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「な、なんで!?」

ス「わからねぇ。とにかく逃げるぞぉ!!魔族の仕業だったら俺たちの出番だ!」

「了解!」



咲、ザンザス、ベル、フラン、ルッスーリアはすぐさま家の外に出た。

"魔払い"という職業上、大事なものは家に置いてはいない。

だから、家が燃えてしまっても後悔はない。



「すいません、何があったんですか?」

「し、しらないいよ!!」



状況を聞こうとしても、人々は逃げることしかできない。

咲も無理に話を聞こうとしようとはしなかった。

メンバーはバラバラに散り、それぞれに情報を集める。



「なっ!!」


白「ぐっ!!」


白蘭兄!!



咲が向かったのは元々自分の家だった場所だった。

そこから火の手が上がっている。

そこにいたのは白蘭。

そして、白蘭を押さえつけているのは。



ツ「あー、たくっ。面倒なことさせやがって。」



自分の血を吸った、ヴァンパイアだった。



「やめっ、白蘭兄を離して!!

ツ「っと。」



咲は綱吉に向かって気を放った。

綱吉に当たりはしなかったものの、白蘭から離すことは出来た。

そのまま、白蘭を守るように前に立ち目の前にいる5人を睨みつけた。



ツ「邪魔しないでくれるかな?あんまり時間がないんだ。」

「近寄らないで!!ヴァンパイアが人里に手を出していいと思ってるの!?」

ツ「しょーがないじゃん?そいつがここに逃げたんだから。俺たちが保護しているパンピールたちを襲ったんだ。人間には関係ない。」

白「ははっ。だからって火をつけることはなかったと思うけどな。」

ツ「お前が抵抗するからだろ?どけ、小娘。」

「いや!!」



咲は強い目で、手を左右に伸ばした。

白蘭の体はすでにボロボロで、死んでしまうかもしれない。

そんな咲をめんどくさく思うかのように綱吉の目が冷たくなり

手が動かしたが。



雲「止めなよ。」

ツ「・・・恭弥?」

雲「その子は"聖血"だ。」

ツ「はぁ?清潔?綺麗だから・・・何?

雲「違うよ。聖なる血。魔を廃する力。君がさっきまでゲーゲー吐いてたのはそのせいだ。」

「てめっ!!10代目を侮辱してんじゃねぇ!!」

雲「煩い。綱吉を止められなかった駄犬が。」

「ぐっ!」

「じゃぁ、このまま血を浴びずに倒せばいいだろ。」

雲「白蘭が血を浴びる。そしたら僕たちには触れられない。」



雲雀の言葉に、綱吉は顔をしかめた。

すぐに殺されはしないという気がして咲は思わず息を吐く。



「雲雀さん・・・でしたよね。ここは見逃して下さい。」

雲「無理な相談だね。早くそこをどきなよ。」

「嫌です。」

雲「君を殺さずとも血を流さずとも押さえつける方法なんていくらでもあるんだ。痛い目みたくなかったらどきな。」

「いやです。大切なものを失うのはごめんです。」



咲は無表情に相手を見ると、スッとナイフを取り出した。

そしてそれを自分の手首に当てる。


つぅ―――

真っ赤な血がそこから流れ出した。


ゴクリ


喉が鳴る。



ツ「・・・いきすぎそうになったら止めて。

「早く、消えて。ここから。」

「10代目・・・」

「どうする?」

ツ「ククッ。あぁ、タイムリミット。

「?」



ガッ


綱吉は自嘲気味に笑うと、草むらから何かを取り出した。

その手には、人の手が握られており女の体が草むらから出てくる。

逃げようとして、動けなくなったのだろう。



「は、離してくれ!!」

ツ「大丈夫。酷いことはしないよ。」



優しく、慈しむような目を向ければ男のほうはボゥとした表情になり倒れた。

女もツナよしの腕に抱き閉められたまま、うつろな表情でいる。

そして


ガブリッ


その白い首元に、牙が刺さった。



ツ「んっ・・・・」

「っ・・・」



ゴクリゴクリ

血を飲んでいる音がする。綱吉の喉が鳴る。

咲には止められなかった。

吸血鬼には血が必要であり、生きるために必要な血は提供する必要がある。

だから綱吉の行為は"悪い"ことではない。当然のことだ。


けれど、血を飲む音が耳に入るたびに不快感と、いい知れぬ恐怖が咲を襲っていた。

思い出されるのは、ヴァンパイア。



「気持ち悪い・・・・・」



咲の呟きが聞こえたのか、ちらりと雲雀が咲を見た・・・気がした。

ただ、すぐバタンと人が倒れるような音がして

咲が目をやれば、血を吸われていた女性は倒れていた。

"死"が一瞬頭をよぎったけれど、女性は息もしている。(少し青ざめているが)

綱吉は、銀髪の青年の腕の中で眠っていた。



ツ「・・・・・ん・・・え、ひええええ!?

「は?」

山「ツナ、落ち着けな?」

ツ「え、だってこれ誰ー!?

雲「煩い。さっさと行くよ。」



綱吉の様子は、先ほどとはまるで違っていた。

何が起きているのか分からず、オロオロしている、

そんな綱吉に咲は思わず肩の力を抜いてしまう。



白「くくっ、あはあははははははははははは!!

ツ「ひぃ!!」

「な、な??」



と、突然白蘭が笑い出した。

気が狂ったのではと思うほど激しく。



白「くくっ・・・噂は本当だったみたいだね。通りで何人も護衛がいるわけだ!」

ツ「や、山本っ・・・あれ、白蘭じゃ・・・・。」

山「ん?あぁ。」

ツ「ひぃいいいい!!ややややっぱり俺には無理だってー!!」

獄「そんなことありません!10代目なら出来ます!!」


「・・・・は?」



さっきまでの偉そうな態度とは打って変わり、綱吉は怯え山本の影に隠れた。

その様子に、咲はわが目を疑いたくなる。

白蘭を押さえつけ、殺そうとしていたくせに"無理"だなんてどう言うことだ?



白「"君"は弱いんだね。守ってもらわなければ行けないほど、僕でも簡単に殺せるほど。でも、"彼"は違うわけだ。」

「白兄!!(なんで挑発するようなこと・・・」

雲「・・・自分の運に感謝するんだね。次はない。」

白「次は君たちが死ぬ番さ。」



白蘭の声は聞こえたのか聞こえなかったのか、

吸血鬼たちは消えていった。

咲はホッと長い息を吐く。

白蘭は、ゆっくりと立ち上がった。

その背には羽が生えていて、今にも飛び立ってしまいそう。



「待って!!どこにいくの!?なんでっ・・・なんでいまさら戻ってきたの・・・?」

白「・・・もうとっくに、捨てたつもりだったんだよ?過去の思い出なんてね。でも、見たらあいたくなった。

「・・・え?」

白「咲ちゃんを見たら、過去のことが昨日のことのように鮮明に浮かんだよ。大きくなったね。」

「っぅ・・・なんでっ・・・なんでこんなことっ。白兄ぃ・・・やめてよ、止めてうちにおいでよ!!魔が廃せなくたって、雑用だっていい!人じゃなくなったって関係ないよ!誰も気にしないよ!?

 だからっもう止めて・・・

白「それはできない。僕には、彼らを許すことは出来ないから。」

「っ!!」



頭にあった重みは消えたのに、ぬくもりは残っている。

そこには、誰もいなかった。

ただ風だけが 彼女の髪を揺らしていた。



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