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10


辺りを見ると私は、
あの帰りたいと焦がれたあの場所にいた。じじ様達がいた。
今までのことは全部嘘だったんだと皆のそばに駆け寄る。どうした怖い夢でも見たのかと私を微笑みながら迎え入れてくれる。
そうなんだよじじ様、夢を見たの、とても怖い夢。皆居なくなって独りぼっちになって閉じ込められる夢。
そう話そうとした時、周りが突如として黒い影に包まれた。景色がすべてが飲まれていく。皆も次々に影に包まれていく。助け出すために手を伸ばそうとしたが空を切る、私の体がいくつもの手に掴まれたのだ。数はどんどん増えていく身動きが取れない、目の前で彼らがどんどん消えていく。大切なものが消えていく、大事なものが、何もかも消えてしまう。
これは夢なんだ、夢だ早く覚めて、お願い、見たくない、もうあの人たちが傷つくのは見たくない。覚めて、誰か、誰か助けて。
その時、何かに大きく体をゆすられる。



眼を開けると、黒くて丸い目が私をのぞき込んでいた。
「ぎゃぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあ!」
その、あまりの近さと直前まで見ていた悪夢の余韻であらん限りの声を上げ飛び起きた。
「お、やっと起きたな竜!お前すんげーうなされてたし泣いてたから、起こしちまったほうが思ってよ。驚かせちまったな」
大丈夫か?と私の頭をポンポンと叩いた。
この人には覚えがある、あの森の中であの男に向かっていった帽子の人だ。
少し落ち着き、コクリと頷くのを見て私に話しかけた。
「お前、人の言葉話せるのか?わかるか?」
「ちょっとわかる、話すのはへた、聞くのへーき、大丈夫」
「ちょっとかー、まぁわかるんなら問題ねぇな!俺はルフィ、この船の船長だ。」
久しぶりの会話とまだ慣れていない人の言葉のせいで思うように話せずたどたどしく答える。そんな私を見てうんうんと頷きながらあまり気にした様子はなかった。
「ル?ルヒ?ルヒ―?ル、ルィ」
「ちげぇ、ルフィだ、言いにくいな船長でいいぞ」
せっかく教えてくれた名前は何度言っても私にはまだうまく言えなくて、まだ言いやすい船長と呼ばせてもらうことにした。これも正しく言えず「せんちょー」となってしまうのは仕方ないことにした。「せんちょ―、起こしてくれてありがとう」と彼に言うと「おう!」と笑ってくれた。つられて私もへへへと笑ってしまう。

すると、船長の後ろに見える扉が開き、二人の女の人が入ってくる。それぞれオレンジと青の髪の色をしていて、あの時私が炎の中から助けた人達だ。
「ちょっとルフィ、何さっきの叫び声は!あんたこの子に何かしたの。」
「うなされてたから叩き起こした。」
「けが人叩き起こしてんじゃないわよ!」
ゴチンとオレンジの人の拳が船長の頭に落ちた。ガミガミと怒られている船長とオレンジの人の光景にあっけにとられていると、横から「貴方、目が覚めたのね」と声をかけられる。そちらを見ると、もうひとりの女の人が私に水を渡してくれた。それを受け取りちびりちびりの飲み込む、久しぶりの水分が身体に行き渡るのを感じる。
「顔色も少し良くなってるしよかった。ここは安全よ、誰もあなたを傷つけたりしないから安心して」
もう大丈夫、この船の人たちは皆あなたの味方よと笑ってくれる彼女の言葉が頭に響く。
じじ様たちと離れてから誰も助けてくれなかった。売られた時も、施設でも、あの男のところでも、全員が敵ではなかったかもしれないけれど。誰一人、味方はいなかったの確かだった。
大丈夫なんだ、もう一人じゃないんだと実感できると途端に涙が溢れてくる、ぼたぼたと毛布を濡らしていく。
「なんだよ、また泣いてんのか。」
さっきまで怒られていた船長がこちらに気づくと、私の顔を両手で挟み自分のほうにぐいとも向かせ、そのまま両の親指で涙をぬぐってくれた。
「お前泣き虫だなぁー、もう敵はいねぇ!安心しろ!俺がぶっ飛ばしてやったからな!」
だから泣くな!と言ってくれたけれど眼からはまだ涙が止まらない。
拭いても拭いてもこぼれてくる。オレンジの人が私にタオルを渡してくれた。
「良いのよ無理に止めなくて、あんた泣いてる暇もなかったんでしょ、好きなだけ泣きなさい。」



いろいろ聞きたいけれどまず最初にお風呂ねと彼女は微笑む。
三人がとても優しくてまた一つ涙がこぼれた