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「恭弥、恭弥!
Bonjour.Comment allez-vous?」
雲「・・・・は?」
「C'est difficulté du travail!」
雲「・・・・Merci.」
雲雀はそっけなく返すと、咲希は嬉しそうに笑った。
ちなみに今の会話は、おはよう。ご機嫌いかが?とお仕事ご苦労様、ありがとう。である。
ちなみにフランス語だ。
「抱っこして!」
ニコニコ笑って手を伸ばす咲希に苦笑しつつ、雲雀は咲希を抱き上げた。
抱き上げなければ煩くなることは簡単に予想出来る。
雲「なに?フランス語?」
「うん!骸に教えてもらったの!あと、イタリア語とドイツ語とスペイン語と英語と中国語と韓国語!今はエジプト語を教えてもらってるの♪」
雲「・・・・・・やけに多いね。」
「そーぉ?楽しいの!」
雲「ふぅん。で、なんのよう?」
「みんなに話しかけてるの!でも、みんなちゃんと答えるんだもん!」
雲「不満?」
「なんかやー。」
むぅと唇を尖らせる咲希に苦笑しつつ、雲雀は頭を撫でた。
すると、咲希は嬉しそうに笑う。
コロコロと表情は変わっていく。
雲「綱吉には試した?」
「仕事忙しいから隼人がダメー!って。」
雲「綱吉だったら答えられないと思うよ?イタリア語と日本語で手一杯のはずだから英語すら話せないだろうね。」
「ほんとぉ?やった!」
雲「行く?」
「んん・・・でも、隼人怒る・・・」
シュンッと下を向く咲希。
怖いのか、ぎゅっと雲雀に抱きついた。
そう言うところはまだまだ子供らしい。
雲「じゃぁ、何かで暇つぶしでもしてなよ。夕飯には来るだろうし。」
「うん!そーだ!きょーや、お茶教えて??」
雲「お茶・・?」
「うん!骸がね、日本にはさほう?があって、お茶とか飲むって教えて!!お茶は苦いけど、一緒に食べるわがし?は甘いっていってたの!食べたい!」
雲「お茶というより和菓子なんじゃ・・・まぁいいけど。」
「やった!!」
雲雀は喜ぶ咲希を抱きつつ、自室へと向かった。
電話で、お茶と和菓子・・・それに着物を用意させるようにいって。
子供を抱いている雲雀という、天変地異の予感がするようなものを見たものが誰もいなかったのは幸運だろう。
*
「これなぁに?」
雲「着物だよ。」
「きもの・・・。骸がいってた!日本の服?」
雲「まぁ、そんなものかな。お茶の時は着物だよ。自分で着れるように覚えな。」
「うん!」
雲雀は手際よく咲希に着物を着せていった。
咲希はじっとそれを見ていて、大人しく着せられている。
雲「分かった?」
「うん!覚えたよ!」
雲「・・・もの覚えがいいんだね。」
「骸とツナもそういってた!・・・・どうかした?」
雲「・・・さっきから六道の名前が出てくるから。」
「骸が昨日教えてくれたの。」
雲「・・・ふぅ。だろうね。」
キョトンと首を傾げる咲希に、雲雀は苦笑いした。
雲雀は、骸の名前を聞きたくないほどに骸が嫌いだ。
けれど、咲希は嫌いの意味が多分分からないだろう。
わざわざそんな感情を教える必要はなく、雲雀は話を逸らした。
雲「それじゃぁ、行こうか。」
「うん!この着物、どーするの?」
雲「あげるよ。そもそも、君以外着る人間はいないしね。」
「もらう!」
草「恭さん。準備しましたが・・・」
「ウオッ!!」
雲「じゃぁ、下がって。」
草壁はしばらく口を開けていたけれど(つまり固まっていた)、雲雀の鋭い視線を感じそそくさと出ていった。
信じられないのも無理はないだろう。
雲雀は幼い少女と一緒に部屋に入ってきたのだから。
雲「作法は気にしなくてもいいよ。まず、抹茶をいれる。」
「まっちゃ・・・」
雲「これだよ。そしてお湯をいれて素早くかき混ぜる。」
「素早く・・・うおおおおおお!!」
ビシャァッ!
雲雀の言葉を鵜呑みにし、全力をかけてかき混ぜた咲希。
当然のことながら、抹茶が飛び・・・散った。
無残にも畳の上に叩きつけられる。
雲「・・・・・・・」
「・・・あれ?お茶消えちゃったよ?」
雲「(後で草壁に片付けさせよう。)違う。やりすぎだ。」
「・・・だって素早くかき混ぜるっていった。」
雲「素早くと力強くは違うよ。もっと空気を混ぜるようにしてやるんだ。」
そう言うと雲雀は、咲希の前で綺麗にお茶を作って見せた。
咲希は再度挑戦してみるが、どうも上手に出来ないらしい。
だんだんと顔が曇っていく。
雲「練習しだいだね。飲んでみたら?」
「うん。・・・苦ぇええええ!!」
雲「当たり前でしょ。抹茶なんだから。」
「うえっ!うぇ!苦ぁあいい!!」
雲「和菓子、食べたら?」
雲雀にいわれ、咲希は目の前にあった和菓子を手に取り急いで口に詰め込んだ。
あんこがべちゃべちゃと手についているが、咲希に気にした様子はない。むしろ雲雀が顔をしかめている。
しばらくすると、口の中から苦味が消えたのかやっと落ち着いたように息を吐いた。
「うえっ・・・うぅ〜。」
雲「抹茶っていうのはこういうものだよ。」
「なんできょーやは飲めるの?」
雲「美味しいから。綱吉は苦手だよ。よかったね。」
「うん!」
なにがよかったというのか、突っ込むものはいなかった。
それ以降咲希はお茶を飲まず、和菓子だけを楽しんでいたと言う。
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