Confession : scene.3

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『誓いのくちづけ』




 やがて二人とも息を切らし始め、どちらともなく足を投げ出して草原に座りこんだ。


 二人は呼吸を整えながら空を見上げた。
 相変わらず空には雲一つなくて。
 穏やかな風が頬を撫で、暖かな日差しが二人に降り注ぐ。

 しばらくの間二人は黙ってその紺碧の空を眺めていたが、



「…ホントはさ、ずっと残しておきたいんだ」



 ロックが静かに口を開いた。
 彼の言葉の意図がわからずセリスは小首を傾げる。



「残すって…何を?」
「……所有のしるし」



 かぁ…、と瞬時にセリスの頬は朱に染まった。
 そして、無意識にちらりとロックに付けられた『しるし』に目をやる。
 胸元に刻まれた赤いしるし。
 それがいつまでも消える事なく、そこに彼の所有のしるしとして残ることを無意識に想像し、セリスは更に顔を赤くした後、勢いよく首を横に振った。



「ダメよそんな…!残しとくなんて!恥ずかしい…!!」



 力いっぱい否定するセリスに、ロックは思わず吹き出した。
 恥ずかしげに俯く彼女の胸元に手を伸ばし、自分が付けた赤いしるしに指で触れる。
 途端、弾かれたように顔を上げた彼女と視線を合わせた。



「心配しなくてもそれはじきに消えるよ。…でも俺は…、」



 一旦言葉を区切って、じっとセリスを見つめた。
 そして強い意志を篭めるように言葉を紡ぐ。



「消えないもの…かたちある確かなものが欲しい」



 俺のものだという、確固たる事実が欲しいのだと、ロックは言った。
 急に真剣味を帯びるロックの瞳。
 けれどそれは長くは持たず、すぐにおどけた様子でセリスをからかう。



「…いっその事首輪でもつけちゃうか」
「なっ…!私は犬じゃないわよ!」



 セリスはプイッと顔を背けてむくれた。
 そうしながらその反面、先程の真剣な表情の彼を見て、鼓動はどきどきと胸を打っていた。


 ロックは時々ああいう顔をする。
 かと思えば、次の瞬間にはもう普通の彼に戻っていて。
 そんな彼の気まぐれな態度にセリスはよく翻弄される。





 ―――でもそういう所が…好きな所でもあったりするのだけれど。





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