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「ぁ!この前の!」



それは、予期せぬ出会いだった。





「え?」



ツンツンした茶色の髪、

忘れるはずもないその人物は・・・目の前でみていても信じられないほど穏やかな笑みを浮かべていた。

にこっと笑い、警戒の色をまるで見せないから咲はどうしていいか分からず困惑する。



「よかった〜。少しでも知ってる人に会えて。っと、自己紹介自己紹介。俺は沢田綱吉って言います。」

「ぁ、咲です。綱吉・・・君?」

ツ「ツナでいいですよ。みんなそう呼んでるので。えっと咲・・さん?」

「好きに呼んで下さい。敬語もいいですよ。」

ツ「よかった!じゃぁ、咲ちゃんもいいよ。」

「ありがとう。」

ツ「咲ちゃんって何歳?」

「えっと、今年18歳。」

ツ「ぁ、同じだ!」



ツナはまた嬉しそうに笑った。

それが普通の人間のようで、到底吸血鬼には見えない。



「ツナは・・・なんでここに?」

ツ「あーっとね・・・」



ツナは気まずそうに言葉を濁す。

それに対して咲は警戒を強めたが、ツナは苦笑しながらいった。



ツ「抜け出してきちゃった。」

「へ?」

ツ「普段は城の中に閉じ込められてて、久しぶりの遠出だったからついっ。」

「城って・・・あのすごい・・。」

ツ「へ?知ってるの??」

「え?ツナ・・・私のこと覚えてないの?」

ツ「え、えぇー!?昨日会ったばっかりだよね??」



ツナはおろおろと困惑する。

咲はそんなツナに、人違いだったと曖昧に笑いかけた。

それにツナはホッと胸をなでおろす。

どうして、自分のことを知らないなんて言うのかは分からないけれど

目の前にいるツナと昨日のツナが同一人物だとは到底思いなかった。



ツ「そういえば、なんで咲ちゃんはあんなところにいたの?」

「そう言うツナは?」

ツ「それがよく覚えてなくて・・・。昔からよくあったんだけどね。」

「ふぅん。私は・・・・・・。」

ツ「咲ちゃん?」

「ちょっと、私用でね。ツナは遠出って、ここに住んでるの?」

ツ「うん!ずーっと城から出てなかったらすごい嬉しくて!近くに宿を取ってるんだ。」

「なんでここに?」

ツ「うーん。それが・・その・・・色々と。昨日いた男のことで。」

「白兄?」

ツ「え?」



"白蘭"その名前が出たから思わず咲は言ってしまった。

ツナはどうして知っているのだろうという感じで首を傾げている。

とりあえず、知り合いで憧れのお兄さんだったと言っておいた。



ツ「あ・・あぁ。そうなんだ・・。」

「白兄に・・関係してるの?教えて!!」

ツ「っ・・・その・・・彼を捕まえて・・殺さなきゃいけないんだ。

「えっ?」

ツ「そう言うのはいやだけど・・・バンピールが沢山殺されて、そうも言ってられなくて・・どうしようもなくて。」

「ツナが・・・殺すの?」



気付けば言葉が勝手に口をついてでてきた。

昨日の彼だったら、白蘭を殺しても何の疑いも持たなかっただろう。

けれど、目の前の彼が殺すといった瞬間、言い知れぬ違和感と恐怖が咲を襲った。



ツ「うん・・・。昨日は思わず逃げちゃったけどね。」

「なんでツナが・・・」

ツ「俺、こう見えても吸血鬼の頂点・・ボンゴレ10代目なんだ。」

はぁ?

ツ「嘘じゃないよ!?こう見えても本当なんだから!!」

「え、嘘なんて・・いってないよ?(思ったけど)」

ツ「わかるよ・・今まで散々言われてきたから。」



はぁぁとツナから深い溜息が漏れる。

そんなツナに苦笑しつつ咲は近くの喫茶店にはいることを進めた。

すると、ツナの目が子供のように輝きだした。



ツ「うわぁ。ケーキに紅茶!久しぶりだぁ〜!」

「久しぶり?吸血鬼なのにケーキを食べるの?」

ツ「ぶっ!吸血鬼じゃないない!!俺血とか絶対無理だもん!」

「へ?(でも昨日は・・・)」

ツ「いや〜。一応吸血鬼のはずなんだけど・・・先祖に聖血って呼ばれた人間がいて、その人の血が色濃く出ちゃったみたいなんだよね〜。」

「だから太陽の光も平気なんだ。」



へぇぇと頷きながら咲はケーキを頬張る。

本来なら吸血鬼は太陽の光が苦手で、こうして外を出歩けるはずがない。

けれど、ツナは普通で平気そうだった。



「でもまぁ、そのおかげでこうして自由なわけだし!」

「自由?」

ツ「10代目ってみんなが言うから。特に獄寺君なんか・・・。」

「獄寺?」

ツ「ほら、昨日の人たちの中に銀髪の人がいたでしょ?彼が獄寺。」

「あ、あぁ〜。いたかも。」

ツ「彼らは俺の護衛なんだけどね。獄寺君は俺を10代目としてすっっっごーい慕ってて・・・。」

「へぇぇ。吸血鬼も大変なんだね。」

ツ「・・・咲ちゃんは、俺が吸血鬼でも平気?」



ツナは不安げにたずねた。

咲は少し考え込む。

前までは特に吸血鬼に対してどういう印象も抱いてはいなかった。

けれど、自分が噛まれたこともあり少し"怖い"とは思う。

けれど、どういうわけか目の前のツナを怖いと感じることはなかった。



「全然。ていうか、吸血鬼に見えないよ。」

ツ「うぅっ。まぁ、実際吸血鬼じゃないのかもね。血を吸わなくても平気だし。」

「え?平気なの?」

ツ「うん。なんか知らないけど平気。」

(じゃぁ、なんで昨日は・・・?)



聞いてみたかったけれど、聞かなかった。

ツナが覚えていないだろうと思ったこともあるけれど、何より

知ってしまうのが怖かった。



「ツナ・・・私・・・魔払いなんだけど。

ツ「・・・魔払いって何。」

「・・・・・・」



ツナがここまでいってくれたのだから自分も、

そう思っていった職業に

ツナは至極真面目な顔で聞き返したのだった。



「ちょっ・・くくっ。あはは!!真面目!?」

ツ「えぇー!?そんな有名な職業!?!?人間のことってあんまり教えてもらえないから・・・」

「あのね、魔払いは魔族を殺す・・とでもいうのかな、そう言う職業だよ。主に人に迷惑をかけるやつらをね。」

ツ「へー。そうなんだ。」

「・・・ツナ、殺されるとか思わないの?」

ツ「んー、別に。だったら会った瞬間殺してるだろうし。というか、俺たぶん効かないと思う。」

「え?」

ツ「1回あったなぁ・・・あぁ!あれが魔払い!」

「え?え?」

ツ「ぁ、ごめん。俺、多分一回魔払いにあったことあるよ。急にびっくりしたけど・・・変な光みたいなものぶつけられて。全然平気だったんだけどね〜。」

「・・・ツナ、本当に吸血鬼?」



バンピールでさえ、"気"には痛みを感じるのだ。

それなのに、先祖に人間が1人いるだけの吸血鬼が平気なはずがない。

いかに聖血といえども。



ツ「みんなそう言うんだよ。でも、俺は違うと思う。みんなにはついていけないときもある・・・」

「ツナ・・・。」

ツ「血だって嫌いだし。」



そう苦笑するツナを見て思い出した。

「いやっ!いやだっ!!」

あれがツナの声だったことに。



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