第四話

「遠路はるばるよう来られました!」

客間に通された政宗達は極上の笑顔を見せる幸村に迎えられた。
その笑顔に政宗の胸が一気に高鳴る。
しかし、そこは奥州一の伊達男。
動揺を幸村に悟られまいと振る舞う。

「HA!最近調子はどうだぁ?真田幸村ぁ。」

挑発的な笑みを浮かべ、出された茶を啜る。

「無論!政宗殿に負けぬよう、日々鍛錬に励んでおりますぞ!」
「〜♪嬉しい事言ってくれるじゃねぇか。」

自分の為に鍛えている−。その発言が政宗の心をえらく駆り立てた。
嬉しそうに隻眼を細め、おもむろに幸村に近付く。


「・・・政宗殿?」


幸村は不思議そうに少し茶色掛かった瞳を見開いた。
間近で見る幸村の顔は案外幼く、自分より年は下だと感じた。
戦場では紅蓮の焔の如く敵を薙ぎ払う男とは信じ難い。
その顔にそっと手をのばす。


−タンッタンッタンッ!!


もう少しで触れそうになるのを3本のクナイがそれを制する。

「政宗様っ!」

小十郎が慌てた様子で政宗に駆け寄る。
あわや手の甲に突き刺さるのを寸前で躱し、政宗は頭上を睨み付けた。
天井からは闇の渦より佐助の顔が見える。

「うちの旦那はお触り禁止なんで。」
「・・・・こンの糞忍が・・・。」

いい所を邪魔され、政宗はパリパリと放電しながら怒りを露わにした。
足下に刺さっているクナイを3本一気に引き抜く。
佐助に投げつけようと振りかぶると、目の前に幸村が両手を広げて立ち塞がった。

「お待ち下され!!」
「・・・退け。真田幸村。」

鋭く射抜くような隻眼で幸村を睨み付ける。
並の者であればそれだけでも歩が後ろに進みそうだが、幸村は退きはしなかった。

「こちらのご無礼まことに申し訳ござらん。しかし、今日は某の顔に免じて許してはござらぬか?」
「旦那。無礼があったのはあちらさんだぜ?」

天井から降り立った佐助が幸村の隣に立つ。

「お前は黙っていろ。・・・如何か?」

政宗は懇願する幸村の顔をじっと見つめる。
額から汗が一筋流れ出ていた。


「・・・・タダじゃあ納得できねぇなぁ。」


幸村の喉がごくり、と鳴る。


「・・・何をご所望でござろうか?」


緊張で顔を強ばらせながら政宗に問う。
その様を面白そうに眺め、顎をゆっくりとさすり目を細める。

「そうだなぁ・・・。ここに泊めてくれればさっきのはthroughしてやってもいいぜぇ?」

「するー・・・?」

初めて聞く言葉に幸村は首を傾げた。

「無かった事にしてやるって意味だ。」

政宗の発言に幸村は訝しげに眉間に皺を寄せる。

「まことにそうのような事でよろしいので?」
「Yes.竜に二言は無ぇ。」

途端に幸村の顔がぱっと花が咲いたように明るくなった。
そして両手に拳を握り、爛々とした瞳で叫ぶ。

「心得ました政宗殿ぉ!!この真田源二郎幸村、全力でおもてなしいたしますぞ!」
「ちょ、旦那!本気ぃ?!」

佐助が間髪入れずツッコむが、時既に遅し。
やる気が漲っている幸村を誰にも止めることはできない。

「うぉぉぉぉぉぉ〜!!!さぁすけぇぇぇぇ〜!!宴の用意どぅああああぁぁぁぁ〜!!!」

炎が燃え盛らんほどに熱を発する幸村に圧倒され、佐助は思わず「ハイ」と答えてしまった。

「政宗殿!片倉殿!すぐに用意させます故、しばしここでお待ちくだされぇ!!」
「OK.楽しみにしているぜ。」

政宗はまたもや凶悪な笑みを浮かべ、挑発的に答える。
「み・な・ぎ・るぅぅぁぁぁぁあああああ〜!!!」と叫びながら幸村は部屋をあとにした。
佐助も政宗を一睨みし、足元に闇を纏わせ消えていった。

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