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「咲希ー。買い物行くよ。」

「買い物!!服とか買うんだよね!!」

「そうそう。(尻尾と耳が見える)」




咲希は目をかがや輝かせ、嬉しそうにツナに飛びついている。

外に出たことないわけではないだろうが、お金がなくて何も買えなかったのだろう。

嬉しそうにしている##Name_1##を見て自然とツナも顔を綻ばせた。




「とりあえず、家具をそろえなきゃいけないから。それと服と雑貨を買って」

「はーい」

「一応、護衛ってことで雲雀さんがつくから」

「ツナは?」

「俺は任務なの」

「・・・・にんむ?」

「お仕事ってこと」

「一緒に行けないの?」




ツナはすぐに言葉を返すことが出来ず、苦笑した。

今にも泣きそうなほど目を潤ませている咲希に一緒にいけないなんて言ったらどうなるか・・・・

考えただけでも恐ろしい。



「ぁー、えーと・・・」

綱吉、何してるの

「ぁ、雲雀さん」




グッドタイミング!

ツナはほっと胸をなでおろすと、泣き目の咲希を押し付けて早々と部屋を出て行った。

なんとも薄情なことである。

雲雀は突然のことに「は?」と思うが既にツナはいなくて文句もいえない。

どう対応すべきか迷ったが、すぐにその必要はなくなった。




チッ、あと少しでツナといけたのに

「・ ・ ・ ・」

「早く行こうよー」

「君、いい性格してるよね。」




きょとんと「何が?」と聞き返しているがあれは計算だろう。

結局、裏社会育ちに純粋なものなんていない?

雲雀は呆れ半分、一応咲希の手を引いて車に乗り出した。




「キャーキャー!車ー!!はっやーい!」

「煩いんだけど」

「はーい!」




それでもなお、嬉しそうにニコニコしている。

何がそんなに楽しいのか雲雀にはまったく理解できなかったが、笑っているならいいと思う。

だって、泣かれたら困るし。

煩いし、周りに奇妙な目で見られるだろうし、綱吉いないし。

そんな理由で、雲雀は咲希の機嫌がずっといいままでいるようにと願った。




まぁ、神様って意地悪だから

願いを叶えてはくれないんだよね







***







「とりあえず、家具が先かな」

「ねー、かぐってなに?」

「タンスとか椅子、テーブル」

「何それ」




相変わらず、首を傾げている咲希に雲雀はため息をついた。

知らないのも無理はないが・・・

こうなると直接見せて説明したほうが早い。



「降りて」



ちょうど店に着いたところだし。

雲雀は咲希の手を引いて店の中に入っていった。




「「「「いらっしゃいませ。」」」」


「綱吉から話は、いってる?」

「はい。もちろんです」

「じゃぁ、適当に選んでよ」

「きょーやは?」

「面倒」

「えぇー」




ウルウルとした目で雲雀を見る咲希。

計算だろうと分かっていても・・・・、泣かれたら困るし・・




「げんなり)」

「キャーきゃー!!何これ!!」

「ちょっとは・・・静かにして」

「ねーねー、これ何に使うの?」

「机は・・・そうだな。勉強したり絵をかいたり・・物を入れたり」

「べんきょうって!?え!?!?」

「・・・明日から全部教えてくよ。とりあえず、黙って好きなデザインを選んで」

「デザイン!?」




雲雀は大きくため息をついた。

知らないのは当然・・・当然だけれでも!!

知りたいと思うのも当然だけれども!


うざいと思ってしまうのも当然だろう・・・

咲希は雲雀の言うとおり、自分好みの家具を何点か選び。

雲雀は疲れた表情でそれを買った。

たかが買い物でこれほど疲れるなんて誰が予想しただろう。




「次はー?」

「服」

「着るものだよね!」

「そう。近いから歩くよ」

「だっこ〜」

「・・・あ・る・く・よ!

「む〜」




ムスーとしながら、雲雀を見るが・・・

仮にもボンゴレ最強の守護者だ。面子と言うものがる。

ボンゴレ最強の孤高の浮雲と謳われる雲雀が、こんな小さな女の子を抱っこしながら買い物なんて・・・・

うん。ないない


咲希にそんなこと分かるはずがないが、泣き脅しが聞かないと分かると素直に雲雀について言った。

それでも迷子防止に手をつないでいるのだが。

なんていったって、周りのすべてのものに対して質問してくるんだもの。




「!きょーや。これなぁに?」

「え?ジェラート」

「ジェラート?」

「アイス・・・っていうか、お菓子って言うか・・。食べてみれば分かるよ。何味がいい?」

「えぇと・・・わかんない・・」




字が読めないし、読めたとしてもそれが何なのか分からない。

咲希はしゅんっと顔を伏せた。

雲雀は適当な味を選び、咲希に渡す。




「・・・・・・赤。」

「ピンクだと思うけど。イチゴ味だよ」

「いちご?」

「果物・・・あとで説明してあげるから。とりあえず、これがいちご味のジェラート」




ペロリと一口舐めてみると、甘い味が口の中に広がった。

少し酸味があるような気もする。




「おいしい!」

「そう」

「ぁ」

「?」

「きょーや笑ったー!」

「え?」




咲希はアイスを持ったまま、子供のように可愛らしくはしゃいでいた。(子供だが)

雲雀はと言えばきょとんとしているが、確かに・・・さっきほんの少し口元が緩まってしまったかもしれない。

何に対しても無関心な雲雀だから、いつも仏頂面だ。

子供心に、不安に思ったのかもしれない。



「きょーや、イケメンなんだからもっと笑えばいいのに。馬鹿な女どもがよってきていっぱい貢いでくれるよ?

「・・・・・・」



前言撤回。

どうしてこんな言葉ばっかり知ってるのだろう、この子は・・・





「服は・・・・どうしようかな。」

「可愛いのがいい!ふりふりとかピンクとか!!」

「いいんじゃない?なんでも」




雲雀に子供服のことなんて分かるはずがない。

家具と違って、勝手も分かってるようだし。

雲雀は近くの椅子に座って、じっと咲希が服を選ぶ様子を見ていた。

時々、服を見せにくるから、可愛いといってやれば嬉しそうに笑う。




「これくらい!」

「うん」




かご一杯に入れられた・・・服やら下着やら。少しは遠慮しろと思う量だが。

子供だし。遠慮なんてしない。

調子いいときばっかり子供になってるな

値段はまぁ・・・・常識的に考えればありえない値段だが。マフィアだし。




「あとは、面倒だからいいでしょ。適当で」

「えぇー!!買いたい!」

「じゃぁ、選んできてよ」

「うん!」




うん!

そう元気に返事したくせに、咲希の手は雲雀の袖を引っ張っていた。

しばらく咲希を見たあと、雲雀は諦めため息をついて咲希につきそった。

くし・鏡・ノート・鉛筆・歯ブラシその他もろもろ。

咲希が知らないものも多く、またきらきら目を輝かせていたが・・・何なのか聞きはしなかった。




「はぁ〜。楽しかった!」

「そう・・・。僕は疲れたよ」

「えぇ。ごめんね。でも、きょーやと買い物できて嬉しかった!」

「・・・そう」




確かに疲れはしたのだが、咲希の笑顔を見るのは妙に心地よかった。

心が温かくなるとはまさにこういう感情なのだろう。




(たまには悪くないかもね・・・)




そんなことを思いながら車に乗った。

さすがに疲れたのか、咲希はうとうと首を前後に揺らしている。




「寝なよ。ゆっくり」

「んにゅ・・」




電池が切れたようにぱたりと雲雀の膝に倒れこむ。

雲雀は無意識のうちに咲希の髪を梳いていた。




「・・・?
 道が違わない?」


「いいえ、違いませんよ」




自分でもずいぶん油断したものだ と、雲雀は忌々しげに舌打ちをした。





貴方を黄泉の国へ送り届ける道ですから




カチャリと

こめかみに何かが当てられた。


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