act.06 オツキミリサイタル | ナノ

act.06



目が覚めるとベンチで転寝をしてしまっていた。しかも予想以上に空は暗いときた。

「あちゃー」

でもそのおかげかもうステージは始まっていた。
モモちゃんの声が聞こえる。つまり、助けを求めている。

「仲間の声には、全力で答えなきゃだよね」

走り出せば身体は、今までよりもずっとずっと軽く感じた。




走る間に頭を整理する。

蛇、ソラとは多分もう会う事はない。何やら能力が使われている感じがするけどそれは消す、というよりもまるで整理しているような感じだ。
このままいくと恐らく私はもうこの力を使えなくなる気がする。きっとソラが元の場所、とやらに持っていくのだろう。

普通は蛇が抜かれれば死んでしまうがそこも大丈夫だと思う。そんな気がする。
だってソラは、優しいから。

ふふ、と笑いながら、でも足は止めない。
応援ソングってすごい。気持ちが前向きになる。今回の事が終わったらサインもらわないと。とくだらないことも考えているあたり、かなり精神的に安定したような気がする。いや、もともと本来の私はあまり深く考えない性格だったように思う。
蛇が住んでいた事が私の性格にも大なり小なり影響していたのかもしれない。

もう一度、今度はこの後について真面目に思考を巡らせる。
はっきり言ってあまり覚えていないのが現状だ。
だからとりあえずみんなと合流すればいい。あと、マリーを守る。マリーがこちらのカギになる事だけは確かだからだ。

流石に体力が厳しくなってきたところで踏ん張る。

「受験生の体力の無さ、なめんなよぉ!」







しばらく走ると目に入った、黒いのと緑色の奴らの間に入る。

「やっほ」
「おや、セイハさんも来たっすか?」
「そりゃね」
「なんか顔色、良くなったね」

カノの言葉にきょとんとするが、原因は思い当たった。

「やっとなじんだからね!さ、走るよ!若いの二人!!」
「って、セイハちゃんだって一つしか違わないじゃん!」

少し戯れながら、でも足は止めずに走り続ける。

「あ、ふたりとも、テロの時はありがとうね。助けてくれて」
「あ、いや結果的に怪我させちゃったスから…」

しょぼくれた犬のような姿に思わずキュン、としながら改めてお礼を言う。

「んーん、二人が手伝ってくれたからあれで済んだのよ。私も、シンタローも。だから、ありがとう。この後も頼りにしてるよ」

また少し走れば研究所のような迷路のような施設の中で学生服の少女が目に入った。私とカノがその子を挟むようにして4人で通路に横並びになる。

「っちょっと、場所分かって走ってるの?」

カノの声にエネ、貴音は笑みを浮かべながら呆れたような声を出す。

「なぁんだ、結局来たじゃん」
「何だかんだ、みんな一緒になっちゃうすね」
「仕方ないんじゃない?そういう運命なんだよ」

声の方角に向かってコンクリートを蹴る。

「セイハちゃんは傷は大丈夫なの?」
「あ、そういえば忘れてました」

貴音の質問にハッとなる。

「だ、大丈夫なんすか!それ!?」
「痛くないってことは大丈夫じゃないかな?」

実際目覚めてからも痛みはなかったのだ。シンタローよりもひどかったと聞いているが…。
そこまで考えてからふ、と思い浮かぶ存在がいた。

「ほんと、優しい人」

ぽつりと呟くとセトが心配そうにこちらを見た。

「本当に、大丈夫だよ。さ、早くいこ!」

私の蛇はいったいどこまで優しいんだろうか。




しばらくすれば今度は白い二人組が見えた。目的地にたどり着いたようだ。

「いたぁ、こっちこっちー」
「わぁかってるって…何でそんなに元気なの?」

肩で息をするカノに対し、まだピンピンしている貴音。

「カノ、運動不足なんじゃない?」

若いのにもったいないと思い、つい口を挟んでしまうと、微妙にショックを受けたらしく走ろ…と横で呟いていた。

「お、キド達も一緒すね」
「お前ら…」

呆れたようなキドの声に思わずクスリと笑ってしまった。
そして戸惑ったような声を上げるヒビヤにモモは明るい声で告げる。

「ようこそ!メカクシ団へ!!」

さあ、反撃と行こうか。




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