1人欠けた1日目が終わり、再び今日の任務が下された。
『グボロ・グボロ2体を討伐せよ。出撃者は薄紅、川崎、浦部、鮫宮』
(私の番来ちゃったじゃん…)
そう思いながら周りを見渡すと、ソラが神妙な顔付きでトモと話していた。
トモは笑って流しているけど…。何やあれ。
「皆―!行こう!」
ユイカが空元気を出しているのはよくわかる。しかし誰もそのことについては触れなかった。
だって皆わかっているから。
こんな沈んだ空気のまま出撃となった。
・・*・・*・・*・・
「私とトモ、リオウと川崎のグループで索敵。見つけ次第交戦。危険だと思ったらすぐに逃げる。いいね?」
今回の司令塔であるユイカの言葉に皆頷いた。
それぞれ分かれて索敵を開始するとすぐに対象を見つけることができた。
「援護します」
「ん」
相変わらず口数の少ない川崎だが、もともと戦闘に向いていたらしく適確にダメージを与えていく。
川崎が引いた瞬間に私も打ち込み、お魚さんがバテた。
あれ、意外といい連携?
・・*・・*・・*・・
「ねぇねぇ、トモー」
「んー?」
警戒は怠らないながらも少しゆるい感じで会話を続ける2人。
「さっきソーちゃんと何話してたのさ」
「ああ、上を気にしとけってさ」
「上?」
何でかこれが始まってからそーちゃんの様子がおかしい気がする。だが、そのことについて考えるのは後でもいいだろう。
何かの雄叫びがそう遠くないところで聞こえる。討伐対象だろう。
「いくよ、トモ!」
「OK!」
二人そろって一気に駆けだした。
・・*・・*・・*・・
「よし」
崩れ落ちた巨体。土埃が舞い、こと切れているのを確認して川崎とアイコンタクトをとる。
さっさとユイカ達に合流しなければならない。
そう思い走り出そうとするとユイカ達がいると思われる場所から爆発音が聞こえた。
「急ごう!」
「あぁ」
あぁ……。何でもっと気にしなかったんだろう。
これは回避できた未来じゃないの?
もっとそーちゃんの言葉の意味を考えれば今が変わったんじゃないの?
目の前に広がる血だまりと、つい先ほどまで笑っていた少女の亡骸を呆然と見つめることしかできない。
死の足音が近づいてきていることに対しても恐怖はなかった。否、恐怖を感じられる精神力すらなかった。
「ユイカ!」
リオウの声に一気に現実に引き戻された。
何を考えている。ここで死んだらトモの死が無駄になる!
「ごめん、リオウ。援護お願い」
「もちろん。………トモの、仇討だよ」
静かに呟かれた言葉には怒りと、悲しみが潜んでいた。
開かれた扉の先に立っていたのは3人。
「……おかえり」
そう声をかけるとユイちゃんが崩れ落ちた。慌ててリオウとライムが慰めている。
「もう……いやだ……」
ユイちゃんからこぼれた言葉と嗚咽はただ体育館に響いていた。
―残り8人―
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