heavenly kiss

3



「……、ねェ、」

「…なに?」

「―――…っ、ロック…、」

「だから、何?」

「…ァ、ちょっと待っ、―――ん…ッ」





 翻弄されて、襲い来る切なさをどうにかして欲しくて、浅く呼気を求めて縋るように彼の名を呼んだ。
 けれどその口唇で言葉ごと強引に封じられて、奪われてしまう。
 吐息すらも。


 この狂おしさに溺れてしまえばいい、と。


 そんな想いをぶつけるようなくちづけは、次第にその深さを増した。
 歯列を確かめるようになぞる彼の舌先。
 そのまま舌を絡め盗られて少し強く吸われると、甘い痺れが脳の天辺をぐらぐらと揺さぶった。



 喉がうわずる。
 目の前が眩む。



 心ごと攫われそうなくちづけを受けながら、掻き抱かれて重なり合う体温。



 触れ合っている肌は温かく、



 繋がっている口唇は灼熱のように








 ――――熱い。










「…待たない。もう、」



 口唇が少し離れ、けれどまだ触れ合いそうな距離で、彼が言葉を零す。



「無理、待てない」



 もう、十分過ぎるほど。
 イヤという程長い時間を待ったはずだ。
 お互いに求めて、焦がれて、ようやく触れ合えた奇跡。



 だからもう、待てない。



 もう…止められない。





「だから、ごめん」






 言葉と共に、大きなてのひらが彼女の頬を包む。
 そのあたたかな温もりを感じた瞬間、










「覚悟して?」









 …低く紡がれたのは、まるで宣告のような言葉。


 言葉を辿って見上げた先には、彼の少年のような優しい微笑み。
 けれど私を射抜くその眼差しの奥には、優しさでは覆い隠せない程の、熱く燻る情欲があった。





 彼が紡いだ言葉は、その意味とは裏腹に眩暈がする程甘く胸に響いて。



 その言葉に、胸の奥が粟立った。



 その眼差しに、身体も心も焚き付けられて。







 もう…この甘い呪縛から逃れる事はかなわない。





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