第八話

午前最後の講義が終わり、背伸びをしながら大きな欠伸をした。
さて今から昼だ。何を食べようかと思案しているところ「政宗」と声を掛けられる。

「Hello,家康。」
「昼、一緒にどうだ?昨日のお礼もしたいんだが。」
「OK.いいぜ。」
「良かった。じゃあ行こう!」

家康と政宗は学生達で賑わう学食へと向かった。




今朝は洋食だったので昼は和食にしようと思い、焼魚定食の食券を買う。
おばちゃんに食券を渡し、かわりに定食を受け取る。
今日はサバの塩焼きらしい。
さてどこに座ろうかと見渡すと、少し離れたテーブルで家康が手を振っていた。

「釣りはいらないぞ。」
「HA!10円しかなかったが、有り難く受け取っておくぜ。」
「ハハハ。大事に使ってくれ。」
「へいへい。」

家康はカツ丼定食を頼んでいた。しかも大盛りのようで、カツが器からはみ出ている。

「政宗、なかなか雅な食事じゃないか。」
「アンタと違って俺は少食なんだよ。」

味噌汁をずずっと飲み、サバに箸を入れる。

「そういえば・・・」

家康はカツを頬張りながら口を開いた。

「真田幸村・・だったか?あの小さいの。」
「ああ。幸村がどうした?」
「いや、なんか変わった子供だな〜と思ってな。」
「あのコスプレのせいだろ。」
「う〜ん、そうなんだが・・。なんか雰囲気がな・・・。」
「雰囲気?」
「うまく言えないんだが・・・儂、ボクシングやってるだろ?それで相手の強さとかなんとなく分かる時があるんだ。」

「へぇ。」

「それで昨日はどうしたことか幸村を見た途端、『強い』と感じたんだよなぁ。」

「へ、へぇ・・・・。」

「同時に少しだが恐怖を感じた。別れ際につい名字で呼んでしまったほどだ。」

「・・・・・。」

「あんな小さい子供なのに不思議だなぁと思ってな。もしかして武術とかやっているのか?」

家康の鋭い直感に政宗は冷や汗をかいた。
まさか戦国時代の武将とは見抜かれていないだろうが、その野性的な勘に驚く。

「いや・・知らねぇな。アイツ、自分の事あんま喋んねぇんだ。」

政宗はそれとなく家康の質問を躱した。

「そうか。もし何もしていないならぜひボクシング部に勧誘しようかと思ったんだが。」
「バーカ。ガキを勧誘してどうすんだよ。どうせ入れねぇだろうが。」
「いや、まぁそうなんだが、今のうちにどうだろうと思ってな。ハハハ。」
「多分興味無ぇだろうよ。Too bad.」
「そりゃ残念だ。かなりの逸材と思うんだがなぁ。」
「諦めろ。それより忠勝は問題なく動いたか?」
「ああ!政宗のお陰ですこぶる機嫌がいいぞ!」
「そうかい。そりゃ良かった。」


家康は零れんばかりの笑顔で嬉しそうに忠勝の事を話し始めた。

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