AM.0:00 互いの昂りを布地越しに擦らせながら、夢中になってキスを交わす。 服の中に互いに手を侵入り込ませ、掌で肌膚を感じた。 関口は中禅寺の背中を撫でているうちに着々と剥かれていることに気づいていない。胸の突起を舐められて、やっと気づいたらしく慌てて中禅寺の髪を引いた。 「痛いよ」 「き、君が脱がせるからだろう!?」 「自分で脱いでくれるなら脱がせやしないさ。ほら腰上げて、全裸より恥ずかしい状態になっても構わないがね」 中禅寺の脅しが効いたか、関口は素直に腰を持ち上げた。ずる、と一気に下着を残し膝まで露にされる。 中禅寺も寝間着代わりのTシャツを脱いで、胸板を関口のそれとぴったりと重ねた。 「や、苦し…」 「これが僕の愛の重みさ」 「い、要らないっ」 中禅寺の体重でベッドに押し付けられた上半身は身動きがとれない。せめてもの反撃、と関口は自分の両脚を自由にし、太腿を中禅寺の股間に押し付けた。 「…何、やっぱり欲しいの?」 そう問いかける中禅寺の声は揶揄いの色を含んでいて、関口は違う、と言いかけてやめた。 欲しいのは事実だ。 君のぜんぶが、欲しいよ。と関口は囁いてみる。 中禅寺がニヤリと口の端を歪めて、関口の吐息を奪った。 優しく、けれど横暴に、身体を開き中禅寺が侵入する。 「きつ、もっと、力抜け…」 中禅寺の要求に応えようと関口は息を吐く。胎内に押し込まれる質量に身体は敏感に反応して、意識の外で脚を中禅寺の腰に絡ませていた。 それがまるで強請っているようだ、と中禅寺が笑う。 「ねだって、なんか…ア、そこ」 「ここ?」 「ん、イ、」 イ、なんだ。 うっかり突っ込みたくなったが、イイ、でもイキそう、でも大差は無い。実際、中禅寺は関口に突っ込んでいるのだし。 「ちゅ、ぜんじ、」 なあに、と腰を揺らしながら問い返す。ぐちゅりと音が響く。 だから僕はこわいよと、喘ぎ喘ぎに関口は呟いた。 「き、君に選ばれる自信など、無いのだ」 「だからセックスしてるって、そう言いたいのかい?」 今それを言うなんて卑怯だ、と中禅寺は糾弾染みた言葉を口移しにする。異論を喚く声を無視して頸筋に爪を立てれば、上がるのは嬌声に似た悲鳴。 その中に悦楽を見出す、中禅寺の歪みが発露する。 「やめっ、ちゅうぜっ」 「あげるから、逃げないで。怯えないで。心も身体も欲望も。全部君に、あげるから」 泣かないで。 囁いたのは何方だったか。 関口が腕を中禅寺の背に回す。汗で湿った肌膚が触れ合う。 吐息まで貪るように、深く口接け、強く抱き合って。 僕たちは本当に、愛情表現が下手くそだ、と互いに笑い合った。 独占しなければ信じられないなんて。 自己犠牲でしか伝えられないなんて。 ああ、愛情のなんと不恰好なことか! 「ねぇ関口君、変わらなくてもいい。変わったっていいんだ。君が君であることが、なにより大事なんだから」 「え?」 「いつも言ってるだろう?誰よりも『君』を、愛してるって」 うんと頷くと、関口は腕を背から頸にスライドさせて、中禅寺を引き寄せた。 鼻をぐずぐずいわせながら、全身で愛を。 『僕のすべてが、君のものだよ』 それでもまだこわがって、言えやしないのだけれど。 優しい夜が更けてゆく。 Fin. H23.10.31. [*prev] [next#] |