サンダーソニア


ドガッ!

バギッ!!


「お〜、弱っ!」

「ゲホゲホッ!!」


朝っぱらからろくなもんじゃない。

そう思いながら恭弥はため息をついた。

群れた人間が寄ってたかって1人の人間をいたぶっている。

気持ち悪いすぎて吐き気がする。


トンファーを片手に、咬み殺してやろうと考えた恭弥だが

昨日咲希が呼び出されたことを思い出し、思いとどまった。



「おい!餓鬼が何見てんだよ!」


何が気に入らないのか、男は立ちは恭弥を囲んだ。

見ていただけで怒るなんてカルシウムが足りていないんじゃないかなんて考えながら小さく舌打をした。

逃げるなんて気に入らないけど、それ以外に道はない。

さぁ、どうするか。


そんなことを考えていた恭弥の襟首に男が掴みかかった。

手が 触 れ た 



ぷつん

ドガッ!!



恭「触らないでくれる?汚らしい害虫が。

「てめっ!!」



一瞬

まさに一瞬でその場に男たちは吹き飛ばされた。

恭弥がひと睨み聞かせれば、男たちは怯えて逃げていく。

あっけないものだ。



恭「ふん)弱いやつら。」

「あ、あの・・ありがとうございました!!」



囲まれていた男子は驚き半分御礼を言うと、そそくさと立ち去っていった。


やってしまった・・・・

そんなことを思い、自分の額に手を当てる。

口から自然とため息が漏れた。


怒られるなんてそんなことはどうでもいいけれど・・・

咲希に迷惑をかけるのだけは嫌だった。



























恭(・・・・?)


呼び出されはしなかった。

怒られもしない。

咲希に言われたとおりトンファーは隠してある。

それにホッとしているのか先生たちの表情も明るかった。


恭(変なの・・・)


帰り道、ランドセルを背負いながら長い道のりを一人歩く。

すると、前に数人・・・・いや、数十人の男たちが立ちふさがった。


「ガキがよくもなめたまねしてくれたな・・・」

恭「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰。」



本当に覚えていなかったのだ。

無理もない。恭弥にとって見れば朝咬み殺したのは害虫で"記憶する"に値しないものなのだから。



恭「どいてくれる?通行の邪魔だよ。」

「うるせぇ!!ガキがなめた口きいてんじゃねぇぞ!!」


ガンッ!!


振り下ろされた鉄パイプは簡単に払われた。

そして、また・・一瞬にして不良たちはのされる。

こんなこと、恭弥にとっては何の意味もないことだった。



恭「本当・・・弱い草食動物ほどよく群れる。」



返り血を払い、忌々しげに呟くと恭弥はまた歩き出す。

そして、ふと思う。


”この世の中はおかしい” と


生徒に手を出せば怒られるのに、今朝のことはバレもしない。

それ以前に、あんな輩がいること自体"異常"だ。

どうしてあんなプライドのかけらもない自己顕示欲の塊のような人間をのさばらせておくのか・・・。



恭「だったら変えればいい。」



不意にそう思った。

自分がこの町に秩序となってしまえば、誰も文句は言わない。

"異常"だってなくなる と。



恭「ただいま。」

「おかえりって・・・どうしたの!!?

恭「ビクッ)ちょっと・・・」

「大丈夫!?怪我してるの!?誰にやられたの!!?」

恭「不良だよ。朝絡まれたのを追い払ったら、逆恨みされて・・(だよね、多分。」



咲希の反応に恭弥は驚きを隠せなかった。

もちろん怒られたり、心配されたりしないと思っていたわけじゃない。

それでも、この反応は予想していなかった。

そして、なぜか逆恨みされたと答えたらホッとされたような気もしたのだ。



「そっか・・・。怪我は・・してる?」

恭「してないよ。」

「そう。じゃぁ、お風呂入っておいで。あがってきたら、一応診てみよう?」

恭「うん。」



にこっと笑って、咲希は恭弥の頭を撫でた。



「・・・・・・本当に、不良だったんだよね・・」

恭「そうだけ思うけど・・・・?」

「・・・ならいいの。」



まるで、こんなことが起こることを予想していたかのように。

そして、起こらないようにと祈るように咲希は呟いた。

咲希の言葉に不吉なものを感じはしたが、聞かなかった。

聞けなかった。























恭「ワオ、ハンバーグ?」

「うん。今日はお肉が安売りだったから。恭弥好きでしょ?」

恭「うん。美味しいよ。」

「よかった。でも、ちゃんと野菜も食べること。」

恭「分かってるよ。」


- 4 -






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -