「なあ、蒼禅」
皆の気持ちが落ち着いた翌日、突然アビがソラに声をかけた。
視線が一斉に2人に集まる。
「あんた今回の件知っとるんとちゃうか?」
「………」
否定せず、無言でいるソラの意図が読めず動揺した。
「…まず任務中のまるで知っているかのような回避行動に指示。あとつい最近僕らと同じタイミングで始めたようには見えない冷静さ。そして、慣れすぎた戦闘。僕は違和感感じてしまったけどな」
アビの言葉は確かに的を射ていて実際に自分も感じていたことだった。
恐らくみんなも同じことを考えているのではないだろうか。
「最後に、あんた一度も泣いてないやろ。ついでに笑ってもいない」
空気が揺れた。
「……えー」
ものすごく気まずそうな声を発したのはソラだった。
「サーセン。悪ふざけが過ぎました」
「……は?」
間の抜けた声が体育館に響いた。
当の本人は頬を掻いている。
「いや、つい調子乗って聞き流しちゃったけど、この件にオレは関わってはいません」
「え…えぇ!?」
「あんだけもったいぶっといて!?」
「紛らわしい事すんなし!」
確かに私たちは混乱させられたが、その分、少し落ち着いたらしく、皆の顔が少し明るくなった。
ある意味では良かったのかもしれない。
それでもアビは気になることがあったようで再び口を開こうとしていた。だが
「任務だよ」
アヤの声に全員がスクリーンに顔を向ける。
『シユウ2体を討伐せよ。出撃者は薄紅、立花、安孫、浦部』
私達が出撃するときに誰かが私達のうちの誰かに対し何か声を掛けたようだったがそれを確認することはできなかった。
・・*・・*・・*・・
「っつ……」
むせ返るような血のにおい。血だまりの中心で横たわっているアビに駆け寄る。他の皆はまだ戦闘中だ。残り一体になったとは言っても強いために苦戦している。
「うす……べ、に…」
「アビっ」
「やっぱり…蒼、禅の、こと…気にしとけ…。あいつは、なにか…しって…る」
それだけ言い残してアビの身体から力が抜けて一瞬重くなり、すぐに光となって消えた。
なら……知ってるならなんで何も教えてくれないの?ソラ…。
私達友達じゃないの?
きりのない問いを繰り返し戻ってきた体育館。減り続ける仲間。
ついに私は、膝をついて嗚咽を漏らした。
―残り 6人―
prev/next