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「っぅ・・・。誰・・・」



漆黒の髪と瞳を持った青年。

右手にはトンファー、左手には吸血鬼と繋がる手錠を持っていた、

彼はちらりと咲を見、口を開いたが言葉を発することはなかった。



ぐう、ぐあああああ!



いや、聞こえなかっただけかもしれない。

突然の吸血鬼の悲鳴にかき消されて・・・・。



「えっ・・・」

「・・・?」



吸血鬼は、もがき苦しんでいたが・・・次第にその体は灰と化して風に吹かれ消えた。

咲とマーモン、そして目の前にいる青年も状況を理解できていないようで

吸血鬼のいた場所をじっと見つめていた。



甘い甘い血の匂い

「えっ・・・あっ!

「っ!!」



いつの間にか咲とマーモンの後ろにいた男は咲の噛まれた箇所の血をつぅと舐めた。

そして牙を肩に食い込ませようとしたが、動きが止まる。



「うぇっ・・・げぇっ!!

「やっ!!」

「綱吉!?」



「10代目ー。どこに・・・・!?

「おーい・・ツ・・・ナ・・・!!?」



咲の血を舐めた男、綱吉と呼ばれた青年は突然吐き出した。

後から来た男2人は驚きながら綱吉を背負う。



「っぅ・・ゲホゲホッ!!」

「チッ。何がどうなって・・・君もきなよ」

「え・・・・ひゃぁぁああああ!!!



ぐいっと腕を引っ張られ、咲は無理やりあるかされた。

けれど、すぐに足が地面から離れ、地上が遠くなっていく。

マーモンの姿はみるみる小さくなり、何かを言っているようだけど聞こえなかった。



「煩いよ」

「嫌っ・・・私、高いところ無理ぃ!!」

「落とされたくなかったら黙ってな」



その言葉が本気だと分かり、咲はぎゅぅと吸血鬼に抱きついた。目を瞑り、なるべく下を見ないようにする。

漆黒の蝙蝠に似た翼をはやし、空を飛ぶ姿は誰もが見惚れるものだったが・・・

残念なことに今の咲にそんな余裕はなさそうだ。

早く下りたい!!

というのが、咲の切なる願いだった。



数十分後(実際にはもっと短かったのかもしれないが、咲にはとても長く感じられた。)

咲は大きな屋敷の前でおろされた。



「こっち」

「は、はい!!?」



またもや腕を強く引っ張られ、咲は屋敷の中に入ることになった。

中も外面と同じく豪華絢爛の一言に尽きる。

そして連れてこられた先は・・・医務室?



「ねぇ」

「ん?なんだおめーか」

「この子みてよ」



中にいたのはよれよれの白衣をまとったおっさんだった。

不機嫌そうにしかめられていた顔は咲を見たとたん一変する。



かわいこちゅわぁ〜ん!おじさんとちゅーしよう!」

「・・・・ひっ・・・アイスシールドーー!!

ブハッ!

「はっ、つい・・・。すいません!!」

「大丈夫だよ、間違ったことはしていないから」

「おー、いてて。カッコいいお顔が台無しじゃねぇか」



咲は突然飛びついてこようとした男にアイスシールドを張ってしまい・・・男はもろ顔からそれにぶつかった。

アイスシールドとは、気を壁状に並べた防御壁のことで、魔を発する効果はないけれど防御力は抜群だ。



「ねぇ・・・貴方たち誰・・・。吸血鬼なんでしょ・・・」

「雲雀恭弥。吸血鬼だよ」

「俺はシャマル。吸血鬼だな。みてくれって、そんなかわいこちゃんなら大歓迎だが・・・どうしたんだ?」



シャマルは今までとは打って変わり、観察するような目で咲をみた。

服はビリビリに破れ、髪はボロボロだが傷は浅く血もそんなに出ていない。

唯一目立つのは首筋にある噛まれた後だけだ。



「それ、誰にやられたんだ?」

「吸血鬼」

「あの裏切り者だよ。捕まえたとたん灰になった。何で?」

「何でって・・・。聖水でも浴びせたんじゃねーのか?」

「浴びせた?」

「いいえ。噛みつかれただけで・・・」

「噛みつかれた・・・か」



シャマルは考え込みながら咲の傷を手当てした。

かすり傷程度だが念のため消毒しておき、首筋には包帯を巻く。

見た目ほど酷い怪我ではない。



シ「ん?そういえば前にそんなカルテを見たような・・・・」



不意に思い出したのか、シャマルはカルテをあさりだした。

ダダダダダッ!! バンッ!

そのとき、廊下をすごい勢いで走る音がすると思ったら・・・力強く扉が開けられた。



「シャマル!!今すぐ来い!10代目が・・・・10代目の容態がおかしいんだ!!」

「俺は男はみ「早くしろ!!」たくっ。しょうがねーな」



突然飛び込んできた銀髪の少年から緊迫としたものを感じ取ったのか、溜息を付きつつも真面目な顔でシャマルは医務室を出た。

雲雀もすぐさま咲をつれて後を追う。

咲は分けの分からぬまま連れて行かれた。



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