1人ずつ欠けていく仲間に気持ちがついて行かない者が大半の3日目。
『ヴァジュラ1体を討伐せよ。出撃者は蒼禅、山吹、安孫、大澤』
「ヴァジュラ……か」
「全員準備できたか?」
アビの言葉に3人とも頷き、外へ出た。
4人それぞれ違うルートで討伐対象に近づいていく。
「先手必勝!」
そう言って大澤がヴァジュラとの間合いを一気に詰め、一太刀浴びせた。
「まったく…早死にするぞ」
「いやいや俺だかんね。そうそう死にはしないよ」
「それ死亡フラグ」
「無駄口叩いとらんで集中せい」
ソラの嫌味に対しチャラチャラとした返答をする大澤。さらにそれに対しツッコミをいれた私。そして最終的にアビに注意されたの図。
何だこのゆるゆる感、と思ったのは私だけではないと願いたい。
ということで皆さん初めまして。山吹ライムです。
いやぁ、でも本当にソラさんの戦い方は惚れ惚れするねぇ。無駄のない動きに、的確に敵の急所に当てに行く正確性。
絶対に実践慣れしてるでしょ。
「ライムもう少し下がれ」
「はーい」
注意されちった。まあそれでも攻撃の手は緩めませんがな。
「大澤、装甲」
「はいよ」
無表情でしかも冷静に落ち着いた声で指示をするソラに少し寒気がした。
そして気を緩めてしまった大澤が電磁波を浴びてマヒ状態になって、追い打ちをかけるようにひっかき攻撃を浴びてしまった。
「アビ、リンクエイド!ライムはそのままオレを援護しろ!」
「了解!!」
・・*・・*・・*・・
リンクエイドをするために大澤のそばに行き、しゃがんだ。
その時、まるで知っているかのように山吹に指示を飛ばす蒼禅の声が聞こえた。
(まさか……知っているのか?)
今日の任務、振り返ってみればほとんどの攻撃を蒼禅は防ぐなり、避けるなりしていた。そして、僕らにも同じように回避の指示を出していた。
(なら何故大澤は倒れた?)
一度溢れた不審感は留まることを知らない。
(あいつはこれが始まってからまるで筋書きをたどるように行動してはいなかったか?)
そうなると……。
「アビ!!」
大澤の声に現実に引き戻された。
そうだ。ここは戦場。ここであいつを疑ってしまったら生きて帰ることは難しくなる。
「加勢するで!」
他の奴らに回復弾を撃ってから、再び攻撃に加わった。
・・*・・*・・*・・
アビと大澤が帰ってきたがこちらが不利な状況は変わらないだろう。
ライムと大澤がリンクエイド使用済みなのだ。
しかもヴァジュラはバテにくいため、集中的に叩くということは難しい。
作戦を立てながら戦っていたため気持ちが分散していた。
「ひゃっ」
バランスを崩してライムが尻餅をついた。
その前にはヴァジュラ。
オレじゃ間に合わない。ここで死なせるわけにはいかないのに。
すると突然ライムとヴァジュラの間に黒い影が入り、ヴァジュラの攻撃を受けていた。
「なっ……」
「お…おさ…わ?」
ライムに倒れこむ大澤の身体。
「あ……れ?嫌がん、ないん…だ、な」
「馬鹿馬鹿馬鹿!!何庇ってんの!この馬鹿澤!!」
泣きながら大澤を罵るライムの声を聞きながら、ヴァジュラに斬りこんで、2人と距離を離す。アビの瞳にもうっすらと涙が浮かんでいた。
巨体が倒れた頃には大澤の姿はなく、ライムの嗚咽が響いていた。
―残り 7人―
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