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13


青い海が自分の視線の先にどこまでも続いている。暖かな太陽の日差しで水面は美しくかがやいて、時折吹いてくる風がとても気持ちがよい。
私がその景色をメリー号の羊の頭近くに座り、柵の間から足を外にぶらぶらと投げ出しながら見ていると。

「お前、ずっと見てて飽きねぇのか」とゾロが私の横にやってくる。
とてもいきなりだったのですぐに返事が返せなかった、何せ彼との会話はこれが初めなのだ。
先ほど行われたナミちゃん達との話し合いの時もゾロは少し離れたところから黙って私達の話を聞いているだけだった。自分に関心とか興味がないのだろうと思っていたので、私からあえて関わろうとしないでいたので、今の状況は予想外だった。
聞いてんのか?とさらに問いかけてくる彼にやっと我に返りちっとも飽きないと返事をする。
「さっきから同じ景色だろ。」
「一緒じゃない。海も、空もさっきと色違うよ。雲も違う。それにね」
また前を向き海を見つめる。
「わたしの見てきたものにはなかった色だ。すごくきれいだ。」
この景色を見ていると胸のあたりが不思議な感覚になる、それがたまらなく心地が良いのだ。
ゾロは私の答えにそうかと言い、柵に背中を預けて空を見上げる。
なにか言いたそうに頭をかいているが、何も言ってこないので、どうしたのだろうと見ていると
彼の足が目に入る。両方ともまだ包帯を巻いていてとても痛そうだ。
「足、へーきか」と指をさして尋ねる。
「平気だ。これくらい」
つま先で床とんとんとしながら、なんてことのないように言う。
あんなにたくさん血も出ていたのにもう治ってしまったのかと少し信じられなかった。
どうやら、信じられないというのが顔に出ていたらしい、「嘘じゃねーよ」と念を押された。
指をさす私の手を見ておもむろに「お前ちょっと立ってみろ」と言った。
何事かと思いつつも、ホラさっさとしろと言われるままにその場に立つ。

ゾロは上から下まで私を見て小さいなと首を捻る。
「あの時、ナミやビビを投げたよな」
「投げた」
「俺の事も投げたよな」
「投げた」
二人より重たかったけれど、と感想を付け加える。何が言いたいのかなんとなくわかった。
見た目に反しての私の力の強さが気になるようだ。
「人型の竜は力すごいんだって」
自分の身体よりも大きい石や荷物を軽々運んでいるとじじ様達からすごく驚かれた。それに研究所でも力について色々なことを調べられ、その結果を見て、そこの人たちを驚かせたことを思い出す。
なんでかは、自分でもよくわからないけど、そういうものなんだってと説明すると
「自分でもよくわかってねーんだな」ちょっと呆れるように言われた。

そこへ、手に何枚かの紙とペンを持ったウソップがやってくる。
「なんか取り込み中か?」
「いや、別に。ウソップこいつに用だったか。」
「あぁ、字を教える約束をしててな、お前も一緒にどうだ?」

ウソップの誘いに、俺はそういう細かいことは得意じゃねぇからいいと、この場を後にする。
ゾロは結局何の用だったのだろうか。不思議に思いながら彼の背中を見ていると不意にこちらを振り返り、「シロ」と私を呼んだ。
「名前気に入ったか?」
予想外の質問だ。
少し眼をしばたたかせ、「すっごい気に入ったすっごい好きと」答えると。
何か満足したような顔をして行ってしまった。

それを見送っていると、ウソップが後ろからシロ始めるぞーと言う声でそちらへ向かう。
紙とペンを受け取り、二人横に並んでに床に座った。
「よし、シロこの俺様がきっちりと教えてやる!どーんと任せとけ!」
ドンと胸を叩くウソップにお願いしますと頭を下げる。
何か覚えたいものとかあるか?と聞かれたので迷わず、みんなの名前!と答えると嬉しそうに「お安い御用だ」と、私に解りやすいように、丁寧に大きくみんなの名前を紙に書いていく。そうして最後にこれがお前の名前だと紙にシロと書いてくれた。

「わたし、この名前すごく気に入ってるの。」
「そりゃよかった。皆で色々候補出し合った中から決めたんだぜ」
その時ルフィが変なものしか出さねーからサンジとナミが怒って大変だったんだぜと笑いながら教えてくれた。二人に怒られる船長が何となく頭に浮かぶ。
「これは誰が考えてくれたの?ナミちゃん?」
「いや、ナミじゃない。これは」
ゾロが考えたんだ。
「というかあいつお前っぽいて言って一つしか出さなかったんだよ。それをルフィが気に入って、皆も一番合うかもなって。満場一致で決まったんだ。」
そんなに気に入ってもらえて何よりだとウソップは親指を立てる。
自分は少し勘違いしていたみたいだった。


この後、改めてお礼に行くと「おう」とぶっきらぼうに頭を撫でられた。
この人は思っていたよりもずっと優しい人だった。