1日目 | ナノ

1日目 響


昨日は体育館の地下に出来ていた謎の訓練場で神機での戦い方をマスターして終わった。

そして、翌日。
朝食をとって、片付けが終わるとスクリーンに『本日の任務』と映される。

『コンゴウ1体を討伐せよ。出撃者は、蒼禅、立花、大澤、山城』

「げっ」
「大澤、露骨に嫌そうな顔すんなや」
「今日が命日かー」
「おい!」

アヤと大澤は大丈夫だろう。軽口たたけてるし。ただ心配はもう1人だった。

「大丈夫か?マナ」
「う、うん」
「緊張で動けなくなったら終わりだ。昨日みたいにやれば平気だって」

そう言ってオレより少し高い位置にある頭をわしゃわしゃ撫で回す。

(慰めんの苦手なんだよなぁ、今だに)

あ、自己紹介が遅くなりました。ソラです。
一応主人公です。リオウさんに負け気味です。よろしk

「誰に向かって言ってるの?そーちゃん。きもいよ?」
「うはっ鮫宮さん。その笑顔で吐く毒じゃない」
「本当に面倒な奴だなぁ」
「大澤は死ねばいいんじゃないかな?」(イケボ)

ここでイケボにする意味がわからないっつった奴、大丈夫だ。オレもわからない。

「俺の扱い酷い!」
「ソラさんのイケボ頂きましたー」
「っておい、アヤ、それは誰得だ。」

あまりの締まりの悪さにとうとうリオウさんが口を開いた。

「あんたら……真面目にしぃや?」
「「「すいませんしたー!」」」

オレと大澤、アヤの3人で同時に土下座。なんてシュールな光景。

「ということで気を取り直して、少し良いか?」

急に雰囲気を変えたので皆黙ってオレのほうに視線を寄越した。

「ま、ぶっちゃけそんな重く捉えなくていいからな。ただオレ達の約束事みたいなのがあってもいいかなぁと思ってさ。
つってもゲームの受売りなんだが、

死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。
運が良ければ不意をついてぶっ殺せ」

「に…逃げも隠れも出来なかったら?」
「そりゃ決まってんだろ。

生きることを諦めるな。」

皆が纏う雰囲気が変わった。丁度準備も整ったようだ。

「行ってきます」

オレ達がそう言うと誰からともなく呟かれた。

「行ってらっしゃい」



・・*・・*・・*・・



神機を出して出撃ポイントへと向かうと確かに目標がいた。

「オレとアヤで前方、大澤は後ろから回り込め。マナはその時に応じてやってくれていい。ヤバイと思ったらすぐに回復。リンクエイドは一回だけだからな」

全員頷いたのを確認して飛び出す。

「はあああああああっ!!」

走るスピードはそのままで、勢いを殺さないように神機を振り、斬りつけた。

『グウォォォォッ』

大きな悲鳴が上がる。血飛沫が上がり血をもろに被ってしまった。実に不快である。

「豪快だね…。そーちゃん…」
「だね…」

アヤとマナが2人で話しているのを余所に大澤も突っ込んで行った。






結合崩壊させる事は出来たのだが、まだ倒れる気配は無い。
しかもマナと大澤は既にリンクエイド使用済みときた。

「アヤ!たたみ掛けるぞ!」
「了解!」

この時もう少し周りに気を配れていたら、なんて今更考えても遅いわけだが、そう思わずにはいられなかった。

爆発音の後、少し遅れて流れてきた新しい鉄の匂い。

「っ…イヤァァァァアァァアッ!!」

アヤの悲鳴が響く中、周りを見渡すとザイゴートが3体浮いていた。もう一度視線を落とせば、マナを抱えて泣きじゃくるアヤの姿。マナの瞳には光は無く、オレが彼女の死を確認した直後、光となって消えた。

「っ…大澤、キツイだろうけど、アヤを守りながらコンゴウの攻撃防いどいてくれ」

そう指示を出して、オレはザイゴートを先に殲滅するため、地を蹴った。

1分とかからずに倒し終え、大澤の援護に戻るも、アヤは放心状態のまま、動かない。流石にそう何人も初日で死なせるわけにはいかない。

そう思いすぐに決断を下した。

「っ大澤、アヤを連れて体育館に戻れ」
「何っ…言ってんだ!」
「足手まといなんだよ」

大澤も馬鹿では無いため、オレが隙を作った瞬間にアヤを抱えて走り出した。
彼達が行ったのを確認し呟く。

「ただで済むと思うなよ、化物ども」





勢い良く開いた扉に皆の視線が集まり、大澤とアヤが倒れこんで来た。

「大丈夫か?」

アビとユイカが駆け寄るも呼吸の落ち着かない大澤は話せないし、アヤの瞳は虚ろで心ここに在らず、といった雰囲気だった。

「げほっごほっ…」
「何があったん?」
「山城が死んだ。立花が使い物にならなくなってしまったから蒼禅に帰れと…」
「ってことは…」
「ソラ…」

全員の顔が不安の色に染まる。

マナを失った事も勿論だが、ここで1番知識のあるソラを失えば私達の生存が絶望的になることは目に見えていた。
しかもルール上、出撃者に選ばれたもの以外が戦場に出ることは許されず、出撃者も帰る事は可能だが、もう一度戦場に戻ることは禁止とされている。
一つでもルールを破ったり、任務に失敗すれば、ここら一帯でウロウロしているアラガミ達が一斉に体育館に乗り込んでくるのだ。

つまり、戦場に残されたソラを信じて待つしかない。





大澤達が帰ってきて、数分後。
扉が静かに開いた。
アラガミならソラの死、そして任務失敗ということで私達も危険になる。
速まる鼓動の中、見えたのは

「っソラ!」

思わず抱きついた。

「のわっ。おいコラ、リオウ!血ぃ付くから抱きつくな」
「いやだっ」

声の震えを止めることができず、泣いている事がバレバレだ。それに動揺したソラが動きを止めた。

「………………ごめん」

ソラはまるで自分への戒めのようにその後ひたすらごめんと繰り返していた。








ー残り 9人ー
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