そして、自分は殺せない、落ちてくる岩もすべて砂にすればいいと言う。
「俺はそのガキを連れて脱出できる」
ビビのお父さんに犬死はお前だけだと馬鹿にするように笑いだした。うるさいほどなる地響き、とコイツの笑い声の中私はある音を聞いた。
「そんな事ならないよ、おじさんは死なないよ」
捕えた音を聞いた私がそう言って、ぎゅっと隣の彼の服を握った。
「ハッ…ついに頭がおかしくなったか?何を根拠に言ってやがる」
その音はどんどんこちらに近づいてくる。だから私は自信を持って言えるのだ。
「私達どっちも死なないよ、だって。」
ドコォォォ!!と壁が何かの衝撃で壊され、その奥に見えた姿に二人は驚愕した。

「だって、せんちょーが来てくれたもん」

そこには何度だって立ち上がる船長がいた。
何度も自分に向かってくる船長にクロコダイルは何故こうも立ち上がってくると言う。
船長はまだ取り返してない物があるからと当たり前の様に答えた。
返してもらっていないビビの大切な物、それは【この国】その物である。もう自分達が此処に来た時にはビビの国は何処にもなかった。何もなかった。
「ここが本当にあいつの国ならもっと笑ってられるはずだ!!!!」
船長の蹴りがクロコダイルを捕え、体制を立て直される前に拳が顔にめり込む。
この場に水はない、だけど水分はほかにもある。
「血でも砂は固まるだろ?」
とめどなく拳を伝う血液を見せつけるように船長は静かにそう答えた。
そこから二人の海賊の決闘が始まる。最後に立つのはどちらかのみの生き残りをかけた戦いだ。

*
互角…いや、徐々に少年の方が優勢となってきていた。
あの王下七武海の一人クロコダイルを此処まで追い詰める彼は何者なのだろうか?それに、隣にいる子供が絶大な信頼を置いている。
あの少年が来てから、彼女は落ち着きを取り戻していたようで微かに震えていたのが治まっていた。
「ねぇ、おじさん…」
「なんだい」
「雨のお歌知ってる?」
そう聞いてきたこの場に似つかわしくない質問の意味がわからない。私の返事を待つ前に彼女は言葉を続けた。
「太陽もずっと出てたら疲れると思って。この国の太陽沢山働いてるから疲れてるんだよ、だから休ませてあげたいんだ。お歌歌えば雨来てくれるかなって思ったんだけど私知らないの」
王様だから知ってるかなって、そう私を見上げてくる。【太陽も疲れてる】そうだなぁきっと疲れてるだろう。この国は空も大地も疲れてるから休ませてやりたいそう思ってきた。だが、己にはそれをさせてやる力がなかった。
「私も知らないんだ。雨を呼ぶ歌は、この国にはないな…」
「雨のお歌はないのか、なら今度一緒に作ろう。」
此処を出て元気になったら一緒に作ろう。


ビビとせんちょ―とみんなと、ユバのおじさんと、いろんな人と一緒にそれを歌おう