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「ごちそうさまでした!」

「ちょっと待った咲希」

「ん?」

「その皿の上に残っているものは何?」




皿の上には緑色や赤色や黄色の物体がちまちまと乗っていた。明らかに今日のメニューに入っていたものだ。

最初のうちは慣れていない環境のせいだとツナは思っていた。だから、少しくらい残していたとしても特に気にはしなかった。

だが、次の日は綺麗に食べ・・・その次の日は残しと言う感じになり・・・今でも少しは残している。

そして、これがただの好き嫌いだと気付いたのは・・・咲希が一緒に住むようになって一ヶ月たった今だった。




「いや。食べたくない」

「・・・咲希。好き嫌いはダメだよ」

「いーやっ!」



ツナが優しく言うが、咲希は聞く耳持たずという感じでプイッと顔を背けてしまう。ツナは苦笑しつつ溜息をつく。

優しいだけに強く言うこともできず、とりあえず咲希の皿に残っている食べ物に目をやる。




「ピーマンにんじんたまねぎ魚介類・・・。逆に何を食べれるのか聞きたくなる・・・」

「おいしくないの!」

「それは分かるけど、好き嫌いは体によくないし。少しだけでも食べよう?」

「やったら、やっ!!」



バンッ!


力強くテーブルが叩かれ、食器が音を立てて揺れた。

その音はその場の空気にひびを入れる。一気に気温が下がったような錯覚を覚えさせた。

誰によって、かといえば・・・




「咲希・・・」




もちろん雲雀恭弥である。

その声のあまりの低さに咲希でさえびくりと体を奮わせた。

けれど負けじと恭弥を睨みつけるその様は子供らしい。




「た、食べないもん!咲希これ全部嫌い!!」

「食べ物を粗末にするな」

「やあー!!たべたくなーいいい!!」

「ちょっ、咲希、落ち着いて・・・」

「いーやー!!」




半分涙を流しながら咲希が抵抗するものだからツナもそれ以上食べろとはいえなくて

というか、なだめるのでいっぱいいっぱいになってしまった。

これが反抗期だろうか?なんて思ってしまうほどの抵抗だった。

普通の子供の反抗なら手足をばたつかせたり噛み付いたりと、可愛いものだが・・・なまじ炎を使えるばっかりに咲希の抵抗は酷かった。

まさにとめるのは命がけだ。相手が自分の力を理解できていない子供なだけに炎の手加減が難しいのだ。

結局、今日のところは咲希に食べさせるのを諦めたツナだった・・・。




「うーん・・・どうしたもんかなぁ」




ご飯を食べ終わった咲希はリボーンにつれられ今日の勉強に行った。

残った守護者たちは全員で咲希の好き嫌いを直すにはどうしたらいいか奮闘中だ。

・・・真面目に話し合いをしているのが半分というのがいいのか悪いのかはほっといて。




「無理やり食べさせる」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

「それやって・・・失敗したじゃないですか。雲雀さん」

「鳥には学習能力がないんですね」

「黙りなよパイナップル」

「僕はぱいなっぷ「その頭を見てパイナップルって言わない生き物はいないね。ヒバードだって言ってる」それは貴方が教えたんでしょう!?」

「あー、もう!!喧嘩しない!!」

「好きなものにみじん切りにして組み込むとかはどうだ〜?」




山本はのほほーんとした声で提案した。

ツナは、そうしよう!と即その提案を受け入れ料理長と相談することにして・・・とりあえず、咲希の嫌いな野菜で咲希の好きなお菓子を作ってみることにした。




「10代目。出来上がりましたが」

「ありがとうございます!」




10時のおやつを料理長から受け取り、ツナは咲希の部屋に持っていく。咲希が一番懐いているツナが持っていくのが一番危険の少ない方法だろうということだ。

いくら懐いているといっても、さっきの抵抗を考えれば・・・また抵抗されたらかなり苦労することは目に見えていた。

ツナは緊張に顔を強張らせながらそっとノックして部屋に入った。




「あ、ツナー!」




さっきのことなどなかったようにトタトタと嬉しそうな顔で咲希は近づいてくる。

その様子が可愛らしくして、思わず笑いながら頭を撫でてやった。半ば無意識に。

それを咲希は嬉しそうに受け止めている。




「いちゃついてんじゃねぇよ・・・」

「・・・?いちゃつくってなぁに?」

「仲のいい男女がなれなれしくふざけ合うことだぞ」

「えーと・・・咲希とツナが馴れ馴れしくふざけあって・・・ふざけ合ってないよ??」

「・・・」

「変なこというなよリボーン。で、俺は10時のおやつを届けにきたんだけど・・・」

「うわー!おやつ!おやつ!」




手をぱちぱち叩きぴょんぴょん飛び跳ねて全身で喜びを表す咲希にツナはまた微笑んだ。

とりあえずお菓子にしやすいオーソドックスなにんじんケーキからだ。

オレンジ色のシフォンケーキだけれどカモフラージュとしてシュガーコーティングをしてある。

今までの系統の違うお菓子だからかじっくりとケーキを見ていたけれど、フォークを手に持ってケーキを口に含んでくれた。




「ど、どう・・・?」

「んー・・・おいしい!」

「よ、よかった」

「にんじんもケーキにすると美味しいんだね!」

(ば、ばれてる・・・)




最初にじっくり観察していたのはにんじんなのか考えていたせいか。咲希の観察力にツナは苦笑した。

けれどもにんじんでも食べてくれたのはいい傾向で、これならにんじんもそのうち食べれるようになるだろうと思っていたが・・・




「でも、にんじんは嫌ーい」




にこっ、と笑いながらそういわれたものだから・・・




「え、えぇー!?」




一気に脱力したツナだった。


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