■■■■ heavenly kiss
3
「……、ねェ、」
「…なに?」
「―――…っ、ロック…、」
「だから、何?」
「…ァ、ちょっと待っ、―――ん…ッ」
翻弄されて、襲い来る切なさをどうにかして欲しくて、浅く呼気を求めて縋るように彼の名を呼んだ。
けれどその口唇で言葉ごと強引に封じられて、奪われてしまう。
吐息すらも。
この狂おしさに溺れてしまえばいい、と。
そんな想いをぶつけるようなくちづけは、次第にその深さを増した。
歯列を確かめるようになぞる彼の舌先。
そのまま舌を絡め盗られて少し強く吸われると、甘い痺れが脳の天辺をぐらぐらと揺さぶった。
喉がうわずる。
目の前が眩む。
心ごと攫われそうなくちづけを受けながら、掻き抱かれて重なり合う体温。
触れ合っている肌は温かく、
繋がっている口唇は灼熱のように
――――熱い。
「…待たない。もう、」
口唇が少し離れ、けれどまだ触れ合いそうな距離で、彼が言葉を零す。
「無理、待てない」
もう、十分過ぎるほど。
イヤという程長い時間を待ったはずだ。
お互いに求めて、焦がれて、ようやく触れ合えた奇跡。
だからもう、待てない。
もう…止められない。
「だから、ごめん」
言葉と共に、大きなてのひらが彼女の頬を包む。
そのあたたかな温もりを感じた瞬間、
「覚悟して?」
…低く紡がれたのは、まるで宣告のような言葉。
言葉を辿って見上げた先には、彼の少年のような優しい微笑み。
けれど私を射抜くその眼差しの奥には、優しさでは覆い隠せない程の、熱く燻る情欲があった。
彼が紡いだ言葉は、その意味とは裏腹に眩暈がする程甘く胸に響いて。
その言葉に、胸の奥が粟立った。
その眼差しに、身体も心も焚き付けられて。
もう…この甘い呪縛から逃れる事はかなわない。