ぼくらが巡る季節

ひな祭り

「よし、コレで出来上がり!」
 そう言ってワカちゃんの上から下まで眺めると満足そうな笑顔を浮かべる。まさか、ワカちゃんが着物の着付けができないだなんて思っても見なかった。
「女の子の日なんだから着飾るべきだよね!」
 そう言って半ば無理やり着物を着せたことについては後悔も反省もするつもりはない。だって、お雛様はワカちゃんがやるべきだと思うんだよね。
「お雛様は飾るものであって、自分がなるものじゃない気がするけど」
 そうはいいつつ、この衣装を気に入っている様子。現代じゃあここまで盛大なものを着る人なんてそうそういないからね。
「てか、一人ってわけじゃないんでしょ?」
「おっ、鋭いね」
「お雛様ぼっちとか、ナニソレ悲惨すぎるから」
 普通に男衆が居ないことからも予想できるけど。と、付け足してきたけどどっちかというと先に言ったほうが本音だよね。
「ユキー、出来た?」
 隣の部屋で着替えているであろうユキに声をかける。
「出来てるよー、ユキってば和装似合うんだねー」
「なんでお前が返事してんだよ。てか俺一応、正月とか和装してただろうが」
 そうだっけ、ととぼけたような声がはっきりと届く。なぜかって、彼らがこの部屋に入ってきたから何だけど。
「わあワカバ、すっごく可愛いー」
「背が高いのもあって、ちゃんとして見える」
 ユキってば、その言い方は無いと思うよ。ほらワカちゃん拗ねちゃった。
「馬子にも衣装って言葉の通りだよ」
「ワカちゃんのための衣装なんだから、もっと笑ってよ」
 写真取るんだし、といった途端二人の顔色が変わった。あれ、言ってなかったっけ?
「アラシお前そういう事は先に言うべきだろ」
「あんたねえ」
 なんだかんだ言いつつ、ため息はついても写真を否定しない辺り二人は優しい。
 きちんとタイマー仕掛けて、笑ってなんて言って見守ろうとして、写真に引きずり込まれる。もちろん、あーちゃん―アカネも巻き添えに決まってる。
 みんなで笑って写った写真は少し乱れた格好になっていたけど、それでも素敵な思い出だよね。

21014/3/3


みんなで記念写真。


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