真5日目 天 | ナノ

真5日目 天


「久しぶりに任務かー」
「あんまり無茶すんなよー」

珍しく大澤から心配の声を聞いたんですが…。
明日槍でも降るかなぁ。

「って…」

凄まじい音がしたので上を見ると、光の弾が降ってきた。

「…弾が降ってきたね。しかも痛いやつ」

全員直ぐに回避して、神機を構えた。

「リオウ、サポートよろしく」
「はいよ!」






いつも通りのフォーメーションで攻撃を行い、繰り返していればへばるゼウス。
そこで集中砲火を食らわせる。

「もう少しだよ!」

リオウの声に神機を握り直し、間合いを詰めようとした時だった。

“あれ、美味しそうねぇ”

「っ!?」

頭に直接響くような声に思わず頭を抑えた。

「蒼禅!」

大澤の声に慌ててゼウスと距離を取る。

「ぼさっとすんな!」
「わりぃ…」

流石に今のは自分のミスだと思い素直に謝り、構え直す。

「早く終わらせよう」

ライムの声に全員頷いた。







ゼウスが霧散したのを見送って、帰ろうと動き出す。すると

「あ、そういえばソラ」

ライムに話しかけられたので振り返る。

「なんぞ?」
「アリスって誰?」





思わず思考が停止する。
なんでライムがその名を知っている?
だって、あいつは…あいつのことは…オレしか知らない筈なのに。

「あ、言いたくないならいいからね!」
「その前に、何でライムがその名を知ってんだ?」

雰囲気が殺気立ってしまっているのは分かるがこればかりは許して欲しい。

「やっ、こ…この前ソラが丸一日寝込んだ日に寝言で言ってただけだよ?」

張り詰めていた緊張の糸を解いた。

「悪い。過剰反応し過ぎた。…アリスのことは後で全員の前で話すよ」
「う、うん」






「それじゃぁ話そうか」

体育館に戻り全員の準備が整ったところで口を開いた。

「これはこの前話した話の更に詳しい話だ。少しでも体調が悪くなったら聞かなくていい。」

全員頷いたのを見て話し出す。






今…というか今回のが始まった日から2年前の話だ。

オレが2年前の夏休み行方不明になったのは覚えているか?

あの時もこれ、GAMEに参加させられた。

その時のオレは2位。1位が親友の紫道 亜梨子(シドウ アリス)だったんだ。

これをGAMEと呼んでいたのもアリスだ。

まぁ、あの時のオレは今のリオウと同じポジションだったからな。最後の時の記憶しかないんだが…。

任務内容はアラガミが違うだけでほとんど変わらなかった。

毎日少しずつ仲間は死んでって、生き残った奴らの表情は暗くなっていったけど、
あいつは、アリスだけは常に笑っていたんだ。

あの笑顔にはいつも助けられたよ。

そして最終日、あいつがアラガミ化して、一人生き残ったオレに襲いかかってきた。

まぁ、その時左腕一本持ってかれたんだが何とか倒したよ。

怖いこと言うな?事実だよ。
でも向こうの世界には影響無かったらしくてな、現に今左腕あるだろ。

それから、まぁ無事に帰ったんだが、アリスの事を覚えてる奴は誰もいないし、
参加者は誰もGAMEの事覚えてないしで、はっきり言って絶望したよ。

しかもあいつが消えた理由はオレが殺したからだろうしな。

つまりオレがこのデスゲームの主催者に人殺しって言われたのはこれが原因。

実際本当に存在自体を消しちまったからな…。人殺しなんてレベルじゃねぇだろ。











「これがオレとアリスの関係。被害者と加害者だ」
「でも、ソラ」

リオウの声を遮って続ける。

「だからこそ、オレは生きなきゃなんねぇんだ。あいつのことを覚えていられる、唯一の人間として」
「ソラ…」
「それに、あいつがそう簡単に死んだとは思わねぇしな。きっとどっかで生きてんだろ」

少しの沈黙のあと、アビが口を開いた。

「なら、僕らも手伝わなあかんな」
「だね」
「お前ら…」

皆が口々に協力を示す言葉を告げる様に思わず、鼻がツーンとしだした。

「ん?そーちゃん涙目?」
「マジ?」
「泣かねーよ。………まぁ、あんがと」
「おぉ、蒼禅がデレた」
「黙れ、チャラ澤」
「今更そのネタ持ってくる!?」

賑やかになる体育館に胸が締め付けられる。

なぁアリス。オレはこのGAMEが大嫌いだったけど、この光景だけは、幸せだと思うんだ。



もう少し、あと少しで終わる。終わらせてみせるよ。









だから、もう少しだけ待ってて。








何があってもこいつらだけは…守ってみせるから。


ー残り 2日ー




prev/next

[ back to contents ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -