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12


ナミは静かにため息をつく。
航海は今のとこに問題はなく、天候が荒れている様子もない。
けれどもどこか心の内はどこか重い、原因はわかってる、あの竜の子どもであるシロについてだった。
結論から言えばシロは何も知らなかった。BWがなんなのかも、アラバスタの事も何も知らないようで。恐らく嘘は言っていない、自分はそのあたりには勘の鋭いほうだと思っている。ほかの仲間達もあの子に対して何も疑いもっていない。
だから話し合いの末、シロはこの船に一時預かりという事になった。もっともルフィはあの子を仲間に引き入れる気満々のようだが、それについてはアラバスタの件が済んでからという事にした。

恐らく本当にシロは何も知らないただの子供なのだ。そんな子が今まで体験してきた事があまりにも普通ではなかった。

―捨てられたの、みんなと違ったから―

あっけらかんとシロは言った。自分は親と他の家族と違い奇形だったからと、悲しむ様子もなくそれは仕方ないことなんだと答える。それからドワーフに拾われ一時の幸福な暮らしをしていたがそれも長くは続かなかったようだ。心無い人間にそれを壊され、一人研究所送り。そして最後はBWに捕えられてしまう。聞いていたこちら側が顔を引きつらせてしまった。実際にウソップやルフィは鼻を垂らして泣きながらシロに飛びついてた。
なのに、どうしてあの子はあんなにも…

「ナミさん、お茶をどうぞ」
香りのいい紅茶のカップがナミの前に置かれる。運んできたサンジにお礼を言いカップに口をつける。あたたかい紅茶でほっと一息をついた。
「もしかしてシロちゃんの事考えてた?」
「まぁね、あの子が経験してきたことは、辛いことばかりだったと思うの。なのになんでシロはあんなに」
「普通に笑っていれるのか?」
その言葉に頷く、まさに自分が考えていたこと同じ事だった。
二人の視線の先には、船首近くでルフィやウソップ、カルーに交じって談笑しているシロがいる。その顔からは彼らに怯えている様子もない。それが疑問なのだ。
「もしかしたら、シロちゃんは動物的考えのほうが強いんじゃないかな。」
サンジはおもむろに口を開く。「どういう事?」いまいちピンと来ていないナミは首をひねる。
「シロちゃんは元々は竜という動物みてえなもんだ。弱肉強食が当たり前の世界だったろうし。それに人として誰かと交流したことがあんま無くて、人としての感情とかそういうのが育ってないじゃないかなって」
これは、俺の想像なんだけどねと煙草を咥える。火をつけ、一息吸い、もしくはと言葉をつづけた。
「防衛本能で、辛かった事とかそう言った出来事をできるだけ考えないように、思い出さないようにしているとかね。」
吐かれた煙は空に消えていく。
「どっちもありえるわね」
「どちらもあんま良いことじゃないけどね。」

二人の間に沈黙が走る、船首に居る彼らの笑い声がよく聞こえてきた。
ナミさんとサンジはナミに声をかける。
「俺はシロちゃんが今までクソみてぇな事しか経験してこれてないんだったら、これからはクソみてぇに面白れぇ事とかを経験していければと思ってる。その為の手助けなら喜んでするつもりだ。」
この船にいる一時の間だけでも。あの子には笑っていてほしい。
レディーには笑顔が一番だから。

「ルフィはシロをもう仲間のつもりでいるみたいだけどね。」
「それならそれで俺は構わねぇよレディーは何人いてもいいもんだ。」
ナミは少し冷めてしまった紅茶を口にする。
少し子供のころの自分とシロを重ねているのかもしれない。
だから、この手をあの子が望むなら自分は迷わず差し出すだろうと思ったのだ。


「妹ができるみたいでいいかもね…」
―キミの幸せを願ってる―