新米トレーナーと捨てられたリオル(進撃/エレリ)
2013/11/10 00:40

※アニポケ風ご都合展開
※全体的にギャグです






























空気が冷えてきたある秋の日に、エレンはそれを見つけてしまった。故郷から旅立って数ヶ月、バッジもいくつか勝ち取って、順風満帆と思われていた旅路の中でその傷だらけのポケモンを見つけてしまった。雨なら何とか凌げるだろう、けれどそれしか無いような大きな木の下で座り込み寒さにじっと耐えるように震えるポケモン。見つけてしまったら放っておけなくて、急いで次の町を目指した。
その町のポケモンセンターに傷だらけのポケモンを預けると、受付の女性は大層驚いていた。どうやらあまりこの地方では見られない、珍しいポケモンらしい。恐らく、弱いから捨てられたのでは、という話だ。勝手なことだ、とエレンは思う。トレーナーなのだからポケモンを強くするのは自分の仕事だ、それなのに「弱いから」捨てるとは何事だろう。しっかり育成してみれば、進化すれば強いポケモンなど山ほどいるだろうに。
一度心配してしまうと、そのポケモンのことが気になって仕方なくなり、結局回復するまでエレンはそのポケモンセンターに泊まり込んだ。
数日も過ぎるとすっかり体調は良くなったらしい。「良かったら連れていっても良いですか」と受付の女性に問えば、「それはこの子に聞いてちょうだい」と言われてしまった。尤もな話だ。
というわけで、エレンはそのポケモン、少しだけ目付きが悪いリオルを連れていくことにした。

リオルはエレンの命令には忠実だったが、一向になつこうとはしなかった。一度人間に捨てられたからか、人間には決して必要以上に近付かない。きっとまた捨てられるのが怖いのだろう。命令を聞くのは、戦闘に必要以上に力を入れて望むのはきっとそのせいだ。そんなことをしなくても、エレンにはリオルを捨てる気など更々無い。わかってもらおうとして話しかけるけれど、気安く呼ぶなとでも言わんばかりにそっぽを向かれ、ならばと敬語を使うようにしたら、ようやく逃げられなくなった。
「やっとまともに聞いてくれるようになりましたね、嬉しいです!」
笑いながら喋るエレンは一体何が嬉しいのか、リオルにはわからなかったが。

旅を続けるうちに相応にレベルが上がり、今ではリオルはエレンの手持ちの中でも特に重要な場面で繰り出されるエースのような扱いになった。どんな相手にだって負けないエレンにとって相棒とも言える存在になったリオルは、しかし進化はしないまま、8つ目のバッジを手にジムを後にする。この調子で頑張りましょう、何て言われても、リオルの気はなんとなくもやもやとしたままだ。
リオルもエレンも本当は知っている。リオルが進化すれば、今よりもっともっと強くなれる。けれども進化出来ないのは、条件を満たしていないからだということを。レベルアップだけではリオルは進化出来なかった。けれどもエレンはそれでも良かった、リオルのままだって、エレンにとってはどうでもいい。そばにいてくれたらそれでいいのだった。
「そうだ、今更ですけど、まだ名前をつけてませんでしたね?」
エレンがそう問いかけると、リオルはじいっとエレンを見つめ、やがてため息をついて自らボールの中に入った。やれやれ、本当に今更じゃねぇかと言いたげに。けれどもエレンは諦めず、「じゃあ進化したらお祝いに名前を考えますからぁ!」なんて声が外から聞こえてくるが、リオルは黙って眠るだけだった。

そうしてチャンピオンロードに立ちはだかるトレーナーも四天王も全て駆逐して、ついにポケモンリーグのチャンピオンに挑む時が来た。エレンの手持ちはもう皆疲れはててボロボロで、技だってあといくつ出せるかわからなかったけれど、それでも引き返したいなんて弱音を吐く者は居なかった。誰が相手だろうと、エレンもポケモン達も負ける気がしなかった。
「やあ、君が挑戦者か。はじめまして、私がチャンピオンのエルヴィンだ」
丁寧に分けられた金髪がまぶしい、チャンピオンらしい威厳を持ってエレンの前に君臨するエルヴィンに、エレンは闘争本能が沸き上がってくる気分だった。ここまで来て負けるわけにいかない。その座を寄越せと、気迫がエルヴィンにも伝わった。「久々に骨のある挑戦者が来たようだ」と、嬉しそうにエルヴィンはバトルフィールドに降りてくる。どちらのポケモンも気合いは充分だった。
「お願いします!」
エレンが繰り出したのはリオルだった。最初から飛ばしすぎだ、とリオルは思うが、エレンの指示には従う以外にない。手持ちに敬語を使うエレンが不思議だったが、エルヴィンは構わずサザンドラを繰り出した。本気なのはエルヴィンだって同じだ。
「リオル、はっけい!」
「サザンドラ、だいもんじ!」
リオルのほうがサザンドラより僅かに早かった。掌底を思い切り胴体に叩きつける。こうかはばつぐんだ。だいもんじがリオル頭の上を通りすぎた。食らえば確実に戦闘不能だろうと、リオルは僅かに身震いして、次の指示を待つ。
「なかなかやるな、君は」
エルヴィンが次にサザンドラに指示したのはりゅうのいかりだ。荒れ狂うサザンドラがリオルに迫る、エレンは避けろと叫ぶが、リオルの体は動かなかった。
直撃を受けたリオルの小さな体が吹き飛んだ。
「リオル!!」
エレンがフィールドに駆けてくる。リオルにもそれが見えたが、体はまったく動かなかった。
ダメージは大きい。それでもリオルは立ち上がろうと、懸命に足を奮わせる。負けてたまるか、勝たなきゃ意味がねえと、エレンにはリオルがそう思っていることがわかった。しかしエレンはもうリオルを戦わせたくなかった。ただの一撃でこんなにも傷付いてしまったリオルを、これ以上戦わせたくなどない。けれど、ただでさえ疲労が溜まり傷だらけなのに、それでもリオルは立ち上がった。
リオルはエレンの夢を聞いたことがある。小さい頃に見たテレビで、ポケモンバトルをやっていた。堂々とした姿勢で指示を出し、ポケモン達もそれを信じて技を繰り出す。その時映っていたトレーナーに憧れ、自分もそうなりたいという夢を。
だからリオルは立ち上がった。自分が負けるわけにいかないのだ。エレンの夢を叶えてやりたい、そのために勝ちたいと、リオルは心から強く思う。
その時、リオルの体が光を放った。そばにいたエレンが思わず目を腕で覆い、眩しさに耐えながらそれでも見届ける。ポケモン独特のこの反応を、エレンはよく知っていた。リオルが進化するのに必要なものが、レベルアップの他にもうひとつあることを思い出す。
トレーナーによくなついていることだ。
発光が徐々に終息し、一回りも大きくなったその体が現れた。たくましく成長したその姿は、まさしくリオルが進化したルカリオそのものである。エレンは言葉もなくただ口をぽかんと開けて、ルカリオを見ているしか出来ない様子だった。ルカリオはそのエレンの様を一瞥し、サザンドラに向き直り。
進化と同時に使い方を理解した技…はどうだんで、サザンドラを一撃のもとに沈めてやった。





「………また君か、エレン」
呆れた顔を盛大なため息で飾ったエルヴィンが鬱々と挑戦者へ首だけ向き直る。その視線の先には、何度も繰り返しリーグに挑んでは勝ち抜きを繰り返した少年が、お小遣い下さいといった風に佇んでいた。完全に遊びにきた親戚の感覚である。
「いや、実はまだ買ってない技マシンがあって。ここは本当にいい稼ぎ場ですね!」
良い笑顔が憎たらしい。しかし来てしまったものを追い返すことは、ポケモンリーグではご法度である。エルヴィンは相手をするより仕方がないのだった。
「エレン。君は他にやることはないのかい」
モンスターボールを取り出しながらふと、エルヴィンが問う。
「何をでしょう」
「何でも良い。どこか他の地方に行ってみるとか、見たことの無いポケモンを捕まえるとか」
「うーん…想像がつかないです」
出来ればとっととどっか別の地方に旅だってほしいのだった。何せポケモンリーグはエレンの度重なる連覇のお陰で維持費すら危うい。チャンピオンとして君臨してくれるならともかく、こう易々と小遣い稼ぎに使われては、エルヴィンや四天王たちの懐から出るわけでないバトルの賞金すらそろそろ尽きる頃だ。
「いきましょう、リヴァイさん!」
しかもおまもりこばん持ちエースを平気で繰り出してきやがるのだから、エルヴィンの勝利なんて絶望的だ。
思えば懐かしいものだ、初めてエレンと対戦したときに進化したルカリオが、ニックネームまでつけられて、あの日と変わらない6タテを何度も何度も何度もやってくれる。あああの頃から既に彼のルカリオ―――リヴァイには、何をやっても勝てる気がしない。
そうして今日もまた、資金繰りに苦しいポケモンリーグからエレン少年とリヴァイたち手持ちは容赦なく賞金をむしりとっていくのであった。
「リヴァイ、あくのはどう!」





___
ちょっと好き勝手にやり過ぎました。
新米にして実は廃人トレーナーのエレンとリオル→ルカリオのリヴァイさん。
いや本当はもう少し考えてポケモンを決めたかったです。タイプ的にはコマタナ→キリキザンが一番似合っていると!思う!
種族値とかも本当はこだわるべきだった。ASまたはCS振りこだわりスカーフが良いポケモンは他にもたくさんいるんでしょうが、Aのひとが書くのを焦ったためにルカリオになってしまいました。
ちなみにエレンはリオルが6Vなのも知っていました。将来を考えて両刀最速スカーフとして育てていたという裏設定。しかし技を考えると決定力がちょっぴり不安?調べたら種族値そこそこ高いしいけるかな。
昼寝をするのが好きで両刀なのに性格いじっぱり。まあ…あまり深く考えたらまずいかと。
ちなみにエレンの憧れのトレーナーさんは名前がリヴァイなんですがまったくの他人です。つまりモブです。

comment (0)


prev | next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -