白いヒヤシンス


他の人の話を聞いていると、つくづく自分の家庭は変なものだと思った。



「ねぇ、お母さん。僕のお父さんって誰?」

「えっ?」

「普通はいるんでしょ?それとも離婚したの?」

「離婚なんて言葉どこで覚えたの・・・」

「学校の子が言ってた」



学校では1人でいる恭弥だが、だからと言って話し声が聞こえないわけではない。

わざと大きく話すものだっているし、近所の人たちだってそうだ。

働いていない咲希をよく思っていないから、根も葉もない噂を面白おかしく語っている。



「それに、働いてないのになんで生活できるの?」

「・・・・・・お父さんは、いないよ」

「死んだの?」

「うん。仕事は家の仕事だから。ちゃんと、働いてるよ」

「ふぅん」



それは嘘だと即座に思った。

無理に笑っているのがバレバレだし、なんだか挙動不審だ。

けれど、無理に聞こうとは思わなかった。



「・・・本当のことは、もうちょっとしたら話すから」

恭「嘘だって認めるんだ」

「だって、恭弥にはバレバレでしょ」

恭「まぁね」

「まだ・・・気持ちの整理がつかないんだよなぁ。忘れなきゃいけないって分かってるのに。・・・忘れたく ないなんて」



咲希がどんな気持ちでいるのかは、分からなかった。

人生経験が少ない上に人と関わろうとしない自分に分かるはずがない。

ただ、そのときの咲希が・・知らない人に見えて・・酷く寂しかった。



「でも、もし恭弥がお父さん欲しいって言うなら・・・結婚、考えないこともないよ?」

「結婚?」

「お母さんは、恭弥のお父さんと結婚してなかったから」

「結婚って、なんなの?」

「知らないのに離婚なんて使ってたの?」

「クラスメイトがいってたんだ。辞書に夫婦が生存中に法律上の婚姻関係を解消することって書いてたけどよく分かんない」



子供らしく、恭弥はムスくれて見せた。

そんな恭弥を咲希は楽しそうに笑いつつ、んー と考えこむ。



「結婚って言うのは、儀式・・みたいなもので夫婦になりますよってこと」

「夫婦?」

「そう。形式上・・・ある意味・・意味のないもの。気持ちの問題かな。夫婦になると、結婚すると・・・愛し合ってるってきがする。それに世間上も、楽になる。」

「ふぅん・・・」

「難しいね。恭弥は・・・私が、結婚しないで産んだから近所の人が噂するのかも・・」

「結婚ってどうするの?」

「婚姻届っていう紙を書いて、市役所に出すの」

「それだけ?」

「うん」

「その紙を出さないかだけで、おかしいとか思われるの?」



恭弥は不満げに眉をひそめた。

言われてみればそうなのだ。

結婚なんて、紙切れひとつで決まってしまう簡単なもの。離婚だってそう。

けれど、そういう社会なのだ。



「しょうがないよ。そういう社会だもん。」

恭「・・・ふぅん。やっぱり、変な社会だね。」

「恭弥がそう思うなら、大人になったときちょっとは変わるかもね。」



時代を変えるのは子供 

だが、恭弥は大人まで待つ気などない。

今、並盛だけでも「変」をなくすのだ。



恭「別に、お父さんなんていらないから結婚なんてしなくていいよ。群れたくないし。」

「そう?でも、私とは群れてるっていわないの?」

恭「お母さんは・・嫌じゃない。」

「そっか。」


よく分からないことだらけ。

少し疑問に思っただけで、興味があった訳じゃない。

咲希を困らせたいわけじゃない。

だから、笑っている咲希を見て、少しホッとした。



「学校で、言われたのって・・大丈夫?」

「別に。草食動物の弱い戯言なんて大して気にしてないよ」

「本当?平気?」

「うん。心配することない。」

「そっか。」



ピンポーン



そのとき、チャイム音がなった。

恭弥の聞いたことがない チャイム音が


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