第七話

「政宗殿。片倉殿が・・・。」

幸村の目線の先を見ると、いかつい表情をした小十郎が座ったまま船を漕いでいた。

「今日は久しぶりの遠出だったから、疲れたんだろうよ。」

小十郎をそんな状態にさせた張本人がしれっとそんな事を言ってのける。

「そうでござったか。奥州からは遠うござるからなぁ。」
「悪ぃが真田幸村。小十郎を部屋に連れて行きてぇんだが・・・。」

今にも倒れそうな小十郎を脇から支える。

「これは気が回らず失礼いたした。今、お連れいたしますので、しばしお待ちを。」
「いや、俺が行くから部屋まで案内してくれ。」
「・・・そうでござるか。では、某もこちらから支えましょう。」

政宗とは反対の方向に移動し、小十郎の腕を肩に乗せる。

「頼むぜ。」

2人で小十郎を担ぎ、廊下に出る。
すっかり夜も更け、心地よい風が吹いていた。


部屋に入ると既に布団が敷かれ、行灯の光が控えめに灯っていた。
懇々と寝入っている小十郎を布団の上に寝かせる。

「・・・ったく、しょうがねぇなぁ。」
「このような片倉殿が見られると・・貴重な体験でござった。」

余程めずらしいのか、幸村はまじまじと小十郎の顔を覗き込んでいる。
気配に敏感な小十郎も、流石に今は起きない。

(まぁ、俺のせいなんだが)

一人原因を知っている政宗が微かに笑う。

「さて、と・・・そろそろお開きとしようぜ。」
「そうですな。某も少々飲み過ぎました。」

そう言う幸村の顔を見ると、瞼が眠たそうに若干おりてきている。

「政宗殿の部屋に案内いたす。こちらに。」
「ああ。」

長く伸ばした後ろ髪が夜風に揺れる。
手を伸ばせばそれに触れそうになるのを今はぐっと我慢した。
どうせ後でたっぷりとできるのだ。焦ることはない。
政宗はどうにか理性を保ち、幸村の後をおとなしくついていった。

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