Five

「ひばりーn「ドガッ」うぅ。愛が痛い」

「何が愛だよ。昨日逃げたくせに」

「逃げたんじゃない!帰ったんだもん!」



涙目で弁明しながら夕翡はドアに突き刺さったトンファーをもって雲雀に近づいた。

雲雀はコンクリートの上に寝転がって空を見ている。

夕翡はトンファーを雲雀に返しその隣に座った。いつもなら即座に帰れとか暴言が飛んでくるのだが雲雀は夕翡にちらりと目をやって聞く。




「で、今日は何のよう?」

「ツナの嫁に「一戦逝くかい?」冗談…」




そう言いつつ夕翡は目元を手で覆っている。どこが冗談だ、いつも本気だろう。

雲雀は夕翡がいつも自分に言っていることが本気であると重々承知している。だからこそ本気で拒否しているのだ。




「本当は、並中の1−Aに私を入れてくれないかなぁって」

「…はぁ?君小学生でしょ」

「うん。でも、勉強は出来るよ?一応、大学問題出来るから。ね、お願い〜!」




手を合わせ頼み込んでくる夕翡にの頼みに、雲雀は少し考えこむ。

別に雲雀は夕翡が嫌いなわけではないし、なんだかんだで付き合いも長い。それにその願いを聞いてやることはいつもの無理難題に比べれば造作もないことだ。

だがしかし、夕翡が頼んでくるということは何かしら考え、悪巧みがあることを意味していて。それはまあ雲雀の逆鱗に触れはしないものの心労の種になることかもしれない。




「僕にメリットは?」

「ん〜。特別に、いい情報教えてあげる。たとえばこれからくる…強い敵のこととか。そうでなくても私が並中生になれば好きな時に戦えるよ?」

「やりたくないときは逃げるくせに。…まぁ、いいよ。明日は留学生が一人来るみたいだしね」

「留学生……。ごっきゅんんんんん!!」

「…」

「あああああ、いいっ、いいわあああ!あのツンデレ!最初こそ不良でツンツンしてたのにすぐに忠犬でデレデレで、でも山本にはツンツンしてて、でもでも本当は山本のことを嫌いじゃないんですよねえええ。ツンデレ美味しいですううう!




突然叫び出し顔を真っ赤にしてコンクリートを叩きだした夕翡。端から見れば異常者である。

当然雲雀は頭大丈夫か?という目で夕翡を見ている。だがまあ夕翡の奇行にはある程度慣れているため、こういうときの夕翡は放っておくに限ると存在を気にしないように自分に言い聞かせた。

夕翡はそんな雲雀のことなど気にしてはられない。たとえ今、自分が軽蔑を含んだ冷たい眼差しで見られていたとしても、自分の中から湧き上がってくる熱情を抑えることなど彼女には出来なかった。




「レパートリーが増えるっ。リボツナ、ヒバツナ、ツナヒバ、獄ツナ、ツナ総受け…ふにゃああああ!ブホオッ」

「汚っ!!」

「ごめ、妄想があ!」




あくまで腐女子。腐っても腐女子。あっ、とっくに腐ってました。

鼻血を出しながらもにやにや笑っている夕翡に雲雀は本気でどん引きした。いつも端から見れば品性方向の美人である夕翡もこのときばっかりは誰から見ても不審者だった。




「…じゃあ、明日から1−Aの生徒になるといいよ。その代わり…」




チャキ

何故か雲雀はトンファーを構える。不穏な音に夕翡は鼻にティッシュをつめる手を止め、恐る恐る雲雀を見た。




「え、」

「相手…しなよ」

「やだ」

「四の五の言うな」

「え…ええええ!?ギャァ!」




振り下ろされたトンファーをバトンで止める。その反動で夕翡は後ろに吹き飛ばされたが、猫のように体を回転させ華麗に着地した。

そんなことは想定内で着地した瞬間に襲って着た雲雀の攻撃を夕翡は避ける。




「ちょっと待ってよ!まだあるの」

「何」

「明日から、並中でいろいろ事件が起こるかもしれないけど怒らないように!」

「…は?」




声で雲雀が怒っているのが分かる。それもそうだ。雲雀にとって何よりも大切な並盛の中学校で何かが起こるだなんて、そんなことはありえない。自分がいながら怒るはずがない。それなのに夕翡はあっさり色々事件が起こる、と言う。

そんな雲雀の憤りを夕翡は直感で感じ取り。何かいわれないうちに夕翡は屋上から飛び降りた。




「チッ!」

「忘れてたー!」

「!!」




てっきり落ちたと思ったら、フェンスの上に立っていた。




「何。殺る気になった?」

「え?ヤる気?」

「…今すぐここで犯してあげようか」

「……。きゃああんんっ、恭君たら昼間から卑猥!そうやって蔑む目で言葉責めして私を興奮させて、ぶはあっ。はああ、でもでも、私はどちらかと言えば暴君者の屈辱に塗れた顔のほうが見たいから…。その場合は恭君が受けだからね☆」

「あぁ。もう黙って。

「何それ!?でも、どうせなら私じゃなくてツナを襲ってほしいなぁ。涙目で、顔赤くして雲雀さんを見上げてたら…。あぁ、今なら絶対、いいのが書ける」




夕翡に雲雀の声は届かなかった。

頭の中にはツナヒバ、ツナヒバ、ヒバツナ。果てのない妄想が駆け巡っていた。




「あぁー!!同人誌が読みたい!書きたい!!!BL小説「煩い」うぎゃ!」




痺れを切らした雲雀の投げたトンファーは見事夕翡の後頭部に命中した。

そのせいで落ちそうになった夕翡は数秒の苦労のかいあって、何とかフェンスの上でたっていられている。




「痛い。あやうく落ちるところだった」

「落ちれば良かったのに」

「酷っ!!…っと、忘れるところだった」

「だから、何?」

「明日からの制服とか鞄どうしようって」

「あぁ。明日の朝には届くはずだから、とりにおいでよ」

「アイアイサー。気分良かったら一戦しよーね」




夕翡は笑って手を振り今度こそ飛び降りた。綺麗に一回転して着地する。




「「「「ウオオオオオ!」」」」」




体育館から聞こえた歓声。自然と上がる口角。




「今日はバレーか。リボーン、ジャンプ段打ってあげたの?」

「……何でお前は知ってんだ」

「また今度教えてあ げ る♪」




夕翡は意味深に笑い、その場を去ったいった。




(どうしよう!私今すっごくかっこいいよ!めっちゃミステリアスな女じゃん!!)


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