■■■■ Confession : scene.2
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「セリス…?」
急に大人しくなった彼女を不思議に思い、背後の彼女に呼び掛けた。
反応がない。
一体どうしたんだろうと心配になってきた、その時。
「―――…好き。ロック…愛してる…」
(―――…!!)
予想もしていなかったその言葉に、ロックの心臓が跳ね上がった。
急激に顔が赤く染まる。
艶っぽく、熱を帯びた、その声。
そしておもむろに、背後からふわりと抱きしめられた。
柔らかい身体がロックの背に触れる。
いつになく大胆な彼女の行動に、ロックは激しく動揺した。
先程彼女を騙して笑ってしまった事が、急に申し訳なくなってくる。
背中ごしに伝わる、彼女の鼓動。
首筋に感じる、彼女の吐息。
そして香る、彼女の匂い。
……愛しさが募る。
「セリス……ッ」
我慢の限界を感じ、振り返って彼女を抱きしめようと思った。が。
「―――っ…!?」
途端、首筋に触れる暖かいものの感触。
そしてその下で走った小さな痛み。
その微かな痛みと共に甘く刻まれたものの正体を、ロックは知っていた。
さあっと血の気が引く。
完全に、不意を突かれた。
ロック本人には見えないが、彼の首筋には、セリスと同じしるしが刻まれていた。
赤い、花びらのような所有のしるしが。
―――やられた。
勢いよく振り返り、後ろの彼女を見る。
そこには、したり顔で笑みを浮かべるセリスの姿があった。
「私を出し抜こうなんて、1億光年早いのよ」
「なっ…」
「ロックも1週間、私と同じように恥ずかしい思いをする事ね」
勝った…!と言わんばかりに鼻を鳴らし、勝ち誇った様子でそう言う彼女。
それを見て、放心したようにただ呆然と彼女を見つめるロック。
簡単にしてやられた自分に少し腹が立った。
けれど、ロックを出し抜けた事に心底嬉しそうにしている彼女を見ると、顔を綻ばせずにはいられない。
憎らしいけど…やっぱり可愛い。
溢れるのは、愛情ばかりだ。
「…悪くないな」
「え…?」
「俺、皆に『このしるしセリスが付けてくれたんだ』って言いふらしてやろっと!」
「え!?ちょっと…!嘘でしょ!?」
虚を衝かれた返答に、セリスは真剣に焦った。
それを尻目に、ロックは立ち上がって今にも誰かに言いふらしそうな勢いで走りだした。
セリスはそうはさせじと後を追う。
「お願い!ちゃんと隠してよ!恥ずかしいじゃない!!」
「やだね。隠してほしかったらちゃんとかわいく好きだって言えよ」
「判ったわよ!好きよ!好き好き!これでいいんでしょ?!」
「『』は??」
「『』!!」
「あ〜そんなんじゃまたお仕置きすんぞ?」
「えッ!やだ!それだけは勘弁してー!」
じゃれ合いながら二人は草原を走り回った。