第三話

―上田城。

初春を迎え、城内の木々は若葉が芽吹き陽の光できらきらと輝いている。
城主・真田幸村は縁側に座り、それらを愛でながら団子を頬張っていた。
その傍らには真田忍隊・猿飛佐助が控えている。

「旦那ぁ、口に入れすぎ。」
「もごもごもご!!」

「・・・何言ってるかさっぱりだよ・・・。」

呆れる佐助をよそに、次々と団子を頬張り満足そうな笑みを浮かべている。
そんな幸村を見て「何だか平和だなぁ・・・」と一人呟いていると、すぐさま状況が一変した。


よく通る声が庭に響き渡る。


「Hey!!呑気にdesert喰ってんじゃねぇよ!真田幸村ぁ!!」


声をする方に目をやると、塀の上に腕を組んで凶悪な笑顔で見下ろしている男がいた。

「ふおっ?!ましゃむねどのぉ?!!んぐっ!」

突然の竜の乱入に佐助も幸村も驚く。幸村に関しては、あまりの驚きに団子が喉に突っかかり、むせていた。

「旦那〜、言わんこっちゃない。」

そんな幸村の背中をさすりながら、佐助は鋭い目付きで政宗の方を向く。

「何の用だ。独眼竜。」

迸る殺気を隠そうともせず睨み付ける佐助に、政宗は鼻でせせら笑った。

「HA!忍に用は無ぇ。」

その返答に佐助のこめかみに青筋が立ち、更に殺気が増す。

「馬鹿となんとかは高い所が好きって言うよねぇ。ほんとそう思うわ。」
「なんだとぉ?忍の分際で俺に盾突くなんざ叩っ斬られてぇのかぁ?」

「ごほっ!ごほっ!!ま、待て佐助ぇ!!」

両者のただならぬ様子に幸村が慌てて佐助の腕を掴んだ。

「旦那、止めてくれるな。あの馬鹿を殺す。」

いつの間にか手に握られていた大手裏剣を政宗に方に向ける。

「Hum・・・どうやら死にてぇみてぇだな。それならそうと素直に言えよ。」

腰の物をすらりと抜き、佐助の方に構える。

「まま政宗殿もお待ち下され!」

必死に止めようとする幸村だが、2人の耳にその声は入っていなかった。
両者が激突するであろう瞬間−。
2人の殺気を上回るものが辺りを覆い尽くす。
それはどうやら塀の外からのようで、幸村は思わず息を呑んだ。
程なくすると声が聞こえてくる。

「政宗様。お戯れはその辺にしておいたほうがよろしいかと。」

その声の主・片倉小十郎の発言に3人は押し黙った。
そして佐助も政宗も武器を降ろす。完全に戦意を削がれたのだ。

「・・・・まぁ、やり合うために来たんじゃねぇしな。」
「無論。小十郎はそう聞いておりますぞ。」
「真田幸村。テメェの面を見に来たんだ。茶の一つでもだしやがれ。」

政宗のものすごく上から発言で、佐助に再びふつふつと怒りが再発してくる。
しかし幸村は至極嬉しそうな顔で塀の側まで駆け寄っていた。

「おおっ!!そうでございましたか!!ではすぐに用意させます故こちらへ!」
「おう。」

政宗はそのまま塀から庭へ降りようとするが、小十郎に止められる。

「政宗様。門から入られたほうがよろしいかと。」
「アァン?」
「政宗様。」
「・・・・・・」

またもや怒気を放つ小十郎に政宗は言葉を無くす。
そして観念したかのように溜息をついた。

「・・・分かったよ。門から入りゃいいんだろ。」

ヒラリと塀から降りると幸村に声を掛けた。

「おい、真田幸村!怪しまれるのが面倒くせぇから門番に俺らの事伝えとけ!」
「心得ましたぁ!政宗どのぉ!!」

まるっきり使われている幸村に佐助は先程の怒りは消え、代わりに不安が胸に広がる。
本気で仕官先をかえようかさえ思った。
自分の従者がそこまで悩んでいるとも知らず、幸村は砂埃を上げながら表門に爆走していった。

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