大好きになるまで(第五人格/ロビーとハスター)
2020/03/06 00:56

※捏造しかない協力狩りの話。
※作者は雰囲気で第五の話を書いています。
※ツイッターに投げたものを手直ししました。


 今はいつもと違って、ぼくともうひとりのハンターと一緒にサバイバーの相手をすることができる時間なんだって。そんなの楽ちんすぎないかなあ、と思っていたけど、サバイバーも8人になっているらしい。ついでにマップもあの薄暗い海の近い村か、壊れてぼろぼろな機械やテントばかりの遊園地だけ。いつもと違うっていうのはサバイバーのみんなも同じだって、お姉さんたちが話しているのをこっそり聞いた。どんなふうになるのかな? 楽しみだなあ、とちょっとだけ浮かれた気分で狩りが始まるまでの椅子で足をぷらぷら遊ばせていた。
 サバイバーの人たちが向こうの長い長いテーブルについてわいわいやっている。目を隠してふわふわの鳥を連れている人。帽子から伸びた短いベールを顔にかけている人。色々だ。ふふふ、楽しみ。きっとたくさんの人たちを追いかけて、ぼくを怖がらせてやるんだ。大きな斧を引き摺ってやってくるぼくを見てみんな逃げ回るんだ。楽しみだ!
 そして、ぼくのとなりに座る人がやってきた。ぼくとおんなじ、黄色のフードがついた服。すっぽりかぶった顔からは、暗いなかから赤くてぎょろぎょろした目がたくさんこっちを見ている。足はきゅうばんのないタコみたいなのがたくさんあってちょっと気持ち悪い。ほんとうに、人、なのかなあ? 
 「今日は王さまといっしょなんだね!」
名前はハスターさんだと知っているけど、こう呼んだ方が喜ばれる。神さまと言えばもっと喜ぶけど、いまいちぼくには信じられないので王さまと呼んでいる。
 「がんばろうね、王さま!」
けれど王さまは、ぼくには見向きもしないままだ。ちょっとだけさみしい。えらい人なのは知っているけど、返事くらいはしてくれてもいいじゃないか。つまんなくなりそうだな、と思っていたら、「おい」と声をかけられた。
「どうしたの?」
「お前は監視者を持っていくのだろう」
小さくて黒くて、一つ目の人形みたいなやつのことだ。サバイバーが近くを通ると暴れて教えてくれる。
「うん」
「そうか」
これじゃだめだってことかな?
「……足を引っ張るなよ」
「王さまの足を?」
「そうだ」
「変なの!ぼく王さまの足は好きじゃないもの。触ったりしないんだから引っ張ったりなんてしないよ」
それっきり、王さまは黙ってしまった。だってほんとうのことだ。なんだかぬるぬるしてそうで、ぼくにはどうもあの足だけは好きになれそうにない。
 あーあ、なんだかつまんないことになりそうだ。今のうちにサバイバーのみんなのところに行って、脅かしてやろうかなあ。


 終わってみたら二人ともぼろぼろだった。なんとか五人をロケットチェアに座らせて勝てたけれど、他の人たちには逃げられてしまった。みんな飛ばしてしまうつもりだったのに!ちょっといじけていたんだけど、王さまはぼくのところにやってきて、真っ黒な手で頭をさわってきた。ぼくに頭がないのを知らなかったのか、形が少しだけつぶれてしまった。
 「思っていたよりも優秀だな」
ほめてくれてるのかな? 頭の袋を直しながら、次はみんな捕まえたいなと呟いたら、王さまの足がぐねぐねとぼくにまとわりついて、そのまま持ち上げられる。大人のひとたちと同じ高さ。肩の上に座らされて、斧を取り上げられた。
「それ返して!ぼくのだよ!」
「もしお前がこれを手放せば、我の足が切れてしまうだろう」
危ないからだめだと言われてしまったら、ぼくにはなにも言えなくなった。王さまはなにも気にしていないのかずるずると足をくねらせて進んでいる。これ歩いてるのかな?
「お前の……炎を引き寄せる技は見事であった」
「でしょ!走ってる人にも当てられるようにたくさん練習したんだよ!」
はしゃいで落っこちそうになったぼくを、足が伸びて支えてくれた。本当は火じゃなくて人の魂なんだけど、誉められたのがうれしくてしかたなくて、ぼくは間違えられたことは全然気にならなかった。
 そっと足を触ってみたけれど、ぬるぬるしたりもしてなくて、気持ち悪いとかいうことは思わない。
「我は明日も参加するが、お前はどうする」
「ぼくもやるよ。今度はみーんな飛ばしてやるんだ!」
「ならばまた共にやることもあろうな」
また王さまと一緒に。
 ぼくはもう、王さまのことも王さまの足も好きになっていたから、嬉しくてつい、ぼくを支えてくれた足を引っ張って、空に向かって握った手も一緒につき出した。がんばろうね!と言ったんだけど、王さまはちょっと怒って「足を引っ張るな」と、斧を持っていない方の手でぼくの手をむりに離させた。

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