今日の任務はディアウス・ピターとプリティヴィ・マターの討伐。ライム、アヤ、ユイカ、川崎の4人が向かった。
私とソラは2人、無言で同じ空間にいる。
昨日、最後にアビに言われた言葉が頭の中をぐるぐるしていてどうも周りに気を配ることができない。
「……リオウ」
急な呼びかけに体を跳ねさせながらも、恐る恐るソラの方に顔を向けた。
そして、私の目に映ったソラに表情はなかった。まるで抜け落ちてしまったかのようだ。
「ソラ……?」
「泣きたいなら泣け。今ここにいるのはオレとお前だけだ。」
その言葉に視界がにじみ、足を抱え込んで顔を膝に押し付けながら声を殺して泣いた。
つい数日前まで一緒に馬鹿しながら笑いあった仲間がいない。親友だと思っていたソラは、きっと重要な何かを隠している。
色々なことが混ざり合ったせいで頭の中も心の中もぐちゃぐちゃだ。
背中をさすってくれる体温に落ち着くと同時に更に涙腺が緩んでしまった。
「お前は泣いていい。泣く権利がある。」
そう言っていたソラの言葉は私の耳には入らなかった。
ある程度落ち着いたところで顔を上げ、ソラに向き直った。
「ソラ」
「何だ?」
うじうじしていても仕方がない。
そう思って私は気になっていたことをソラにぶつけてみた。
「ソラは何を隠しているの?」
そう聞いた瞬間珍しくソラは動揺を見せた。演技ではない純粋な素のソラの表情を。
ただ動揺を見せた理由がわからなかった。アビが聞いた時はこんな表情見せなかったから。
じっと見つめているとソラは立ち上がって冷蔵庫に向かった。
そして冷凍庫から保冷剤を取り出し投げて寄越してきた。
「目、冷やしとけ。腫れるぞ」
「ソラ!!」
誤魔化そうとするソラについ声を荒げると
「……賭けを、しようか」
至って落ち着いた声で突拍子もないことを言い出したソラに、つい唖然としてしまう。
「何……言って…」
「リオウがもし、このくだらないゲームに最後まで生き残ることができたら……オレが知っていることを教えてやる。どうだ?」
「終わってからじゃ…意味ないじゃん……」
「終わりなんて、ないよ」
「え?」
ソラの意味深な言葉の意味を聞こうとした時、体育館の扉が開いた。
「…うそ……」
そこにいたのは、ライムと川崎だけ。ユイカとアヤの姿は無かった。
つまりそういうことだ。
「ごめん……ごめん…」
「っくそ」
謝り続けるライムと悪態をつきながら壁を叩く川崎。
残り2日を残して4人まで減ったメンバー。
ここまで来てしまったというのに口を開こうとはしないソラ。
「賭けについて、2人には言うなよ」
最後こっそり耳打ちされた言葉。
この時、私は自分が出口のない迷路にいることに気付くことができなかった。
ー残り 4人ー
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