■■■■ Crash down!
7
「あ〜〜〜ッ!酔えねぇ!!酔えねぇええ〜〜〜!!何でだよッ!!!」
広間でくすねた高級ワインを、自室の机で煽り続けてもまだ酔えないロックは頭を抱えて一人ごちた。
……3本の空瓶が目の前に転がっていた。
酔えば何も考えずにすぐに眠れるだろうと思い、欲と戦いながら高級ワインをひたすら惜し気もなく飲み下すが、一向に酔う気配もなく、睡魔も襲ってこない。
悶々としながらワインを飲むも、先程のセリスの顔と台詞を不意に思い出し、かぁああっと、再び顔を赤くする。
先程からずっとこの調子だった。
思い出しては赤面し、欲を振り払おうとワインを煽るが全く酔えず眠れず、また沸々とあの時のセリスの言葉が蘇ってきては顔を赤くする。
* * *
「 しよう?」
セリスに告げられたあの後…
鉄壁の守りを誇っていたロックの理性は、セリスの一言によって一瞬で砂上の楼閣に変わり果て、ガラガラと音を立てながら脆くも崩れ去った。
追い詰められた理性は逃げ場をなくし、爆発の一途を辿るしかない己の欲に、もはや抗う術すらも見つからない。
完全に欲に負けたロックは、気付けばベッドの上で丸くなっているセリスを上から覆うように抱きしめていた。
「セリス…!」
もう無理だ。
もう堪えられない。
こんな愛くるしい姿で、こんな艶めいた表情で、こんな状況でそんな事を言うセリスが悪い。
俺は悪くない。
寧ろそんな事を言われて、何もしない奴の方が男としてどうかと思う。
義を見てせざるは勇無きなり…
据え膳食わぬは何とか…って言うじゃないか。
だから俺は絶ッ対悪くない!!
そう自分で自分に都合のいいように言い聞かせ、心のなかで「では遠慮なく食わせていただきます…!」と合掌した後、腕の中の彼女に唇を落とそうとした。
…のだが。
「……ZZZ……zzz………」
セリスは眠っていた。
この一瞬の間に。
既に夢の世界へと旅立っていた。
今度は揺すってもつねっても擽っても、何をやっても彼女は目覚めはしなかった。
「…………………マジで?」
寝ている彼女に手を出すほどの鬼畜にもなれず、ロックは呆然として欲望のやり所を失ってしまった。
気持ち良さそうに規則正しい寝息をたてて眠る彼女を見つめ、泣きたい気持ちを堪えて膝を突き、がっくりと項垂れた。
「……俺って…可哀想すぎる……」
* * *
そして今に至る…。