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11


湯気の包まれたお風呂場の中で泡がいくつも天井に浮かんでいき消えていく、それをあたたかな湯舟につかりながら見上げていると。扉越しから青い人、ビビの声が聞こえてくる。
「ナミさんからあなたが着られそうな服を借りてきたわ、あと髪の毛洗うの手伝うわね。」
その長さは大変でしょと腕まくりをしたビビが入ってきた。
「ナミちゃんの服は寒そうだよ。」
「大丈夫よ、長そでを借りてきたから」

*

あの後ひとしきり泣いた私に彼女たちは自分の名前と此処のことを教えてくれた。


この場所は船長の船、海賊船の中で、今はある島を目指して海を渡ってい最中らしい。
「海賊は嫌い?」そう問いかけたのはオレンジの髪をした、この船の航海士であるナミちゃん
ちゃん付けなのは、さんでもさまでも呼び捨てでもなんでも良いわよと言う彼女に何となく「ナミちゃん?」と言ってみたところ、そのまま決まってしまったからである。
「わからない、でもせんちょーもナミちゃんもビビもいい人だからここは好き」
それならよかったとナミちゃんは嬉しそうに笑う。

そうだ、あなたお名前は?―
ビビの質問にすぐに答えられなかった。
何故なら自分にはたくさん呼び名があった。大半は名前と呼べるものかはわからないけれど。
あの男は爬虫類と呼んだし、施設では、ひけんたい、サラマンドラ。オークションでは番号で。そしてじじ様たちからもらった幼名。
急に黙った私をみて船長は名前ないのか?と聞いてくる。首を横にふり、三人にたどたどしくも説明をした。そして、どれが今の自分を指すのかわからないと。
「じゃー、じーちゃんからもらった名前でいいんじゃねぇか」
「あれは、子供の頃に使うなまえだから、もうつかえない」
「お前今も子供だろ」
それは違う、あの時より自分は大きい。幼名のままだと私、大人になれないと教わった。と強く反論した。どうしようか…という雰囲気になっていると
「俺がお前に名前つけてやる!」
よし、と手を打ち船長は言う。風呂入ってる間に考えといてやるからな!といって、ほかの仲間に私が起きたことを知らせに出て行ってしまった。
その後ろ姿をみてナミちゃんは一つため息をつく。
「とりあえずお風呂行って来たら?」
名前の事は私も考えるからと、ビビを付き添いに私をお風呂場へと向かわせた。


*
「変な名前じゃないといいな。」
「大丈夫ナミさんも、一緒に考えてくれるみたいだし。きっと素敵な名前つけてくれるわよ。」
身体や髪をビビに手伝ってもらいながら、きれいに洗い風呂場を後にする。
思っていた以上に体は汚れていたらしく思いのほか時間がかかってしまった。タオルで体をふいて、ナミちゃんが貸してくれた服を着る。綿シャツとベスト。麻のズボンだった。着てみると、どちらもおおきい。袖を何回かまくりながら肘までの長さに調節する。
「すごくぶかぶかだ。」
ビビは伸びっぱなしになっていた髪をきれいに乾かし、一本のみつあみにしてくれていたが、
そうぽつりとこぼした私の言葉に、その手がふっと止まった。
「大丈夫、ご飯を食べて沢山休めば、すぐぴったりになるわ。」
それに傷もすぐに治るわから、と私を励ますように言う。もしかしたらビビは私よりも私のぼろぼろの具合にびっくりしているのかもしれない。

先ほどお風呂に入るために着ていたものを脱いだ時にビビは息をのんだ。仕方ない、すごく痩せぽっちだし、研究の痕も残ってる。あいつらに蹴られたり殴られたりもしていたから痣だらけなのだから。わぁーと鏡で体を見る私と目が合った時のビビはすごく泣きそうな顔をしていたのを思い出す。
ビビ?と声をかけるとごめんなさいと、止まっていた手を動かして、また髪の毛を編んでくれた。
ビビが悪いわけじゃないからそんな顔しないでほしいけれど、なんと言えばいいのかわからなくてそのまま編み終わるのをじっと待つしかできなかった。


最後の仕上げと先端に赤いリボンを結んでくれ。二人で外に出る。


向かったのは船の外で、そこには船長とナミちゃん、そのほかに三人の人がいるのが見える。
緑の人と長い鼻の人とあの時いなかった金色の人だ、それにカルーの姿も居た。
「あらずいぶんと小綺麗になったじゃない。」
テーブルと椅子に座り、本を読んでいたナミちゃんが私たちに気が付くと顔を上げる。
「ナミちゃん、服ありがとう」
「別に良いわよ、もう着てないやつだったから。それにしても思ったよりぶかぶかね」
一番小さいのだったんだけど、と私を上から下まで見てつぶやく。
「しばらくは我慢して頂戴、とりあえずここに座って」
ナミちゃんはもう一つの椅子に私を座らせ、船長たちを呼ぶ。

「お!戻ってきたな!とりあえず俺の仲間紹介するぞ、あっちの剣士がゾロ、長っ鼻がウソップでこの金髪がサンジ。皆良いやつだからな!」
船長はそばにやってくると、私に一人ずつ紹介していく。
ウソップはどこか興味深々の様子で挨拶をし、ゾロは軽くこちらを見ただけで近くで腰を下ろした。
サンジはにこりと笑い、目覚めにオレンジジュースをどうぞと私の前にグラスを置く。
それぞれペコリとあいさつをし、グラスに口をつける。オレンジの酸味と甘みが口に広がった。さてと、とナミちゃんが口を開く。
「いろいろ聞きたいことあるんだけど、まずは名前ね」
「竜!俺がいい名前考えたぞ!」
「俺がじゃなくて俺たちな、ルフィお前変なものしか挙げなかったじゃねーか」
ウソップの言葉を気にせずに船長はニシシと笑いながら私の撫でる。

「お前の名前は今日からシロだ!」

その名前はストンと私の中にはいって来た