act.04 忘却メモリーズV | ナノ

act.04


「ナンバー…あい?」

きょとんとした表情に苦笑を浮かべる。やっぱりそんな反応になるよね。

「私、小学校の頃友達のいないぼっちでね。そんな時に声をかけてくれたのがアヤノだった」

そう言いながらスマホに残っている写真を見せる。高校時代、二人で遊びに行ったときの写真だ。

「姉さん…」
「今の今まで秘密にしていたのは私がそう頼んだから。そして、アヤノからはあの日、君たちを助けるように言われた。そして運よく会えたから正体を現したって感じ。まあ、改めてよろしく」

戸惑う彼らに笑って今すぐ納得する必要はないと告げる。
そして今度はエネが自分の過去を語りだした。自分がもとは人であり、アヤノやシンタローの先輩だったことを。
ちなみに私はシンタローたちとは違う高校に通ったためエネ…基い、榎本貴音とは面識がなかったのだ。

「えー、なんか難しい話…」

マリーの困ったような声にエネも困ったような声を出す。

『いや―それにしても、まさかアヤノちゃんが初代団長さんだったとは…。世界は狭いですねぇ。…て、どうしたんですか皆さん?』
「ど、どう言う事?お、お兄ちゃんの先輩さんだったの!?なのにご主人ってどういう事!?」

あの賭けの話を知らなければそういう反応になるよね。と、原作を知っているがゆえに遠い目をしているとモモちゃんのあまりの迫り方に慄いたエネが変なポーズをとっているのが見えた。

『う、おお…ぐいぐい来ますね。んー、まあご主人と呼ぶのは半分以上嫌がらせです。変な約束しちゃったってのもあるんですけど』
「へ、変な約束?」
『い、いやいや、正体ばれるのもあれだったんで試しにご主人、って呼んだら予想以上に良い反応だったってだけですよ。そのまま呼び続けてたらなんか癖になっちゃて。…あ、でもご主人には内緒にしといてくださいね。バレると色々とめんどくさそうですし』

この中では常識人枠に入るキドには理解するのに時間が掛かったようだが、文化祭の時の話でお互いに認識のすり合わせが出来たらしい。

…実は私もあの時文化祭に行く予定だったのに風邪でダウンしたんだよね…。
頭の中で蛇がどんまい、っと言っているが無視だ。軽くイラっとした。

その後、キドやカノがアヤノの義姉弟であることにエネが驚き、モモはモモでエネの立場に混乱しているという中々カオスな光景が広がった。

するとエネの声色が変わり、空気が重くなる。アヤノの過去、エネの体、重い過去を持つ人間がここには多い。

その空気を払拭するようにカノが声を上げた。

「いやいやいやー、でもほんっと偶然ってすごいねー。エネちゃんとまたこうやって出会えてこの団の一員になったのも、セイハちゃんがテロに巻き込まれながらも僕らと出会えたのも、もしかして、運命なのかも…」
『え、いきなりきもいですよ、どうしたんですか』
「さすがに今のは…うん」
エネの感情の乗らない声に私も乗せられ目をそらす。更にキドとマリーが追い打ちをかけた。

「いや、まだなんも言ってないじゃん!!」

思わずみんなで笑うが落ち着いたところでカノがまた口を開いた。
エネが倒れた後にその電子体になったことが自分たちにも心当たりがある出来事であるという事を語る。

「え、それってどういう…?」

エネが聞こうとしたタイミングでセトから着信が入った。内容はシンタローの友人が事故に巻き込まれたという事。ちなみ皆の反応はシンタローに友人がいることに対する驚きと人間関係を心配するものだった。私も彼の人間関係に関しては不安になることが多々あるので仕方のないことかと思われます。

かなり取り乱しているらしいシンタローのもとに皆でいく事にし、カノは片づけをしてから合流する事になった。そしてキド達の後を付いて行こうとしたとき、私の視界は黒く染まった。









軽くエネちゃんをいじめた後、ずっと気になっていたもう一つの気配に声をかける。

「…あの日、君は知っていたの?」
「…ああ」

そう言いながら墓標の影から出てきたのはNO.iだと名乗った間宮セイハ。

「知っていたのに…?」
「それがあの子の望みだった。そして私はあの子の選択にかけた」

かっ、と身体が熱くなる。知っていて、こいつは止めなかったのか!!

「ああ、セイハは責めないでやってくれ。止めなかったのは私の独断だ。宿主はぎりぎりまであがこうとしていたよ」

おかしな言葉に首を傾け、その目を見て気付く。

「赤…?」

僕たちが力を使う時の特徴である赤い目。そうか、姉さんが団員にしたという事は同じ力があってもおかしくはない。

「それで、じゃあ君は誰なんだい?」
「私は、そうだな、目を瞑る蛇、とでも言おうか。相手の目を見れば記憶を見てしまい、目を瞑れば忘れさせてしまう。私はその力を使って、宿主から私がアヤノを助けなかった記憶を消した」
「ほんっと、この力はとことん僕たちの人生を邪魔するね!!化け物と罵られ、爪弾きにされる、しまいには大切な人を助ける事すら邪魔される!何なんだよ!!」

目を細めるその姿は穏やかそうなセイハちゃんの見た目なのに鋭い刃物のような印象を受ける。嫌な汗が流れた。

「まあ、わからなくもないよ。第三者に自分の選択を捻じ曲げられることの腹立だしさといったらないからな」

自嘲するような笑み。本当に訳が分からない。

「…それで、なんのためにここに残ったんだい?」
「意味はないさ。ついでに言うとここでの会話は宿主も分かっていないから、そこんとこよろしく」
「え」
「そろそろ時間切れなもんでな。さて、それじゃあ、さようなら。欺く蛇」

身体にのしかかっていた緊張感が霧散すると同時にセイハちゃんの一度閉じられた瞼が開いた。






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