■■■■ Confession : scene.1
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「あんだけ顔近づけられたら、誰だってキスされるんだと思うだろ?」
「ち…ちがうわよ!私はただ……!」
「……ただ?」
セリスは返事に窮した。
寝顔がかわいいから近くで見たかった、
…などとはとても言えない。
「〜〜〜何でもないっ!」
顔を朱に染め、プイッと頬を膨らませながらそっぽ向くセリスがやけにかわいくて、思わずロックは吹き出して笑ってしまった。
「……何がおかしいのよ」
それをじと目で見て凄むセリス。
それも全く迫力がない。
ロックの顔は緩みっぱなしだ。
ロックは笑いながら寝転ぶのを止め、セリスと向き合うように膝を立てて座った。
「それよりロック!寝てるふりなんて卑怯よ!起きてるなら返事くらいしてくれてもいいのに…」
今だにむくれながらそう言うセリスの言葉を聞いているのかいないのか、ロックはセリスの頭を撫でて、その柔らかで長い金の髪を指先で弄ぶ。
「ちょっと……聞いてるの?」
「……聞いてるよ」
「だったら―――」
「だってさ」
ロックはセリスの言葉を遮って、彼女の瞳をじっと見つめた。
セリスは見つめられる意味が判らず何故だか逃げ腰になる。
ロックはそんな彼女を見つめたまま呟いた。
少し拗ねたような口調で。
「…お前、いつも俺が寝てる時にしか言ってくんないじゃん」
「え……」
「『好き』……ってさ」
「…………!!」
ドクンッ
突然、心に嵐が吹き荒れた。
同時に、真上に聳える巨木もセリスの気持ちに同調したように、強めの風を受けてざわざわと葉を擦り合わせた。
鼓動が異常な速さで胸を打ち始める。
「な…んで…知って…―――」
知らないはずだ。
だって彼はいつも眠っていたから。
私の声が届く事などないはずだ。
なのに。
「俺が知らないとでも思った?」
そんな事などお見通しだ、とばかりに心を見透かすようにロックはセリスを見つめる。
セリスは愕然としてその目を逸らした。
ウソ…そんな…
まさか今までずっと…聞かれてたなんて―――…!
羞恥と驚愕と戸惑いが入り乱れ、ロックと目も合わせられず、セリスは見て判るほどに激しく困惑して視線を逸らした。