何度でもどこまでも3





「な、なんで??」
携帯に表示された日付は間違いなく31年4月だった
自分が入隊してすぐ…といったところか
ということはまだ堂上とは犬猿の仲で
手塚とは出会ってなくて、小牧とは…それなりに話したことがあったかどうかという程度だろうと思う
混乱してきた
もともと考えるのは苦手だし
まさか知らない間に現実逃避に走ってしまったのか
辛いのは確かだけれどダメじゃないか、しっかりしなくては
篤さんに怒られる
そう考えとりあえず落ち着こうと飲み物を買うために財布を掴むとロビーへと向かった

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ロビーには人はほとんどいなかった
もう少しいてもいいだろうとは思うけれど今はあまり人に会いたくない
何しろ愛する夫を亡くし(たはず)てずっと落ち込んでいたのだから
だがどうしても携帯の画面に表示される正化31年という文字が気になる
もしかすると本当にタイムスリップというものが存在し、自分はそれによりここにいるのかもしれない
だとしたらそれは喜ばしいことではないのか
自分には5、6年ほど先の未来がわかっている
ということは堂上を救うこともできる?
そんな考えに少し気持ちが浮上した
それならば自分の迂闊さを減らし、冷静に行動し彼を守ろう
そう決意し自室へ戻ろうとしたときだった
「笠原」
後ろから聞きたくてたまらなかった声がした
振り向くとそこに立っていたのは今まさに頭のなかを埋め尽くしていた人物
さっきまで真っ白の部屋で眠りについていたはずの人が訝しげな顔をして自分を見ていた
「こんばんは、堂上教官。何か用ですか?」
極力平静を装い言葉を紡ぐ
声が震えなくてよかった、なんて今関係ないことを考えたりして…
「いや、別に。特に用はないんだがな」
と少し居心地悪そうに言うのがなんだか可笑しい
「あの、堂上教官」
笑いをこらえながら、いっそ笑い話にしてしまおうという勢いで口を開いた
「今って正化31年ですか?」

堂上の目が驚きで見開いた
こいつは何を言ってるんだとか思われてるんだろう
「お前、とうとうおかしくなったか?」
ほら、やっぱりそりゃずっと一緒にいたんだもの
篤さん…教官の考えることなんてお見通しですよ
そう思いながら心配そうな顔をする目の前の男に種明かしをした
「冗談ですよ!ほんといっつも仏頂面だから笑い話とか通じないんですねー」
目の前の顔が憤怒のものに変わって拳骨…かと思ったのにそうはならなかった
「冗談ならいい」
あれ、怒らないの?この頃から優しかったっけ…?
「訓練で疲れて頭がおかしくなったなんて周りに言われたらたまったもんじゃないからな」
前言撤回、やっぱりこの人は鬼教官だ
ぽんと手が頭にのせられて撫でられる
「明日も訓練だ、部屋に帰って休め」
あぁ、やっぱり私はこの人が…
「はい!」
その考えが形をなす前に返事をした

私は教官を守ります

さっき形にならなかった答えを頭ですり替えて部屋へ戻った



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