Confession : scene.2

1



『所有のしるし』




「え――…ちょっ、ロック…?」



 唇が離れたと思いきや、その唇はセリスの首筋を伝い、鎖骨を滑り、やがて胸元へと到達する。
 セリスは恥ずかしさというよりも驚きで、彼の行為を眺めていた。
 ロックは戸惑うような彼女のその声を聞いていたが、今は聞かなかったことにする。
 セリスのベアトップの服の少し上の、白い陶器のような肌が露になっている所に唇を落とした。
 その瞬間、



「―――っ…!」



 胸元に突然走った甘い痛み。

 ロックはそこに出来たものを見て満足気に微笑み、すっと身を引いた。
 驚いたセリスは、痛みの走った自分の胸元に目をやった。
 そこには、先程まではなかったものがあった。
 鮮やかな、赤い花びらのような印がひとつ。



「ロック…これ…」
「所有のしるし」
「え?」
「『セリスは俺のもんだ!』って、そーゆーしるし」



 ロックの言葉に、ドキリと胸が高鳴った。

(所有の…しるし…?)

 それが世間では『キスマーク』と呼ばれている事など、セリスは知りもしなかったけれど、何故だかどうにもその鮮やかな赤いしるしが恥ずかしいものに見えて仕方がない。

 それにしても…



「コレ…消えるの?」
「ん?消えるよ?」
「いつ?」
「あ〜…、一週間くらいかな?」
「一週間!?」



 一週間も、この何だか恥ずかしいしるしをつけて過ごさないといけないの!?と
セリスはロックに泣きついた。
 けれどロックは、



「だから言ったろ?『罰だ』って」



 しれっと言いながら、意地悪そうに笑う。
 ロックの背後に回って、彼に見られないようにしながらもう一度、服を少し下げてその印を確認した。
 触ってみる。けれどその色は落ちない。
 もちろん、擦ったところでその鮮やかな赤は簡単には消えはしない。



「〜〜〜!!ちょっとロック!何とかしてよ!こんなの皆に見られたら…」
「大丈夫だって。色っぽいよセリス」
「何言ってるのよ!そんな事言ってないで何とかしてってば!」



 心底困ったような顔をして、半泣きでロックの肩を揺らすセリスに、ロックは背後のセリスを見遣って



「ごめん、ホントはさ…」



 更に追いうちをかける。






「それ、一生消えないから」


「――――!!?」






 セリスは絶句した。
 驚いて声もでない。
 そんなセリスの様子が心底ツボに入ったのか、ロックは盛大に吹き出した。



「なっ…!何よ!何がおかしいのよ!っていうか消えないって…一体何の魔法…!?」
「…嘘だよ」
「え?」
「そんなんほっときゃそのうち消えるよ。ほんとセリスは騙されやすいのな〜」



 心底可笑しそうに悪戯っぽく笑うロック。
 それを見ながら、セリスは一瞬唖然としていたが、やがてふるふると怒りがこみ上げてきた。
 笑いながら肩を揺らすロックの背を怒りまかせに強めに叩く。



「もう!信じられない!ロックのバカ!嫌い!」
「俺は好きだよ、セリス」
「バカ!もう知らない!」
「セリス、もう1回言ってよ。俺の事好きだって」



 笑いながら言ったロックのその言葉に、突然セリスは動作をピタリと止めた。




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